リベラルアーツ研究教育院 News
リベラルアーツ研究教育院の北村匡平准教授の著作『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』が第9回表象文化論学会奨励賞を受賞し、7月7日に神戸大学で開催された表象文化論学会第13回大会で、授賞式が行われました。
第9回表象文化論学会の奨励賞をいただき大変嬉しく思います。今回、賞を賜った『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社)は、東京大学大学院学際情報学府に提出した修士論文が元になっており、日本映画の黄金期と呼ばれる時代に活躍していた二人のスター女優・原節子と京マチ子を論じたものです。
そもそもの関心は、日本社会における映画スターと国民国家の関係で、スター女優のイメージがいかに国体を表象するのかというものでした。戦後直後(占領期)のデータや資料を分析すると、原節子が圧倒的な人気を誇り、京マチ子が戦後派スターとして一気にスターダムを駆け上がったことがわかります。そこが、決定的な「謎」でした。つまり、占領期は、他のスターではなく「なぜ彼女たちでなければならなかったのか」というミステリーです。
端的にいえば、私には、なぜ原節子なのかが理解できなかった。その「謎」を解き明かすため、同時代の言説とイメージをつぶさに見ていくと、戦後の日本人が国体として求めていたものが浮かび上がってきました。研究とは圧倒的な「謎」から生まれるものです。これからも歴史に埋もれているたくさんの「謎」を発見し、解明していきたいと思います。これまで私の「謎」の探究に付き合ってくださった先生方、研究仲間に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
帯の一節を紹介します。
「彼女たちはいかにして『スター』となったのか。なぜ彼女対でなければならなかったのか。原節子と京マチ子を中心に、スクリーン内で構築されたイメージ、ファン雑誌などの媒体によって作られたイメージの両面から、占領期/ポスト占領期のスター女優像の変遷をつぶさに検証し、同時代日本社会の無意識の欲望を見はるかす、新鋭のデビュー作!」
作品社刊
2017年9月30日発行
表象文化論学会会員が発表した著作・論文・作品等のうち、表象文化論の分野における独創的で優れた研究および作品等に贈呈されるもので、奨励賞は発表時39歳以下の学会員による単行本、または年齢に関わらず最初の単行本が対象となります。
リベラルアーツ研究教育院 文系教養事務
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