電気電子系 News

2021年度優秀修士論文賞 受賞!― 佐々木 樹里行さん(Pham研究室)―

次世代メモリ SOT-MRAM の実用化に向けての研究 - BiSbトポロジカル絶縁体/磁性体接合の界面制御

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2022.05.06

今回、電気電子系約140名の中から13名が、優れた修士論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。

佐々木 樹里行さん(左)と指導教員のファム ナム ハイ准教授

佐々木 樹里行さん(左)と指導教員のPham先生とのツーショット写真

この研究はどんな内容で、どのように世の中の役に立つことが期待できるのでしょうか?

次世代不揮発性メモリのスピン軌道トルク(SOT)-MRAMの実用化に向けた研究を行いました。現在は一般的にPCの短期メモリはDRAMとSRAM(CPU)が使用されていますが、常にメモリを保持するためには電力供給が必要です。その代用としてスピントランスファートルク(STT)-MRAMが商品化され始めましたが、書き込み電流が大きいことから、耐久性、スイッチング速度、デバイスの書き込み電力量などで、改善箇所多々があります。それらの改善点を克服できるものとしてSOT-MRAMが期待されています。

SOT-MRAMは記憶素子である磁気トンネル接合(MTJ)をスピン流源からスピンホール効果を用いて記憶内容となる”0”と”1”のスイッチングを行います。このスイッチングを行う書き込みの性能はスピン流源のスピンホール効果の大きさに依存し、我々はスピンホール効果が大きいことで着目されているトポロジカル絶縁体に着目しました。
トポロジカル絶縁体とは内部が絶縁体なのに対し表面が金属状態の材料であり、薄膜では一般的な金属類と同等の伝導率を保有しています。現在確認されているトポロジカル絶縁体は数種類ありますが、Pham研究室では特に伝導率とスピンホール効果の大きいBiSbを使用しています。

BiSbはこれまで研究されてきたSOT-MRAM目的で使用されていた重金属と同等の伝導率を保有しながらスピンホール効果が2桁オーダーで大きく、書き込みの消費電力をSTT-MRAMと比べ最大100倍近く削減でき、スイッチング速度を最大10倍以上早くできることからSTT-MRAMはもちろん非常に高速なスイッチング速度を必要とするSRAMの代用としても使用することができることから応用化に向けて期待されています。

しかし、BiSbは大きな界面ラフネスや元素拡散の問題があり、半導体デバイスの量産で使われるスパッタリング法で製膜するとスピンホール効果の特性が劣化してしまう問題に悩まされていました。

そこでまずBiSbの下部に平坦性を向上するためバッファー層及びシード層を、BiSbの上部に中間層を挿入し、発生させたスピン流をより効率的にメモリのスイッチングを活かせるよう製膜することで性能向上を目的とした研究を行いました。その結果、スイッチングに必要となるエネルギーの効率を最大20倍近く上げることに成功しました。

受賞の感想

大変嬉しく思います。私は、電気電⼦を通じて、既存の技術に頼らず、⾰新的なデバイス開発を通じて、地球温暖化やエネルギー対策に貢献したいと思い、進学しました。実際⽇々の研究は与えられたタスクを地道にこなすのが中⼼となり、⼤半はすぐに結果が出ないことばかりで、苦労したこともありました。けれども成果を得た瞬間の達成感は何物にも変えられません。ただし、決して一人の力ではできたことではありません。電気電⼦のみならず共同研究者である国内外の産業界と⼤学の各分野の専⾨家の指導が無ければなし得ませんでした。ご指導頂いた先⽣、職員や研究者の⽅々に感謝の気持ちでいっぱいです。

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