電気電子系 News
新型超低電圧リテンションSRAMの最適設計と性能解析
今回、電気電子系約70名の中から9名が、特定課題研究に関する優れた論文発表を行い、この賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。
CMOSロジックシステムのメモリとして用いられるSRAMに関する研究です。SRAMはCMOSロジックの性能を決める重要な役割を担っています。特にSRAMの待機時電力の削減は重要な課題となっています。この研究では、待機時電力の削減に極めて有効な超低電圧リテンションSRAM (ULVR-SRAM)の新型セルの設計方法を確立し、最適設計したセルを用いて性能解析を行いました。
この研究は、スマートフォンなどのスマートモバイルデバイスに搭載されるSoC(System-on-a-chip)といったCMOSロジックシステムに用いることができます。SoCではトランジスタの微細化とともに高性能化を実現してきましたが、この微細化は待機時電力の増大を招いてしまいます。また、このようなロジックシステムでは応用上待機状態が多く、待機時電力の削減が重要な課題となっています。特に、SoCに用いられるSRAMは揮発性メモリであるため、待機時電力の削減が難しく、また、このSRAMの存在がロジックシステム全体の待機時電力にも大きな影響を与えています。所属研究室で提案したULVR-SRAMは、わずか0.2V程度の超低電圧でデータ保持することで高効率に待機時電力を削減できます。今回、特定課題研究で取り組んだ新型のULVR-SRAMセルは、従来よりも少ないトランジスタで構成できて、待機時電力も高効率に削減できることから、SoCの低待機時電力化に有効であると考えています。
これまで、本研究室で開発してきたULVR-SRAMセルは、従来のSRAMに用いられる6Tセルからトランジスタ数が増えるという課題がありました。また、これまでのULVR-SRAMセル以上にノイズ耐性を向上できれば、さらなる待機時電力削減能力の向上が期待できます。特定課題研究では、トランジスタ数を削減した新型ULVR-SRAMセルについて、超低電圧リテンション時にノイズ耐性を向上させ、待機時電力をさらに削減できる最適設計法を確立しました。そして、最適設計されたセルの性能解析から、新型セルは従来のULVR-SRAMセルよりもさらに待機時電力を削減できることを明らかにしました。
研究開始当初では設計基準を満たす最適設計値が見つからずに苦労した時期もありましたが、最終的には新たな設計方法を導入することで、これを克服できました。今回、このような賞をいただき、たいへんうれしく思っております。また、特定課題研究を行うことで、回路設計の面白さを実感することができました。研究することの意義やその醍醐味の一端を知ることができたと思います。特定課題研究を取り組むにあたり、様々なアドバイスをくださった研究室の先輩方、そして非常に丁寧なご指導をいただいた菅原先生に深く感謝いたします。この1年間の経験を活かし、修士課程でもさらに研究に励みたいと思います。