応用化学系 News
東京工業大学は、2022年度(第10回)「東工大の星」支援【STAR】(Support for Tokyo Tech Advanced Researchers)の採択者に、物質理工学院 応用化学系の澤田敏樹准教授(応用化学コース 主担当)、科学技術創成研究院 未来の人類研究センター・リベラルアーツ研究教育院の北村匡平准教授、リベラルアーツ研究教育院の鈴木悠太准教授の3人を学長および研究・産学連携本部長の協議により選考し、3月16日に発表しました。
「東工大の星」支援【STAR】とは、東工大基金を活用し、将来、国家プロジェクトのテーマとなりうる研究を推進している若手研究者や、基礎的・基盤的領域で顕著な業績をあげている若手研究者へ大型研究費の支援を通じて、次世代を担う本学の輝く「星」を支援するものです。
近年のバイオテクノロジーの急速な発展に伴い、タンパク質やペプチドといったバイオ高分子の機能改変が容易となり、マテリアル素材としてバイオ高分子が利用され始めています。
しかしながら、マテリアル利用に適した機能をもつバイオ高分子は一般には天然に存在せず、加えて、天然には存在しないマテリアル機能を新たに付与することは困難とされてきました。それはひとえに、バイオ高分子の機能は進化の過程で生体内での利用に最適化されてきたためと考えることができます。
私たちは、生命工学の手法に加えて、高分子科学や物理化学に基づいてバイオ高分子が示す分子認識能や集合化能といった生物機能を改変・制御し、マテリアル素材としてバイオ高分子を利用する研究を展開してきました。最近では、望みのマテリアル機能や物性をもつバイオ高分子を自在に創成することを目指し、遺伝子改変により構築したバイオ高分子の機能物性データを基に、機械学習を利用することで予測に基づく合目的的な機能創出にチャレンジしています。
バイオ高分子がもつポテンシャルの高さは、私たち生物・生体が既に証明している通りであり、優れたマテリアル機能をもつバイオ高分子を再進化させるが如く自在創成する手法を確立することで、環境・医療・エネルギーといった様々な分野に貢献できる材料化学を展開していきたいと考えています。
このたびは「東工大の星」支援に採択いただきましたこと、誠に光栄に存じます。東工大基金の寄附者の皆様ならびに選考委員の皆様に心より御礼申し上げます。また、これまでご指導いただいた諸先生方、共同研究者の皆様、また共に研究を遂行してきた研究室メンバーにも心より感謝申し上げます。挑戦を後押ししていただけるこのようなご支援のもと、研究により一層精進していく所存です。
19世紀末に生まれた映画は、それまでとはまったく異なる有名性を作り出し、マスメディアとして大衆文化に大きな影響を及ぼしました。その後、日本ではテレビ文化がアイドルを生み出し、インターネットが社会に普及して新たなプラットフォームがYouTuberやバーチャルYouTuberを誕生させました。
私は主に20世紀から21世紀にいたる映像文化のなかで、有名性がどのように表象され、いかに価値づけられたのかをメディア論やジェンダー論の視点から探究してきました。有名人がいかなる欲望を大衆から引き出してきたのかを歴史的に分析することで、時代ごとの国家のイデオロギーやジェンダー規範を解明していきたいと思います。
また日本映画史を映画作家とその作品の歴史としてではなく、スターや観客、技術など映像文化史として多角的に捉え、さらに計量映画学による定量的なアプローチも導入することで、新たな日本映画史を再構築したいと考えています。これらの研究と並行して、公園における遊具と子供のコミュニケーションを社会学・メディア論の視点で分析し、利他が生まれる空間・環境をフィールドワークによって明らかにすることを目指しています。
「東工大の星」支援【STAR】に選出いただき、大変光栄です。東工大基金の寄付者の皆様に心からお礼申し上げます。上記にあげた研究はほとんど未知なる領域の開拓となるため、こうした手厚いサポートなしに進めていくことはできません。本研究は狭義の映画研究だけではなく、隣接する学問領域に幅広く影響を与えるものであり、遊具と利他の研究は子供の遊びや学びの利他的な環境を実装することで社会へと還元できるものなので、このご支援のもと一層研究に励んでまいりたいと思います。
私は、より良い教育を生みだす学校を現実的に作りだす研究と実践に取り組んでいます。それは、「進歩主義教育(progressive education)」のための「学校改革(school reform)」の「アクション・リサーチ(action research)」であると言えます。この3つの専門用語についてご説明いたします。
「進歩主義教育」とは、近代的な学校教育が成立して以来、一般的な学校教育が、教師や教科書やカリキュラムを中心に据えて作られてきたのに対し、児童や生徒の経験を中心に据えて学校教育を作りだそうとするものです。それは、これまでの多くの教育者たちが世界的に努力を重ねてきた教育の在り方であり、それぞれの時代や場所において実践が追求されてきました。それは同時に、「進歩主義教育」の実現は宿命的に大いなる困難を伴うものであることの証でもあります。先人の努めの先に、現代社会における「進歩主義教育」があります。
そうした「進歩主義教育」は、個人の教師の努力によって現実の学校において作りだされるものではなく、教師たちが教育の専門家として協同する共同体を構築することではじめて作りだされるものである、ということが教育学の知見です。それゆえ、「進歩主義教育」の実現は「学校改革」の問題であるということが重要です。学校という、制度的・政策的・組織的な文脈に埋め込まれた場の改革を必要とするということです。
そして私は、「アクション・リサーチ」を追求しています。「アクション・リサーチ」とは、実践者と研究者が共に現実の改革に取り組む研究です。そして「アクション・リサーチ」はそうした取り組みが容易に成し遂げられるものではないことを誰よりも理論的に認識している研究であるという点に鍵があります。「アクション・リサーチ」は現実の改革を追求すると同時にそれを理論的に追究するという特徴を持っています。
このように私は、より良い教育を「進歩主義教育」の伝統を引き継ぎながら構想し、それを学校という政策と実践が交差する複雑な場の改革において追求し、それらのことを現実の最中にある教師たちと共に具体的な「学校改革」を通して作りだす「アクション・リサーチ」に従事しているのです。
このたびは、「東工大の星」支援【STAR】に採択されましたこと、光栄に存じております。この支援を作りだしてくださっている東工大基金の寄附者の方々に深く感謝しております。また、審査に携わってくださった方々にも心より感謝申し上げます。
本学を拠点とする研究の発展が、社会の発展を作りだしてきた伝統を踏まえ、そして、自然科学の発展を中心に据える本学において人文・社会科学の鋭い輝きを社会に示してきた伝統を踏まえるならば、私が人文・社会科学の研究者として初めて「東工大の星」支援【STAR】を授かる責任は小さなものではありません。※
私が作りだす研究の発展が、教育学を発展させ、社会をより公正で民主的なものへと発展させることへと連なるよう、私の務めを果たすことをここに誓います。いつも私を導き支えて下さっている方々に心より感謝申し上げます。
※同じく人文・社会科学の研究者である北村匡平准教授と同時の授与
東工大基金を活用し、本学における優秀な若手研究者への大型支援を実施することにより、本学の中期目標である基礎的・基盤的領域の多様で独創的な研究成果に基づいた新しい価値の創造を促進し、もって、学長の方針に基づく本学の研究力強化に資することを目的とします。
公募によらず、様々な業績を勘案し、学長及び研究・産学連携本部長の協議により決定します。
准教授以下(原則40歳以下)とします。
この支援事業は東工大基金によりサポートされています。