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2020年度優秀修士論文賞 受賞! #2 ― 田所 雅大さん(小寺研究室)―

物理形成シリコン量子ドットを用いたNISQデバイスの提案とスピン操作の実証

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2021.03.30

今回、電気電子系約140名の中から15名が、優れた修士論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。

田所雅大(右)と小寺哲夫准教授(左)。右奥の装置は研究に用いた極低温冷凍機。

田所雅大さん(右)と小寺哲夫准教授(左)。右奥の装置は研究に用いた極低温冷凍機。

この研究はどんな内容で、どのように世の中の役に立つことが期待できるのでしょうか?

私の研究内容の大きな目的は、量子コンピュータの一種であるNISQデバイスを、物理形成シリコン量子ドットを用いて実現することです。量子コンピュータは量子力学の原理を用いることで現在のコンピュータで解くことができない計算をすることができる次世代のコンピュータです。金融、創薬、機械学習など幅広い分野での応用が期待されており、実現すれば社会的に大きな意義がある技術であると認識されています。

量子コンピュータにはいくつか種類がありますが、その中でもNISQデバイスは誤り訂正機能を持たない中規模の量子コンピュータのことです。実社会での応用に直結するほどの計算能力は持ちませんが、それでも特定の計算においては現在のコンピュータを凌駕する性能を持つとされています。
量子コンピュータの基本要素である量子ビットは様々な系で構築することができますが、私の所属する小寺研究室ではスピン量子ビットという系に注目しています。スピン量子ビットは電荷の持つスピンを活用した量子ビットで、電荷を量子ドットというnmオーダーの小さな箱に閉じ込めることで実現できます。

私の研究では、特に物理形成シリコン量子ドットという構造に注目しました。従来の量子ドットと比較し簡易な構造であり、将来的な量子コンピュータの実現のために重要な要素の一つである量子ビット集積化に有利であると考えています。この構造を用いて大きく2つのことに取り組みました。1つ目は物理形成シリコン量子ドットでNISQデバイスを実現するためのデバイスデザインの提案です。物理形成シリコン量子ドットを用いることで現在実現しているNISQデバイスの量子ビット数を大きく上回る数の量子ビット集積を可能にする構造を提案しました。2つ目は物理形成シリコン量子ドットでスピン操作を初めて実証しました。スピン操作はスピン量子ビットにおける量子計算の機能そのものであり、物理形成シリコン量子ドットを用いたNISQデバイス実現に向けた第一歩となると考えています。
私の研究は物理形成シリコン量子ドットを用いたNISQデバイスの実現のロードマップを示すと同時に、その第一歩を踏み出したものであると考えています。これらの成果が、量子コンピュータ実現に向けた大きな課題である量子ビット集積化の解決の一助となることを願っています。 

受賞の感想

このような素晴らしい賞をいただき大変光栄です。本受賞は日頃よりご指導いただきました先生方、研究室の皆様、共同研究先の皆様、そして家族のサポートがあったからこそだと思います。この場をお借りして深く御礼申し上げます。
私は学部4年の時に小寺研究室に設立時のメンバーの一員として参加しました。当時は量子コンピュータという言葉さえも聞いたことがなかったのですが、小寺哲夫先生の量子コンピュータに抱く壮大な夢や情熱に強く共感し志望したことを覚えています。「量子コンピュータの実現のためには幅広い研究分野との融合が重要」という指針のもと、学内外の様々な方と共同研究する貴重な機会を多くいただきました。また、研究室の立ち上げの過程で、組織の風土作りやマネジメントなど数多くの学びを得ることができました。これらの経験は私を一回りも二回りも成長させるものであったと実感しています。このような貴重な機会を提供してくださった小寺先生には大変感謝しております。
東工大で過ごした6年間で、私は高校生のころ思い描いたよりも遥かに貴重な体験を数多くさせていただきました。その中で学んだことを最大限活かし、新たな技術で社会に貢献したいと考えています。

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