電気電子系 News
半導体パワーデバイスの直列接続駆動に関する研究
今回、電気電子系164名の中から17名が、優れた修士論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。
パワーエレクトニクスの分野では、電力変換器の高性能化(高効率化や大容量化)を目的として、多様な回路・制御方式に関する研究が行われています。電力変換器は、半導体パワーデバイスを用いて直流から交流などの電力の変換・制御を行いますが、例えば高電圧向けの電力変換器の場合、半導体パワーデバイスの耐圧などの制限から、様々な技術的工夫が求められます。
私の修士論文では、半導体パワーデバイスの性能限界を回路方式で打破する“半導体パワーデバイス直列接続方式”について研究しました。この方式は、電力変換器の耐圧を向上させるだけでなく、導通損失の低減による低損失化や、安価な低耐圧デバイスへの置き換えによる低コスト化なども期待できます。ただし、半導体パワーデバイスを直列接続した場合、それらの電圧分担に不均等を生じることがあり、素子の破壊を防ぐために電圧分担を均等にする必要があります。
本研究では、半導体パワーデバイスを直列接続した回路で、実際の運転状態(負荷変動など)まで想定した実験を行い、まず電圧分担の基本的な特性を確認し、理論的に解析しました。これにより、従来までの制御手法の課題が明確となり、現在はそれらを解決できる回路や制御方式について検討を進めています。
本研究で取り組んでいるテーマは、特定のアプリケーションに限定されず、あらゆる電力変換器に応用可能な要素技術であるため、家電から産業用機器まで、幅広く省エネルギー化に貢献できると確信しています。具体的には、産業用モータドライブなどの電力変換器の高効率化や、太陽光・風力用パワーコンディショナーの高圧化・大容量化などへの応用が期待できます。
優秀修士論文賞という素晴らしい賞をいただき大変嬉しく思います。修士課程を終えるにあたり、藤田先生をはじめ、日頃よりご指導いただいた先生方、日々の生活を精神面からも支えてくれた友人、そして暖かく見守ってくれた家族に感謝しております。本当にありがとうございます。
私の研究では、シミュレーションよりも実験を基に検討することが多く、得られたデータに理論的な意味があるのか否かを見極めるのに苦労しました。先生方との議論を通じて、改めて、基礎原理に立ち返り、現象を考察する重要さを痛感しました。また、時には、実験結果を信じ抜く精神力も必要であることを学びました。
博士課程でも、これまで培った知識や経験を活かし、研究活動に励んでいきたいと思います。