電気電子系 News
2024年度は電気電子系105名の中から10名が、特定課題研究に関する優れた論文発表を行い、この賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。
本研究では、炭素微粒子を用いた高感度超音波トランスデューサの設計および評価に取り組みました。
超音波トランスデューサは、医療分野における妊婦のエコー検査をはじめ、さまざまな分野で広く活用されています。その空間分解能は超音波の周波数に依存しますが、周波数を高くすると、距離による減衰が大きくなるという特性があります。そのため、検査深度と解像度の両立には、より高感度な超音波トランスデューサの開発が求められています。
そこで着目したのがカーボンマイクロフォンの技術です。カーボンマイクロフォンは、音による圧力変化によって炭素微粒子の接触抵抗が変化し、その変化を電気信号として取り出す仕組みをもっています。かつては黒電話の受話器などに使われており、私たちの生活にも身近な技術でした。しかし、従来の構造では大きな振動板を用いることから可聴域に特化しており、受信可能な周波数は約10 kHz までと、超音波領域での応用はほとんど試みられていませんでした。
本研究ではこの原理を応用し、振動板を用いずに炭素層へ直接音波振動を伝達する構造の超音波トランスデューサを作製しました。シャープペンシルや鉛筆の芯など、さまざまな炭素素材を用いて、5 MHz の水中パルス超音波の受信実験と受信特性評価を行いました。その結果、5 MHzの水中超音波を正しく受信可能であること、および素材によって感度に違いがあることが明らかとなりました。
今後、この研究の進展によりさらに高感度な超音波トランスデューサの開発が進めば、医療分野における診断精度の向上に加え、インフラや製造分野における非破壊検査の高精度化にも貢献できると考えています。
このたびは、学士優秀学生賞に選出していただき、大変光栄に存じます。
研究を進めるにあたりましては、中村健太郎教授より、実験や論文作成、発表に至るまで多岐にわたるご指導を賜りました。心より感謝申し上げます。また、日々支えてくださった研究室の皆様、温かく見守ってくれた家族や毎晩相談に乗ってくれた友人の存在がこのような賞に繋がったと感じております。
これから始まる修士課程におきましても、皆様のご厚意に深く感謝しつつ、引き続き研究活動に真摯に取り組んでまいります。