未来

光技術による情報通信技術(ICT)ビジネスへの貢献

株式会社富士通研究所 デバイス&マテリアル研究所 主任研究員
(兼) 富士通株式会社 アドバンストシステム開発本部 本部長付
(兼) 技術研究組合 光電子融合基盤技術研究所 つくば研究開発センター 主幹研究員

鄭 錫煥 さん

鄭 錫煥さん

現在の仕事について教えてください。
シリコン半導体を用いた光機能デバイスの研究を行っています。電子回路技術の処理限界を超えて、大容量信号を出し入れできる光送受信機の実現を目指しています。シリコン光半導体技術は、シリコン基板上に形成した幅数百ナノメートルの微細な光導波路で小型な光デバイスを形成でき、従来の材料系では困難であった大規模な光集積回路の実現を可能とする技術です。今後ビックデータを処理するデータセンターでのインターコネクトやバイオセンサーやビーム走査等の医療・民生応用への適用も期待されています。現在は、シリコン光集積チップの大容量化・低電力化を目指しており、それを搭載した光送受信機の製品化に向けても取り組んでいます。
東工大での経験や学びは、いまの仕事にどう活きていますか?
研究生課程を含めて、東工大で6年間在籍しました。留学生としてやってきて、慣れない生活が続く中、指導教官であった水本哲弥先生のご指導、研究室の先輩・後輩に支えられ、修士・博士課程を終えることができました。優秀な仲間たちに恵まれ、最先端の実験装置を活用して、国内外で多くの成果をアピールするほか、業界関係者との人的ネットワークも構築でき、社会に出てからも大いに役立っています。大学で学んだことで何よりも重要と思っているのは、心構えと思います。6年間の在籍中、水本先生はいつも私を信頼し、任せて頂いたので、責任感が強くなり、めげずにものごとに精進できるようになったことは東工大での最大の収穫と思います。
今後の目標を教えてください。
民間企業に携わる者として、今まで培ってきた光半導体技術を活かして、情報通信技術(ICT)ビジネスへ貢献することです。全世界的に、情報通信量は毎年20 %程度の割合で増加し続けている一方、50年間守られてきたムーアの法則(電子回路の実装密度は1.5年ごとに2倍になる)は、微細化の物理的な限界を迎え、2020年以降崩れると言われ、この問題を打破できるブレークスルーが求められています。シリコン半導体技術はそれを可能にする有望な技術と信じており、今後、研究者として切磋琢磨を怠らず、新しい技術応用に挑戦しつつ、世の中に役立つ製品開発に寄与していきたいです。
最後に、東工大を目指す人に一言お願いします。
大学では、知識を深めて、教養を高めるとともに、広い分野に関心を持ち、大局的な考え方を身に付け、一つのソリューションではなく、多様なアプローチで近寄れる行動ができるようになることが大切と思います。東工大には、優秀な人材、最先端な実験設備環境、著名な先生に恵まれており、様々なフィールドで活躍している先輩たちも沢山います。それらを存分に活かして、有意義な大学生活を送って頂きたく思います。

ちょん・そっくふあん(韓国 ソウル市出身)

1991 - 1997年
(韓国)成均館大学 工学部 材料工学科修了(在学期間中、兵役含む)
1998年
東京工業大学 理工学研究科 研究生課程修了(文部省(現文部科学省)国費留学生)
2000年
東京工業大学大学院 理工学研究科 電子物理工学専攻 修士課程修了
2003年
東京工業大学大学院 理工学研究科 電気電子工学専攻 博士課程修了
2003 - 2005年
日本電信電話株式会社 NTTフォトニクス研究所 ポスドク研究員
2005 - 2006年
独立行政法人(現国立研究開発法人)産業技術総合研究所 ポスドク研究員
2006年
株式会社富士通研究所 入社
2012年
国家プロジェクトに参加のため、光電子融合基盤技術研究所へ出向
2016年
現職

※記事の内容は取材当時のものです

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