電気電子系 News
今回、電気電子系約70名の中から9名が、特定課題研究に関する優れた論文発表を行い、この賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。
5Gで初めて移動体通信に採用されたミリ波は、高速大容量通信の実現に大きく貢献した一方、直進性が高く回折が起こりにくいことや伝搬損失の大きさなどからエリアカバレッジの拡張が行いにくいと、扱いにくさが残る周波数帯であることが課題となっています。2023年現在でも、国内外問わず5Gにおけるミリ波の活用はスポット的なものにとどまっており、広域な展開にはSub6とよばれる6GHz以下の周波数帯の活用が中心という状況です。
本研究では、この5Gより新たにエリア展開が進められるようになったミリ波に焦点をあて、通信エリア構築を支援するためのAR (Augmented Reality)を用いた電波伝搬・電波品質の可視化システムを設計・実装しました。
ARあるいはVR(Virtual Reality)などの可視化技術を用いた電波情報の可視化システムの研究はこれまでにもあったものの、屋外かつミリ波を活用する5G以降の移動体通信システムを見据えた検討については未だ殆どありません。また、シミュレーションか実測の一方のみの可視化にとどまっており、統合的な検討や実装を試みているものも殆どない状況でした。
そこで、屋外のミリ波伝搬を対象に、実測データとシミュレーション結果を統合的に活用し可視化するためのシステムを設計・実装し、これまでに東工大で構築してきた5G/B5Gにおける実証実験を行うための実フィールド(B5G実証フィールド †1)における実測データにも基づき、提案システムの基本的有効性を示したということが、本研究の貢献となっています。
今後は、B5G実証フィールドで検証を進めてきたリピータなどの中継技術を見据えた拡張や、本システムのインタフェースを活用した、可視化にとどまらない新たなアプリケーションの構築など、より多様で多面的に通信エリアの構築や活用を支援できるよう発展させていきたいと考えています。
この度は学士特定課題研究の成果や発表についてご評価いただき、学士優秀学生賞に選出いただきましたこと、大変嬉しく思います。
私は元々工学院とは異なる学院の学生として本学に入学いたしましたが、学士課程1年の当時はまだ進路に悩んでおり、所属していた学院内外関わらず、カリキュラムや研究室のパンフレットを改めて読み返しました。そうして、現在私が所属させていただいている阪口研究室の存在を知ったことなどをきっかけに、学士課程1年時に学院外系所属†2の制度を使用し、工学院電気電子系に所属させて頂きました。
他学院から電気電子系に来たこととオンライン授業化が重なり、実のところ電気電子系であまり多くの学生との交流ができなかったことはやや残念でした。それでも、東工大の優秀で素敵な友人たちと切磋琢磨し合うことができたことで、電気電子系に入ってからの時間は私にとっての大きな糧となったことは違いありません。
結果として、電気電子系の中では入試こそ最低点だったものの、学士課程3年の終了時点では電気電子系内の成績順位で首位と、満足のいく状態で初心通り阪口研究室に配属させていただくことができました。
研究室への配属後は、指導教員の阪口先生を始め、様々な先生方や先輩方、同期、後輩、スタッフの皆様に支えていただき、楽しく充実した研究室生活を送らせていただきました。
特に、研究を進める際には、阪口先生や現東大特任助教(東工大研究員兼務)の中里先輩を始めとして、多くの先生方や先輩方に丁寧に指導いただき、議論をさせていただいたことで、無事に学士特定課題研究としてまとめることができました。さらには、プロジェクトにおける共同研究先を始めとする学外の方々にも大変お世話になりました。
その他、学会発表や外部の方へのデモンストレーションなども含め、4年生のうちから研究室では多くの経験を積ませていただきました。
こうして振り返ってみますと、本受賞を頂き、無事に卒業まで至ることができたのは、やはり私を支えてくれた多くの方がいてこそのものだと感じております。
改めて、研究室の皆様や共同研究先の皆様、様々な面で支えていただいたり切磋琢磨し合った友人、経済的にも精神的にも様々な面から支えてもらった家族、その他私に関わってくださったすべての皆様に、この場をお借りして感謝いたします。
本研究の一部は、NICT「Beyond 5G 研究開発促進事業 (#00101)」の助成を受けて行われました。ここに記して、改めて感謝の意を表します。
†1 B5G実証フィールド: 東工大で構築してきた5GおよびB5G(Beyond 5G)の実証実験を行うための実フィールド。本環境は完全仮想化を実現しており、フィールドに設置された各基地局はキャンパス内のエッジクラウドに光ファイバーを経由して接続されているという特徴を持つ。本フィールドでは、認可された端末をNSA方式で各基地局に接続することが可能である。
†2 学院外系所属(転学院): 東工大では、転出元の学院及び転入先の系において規定の条件を満たした学生は、学士課程2年への進級時に入学時の学院に属さない系への所属を行うことが可能である。