電気電子系 News

2021年度学士優秀論文賞 受賞!― 二谷 時緒さん(小寺研究室)―

MOSFETを用いたスピン量子ビット読み出し回路に関する研究

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2022.04.15

今回、電気電子系約100名の中から9名が、特定課題研究に関する優れた論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。

小寺先生(左)、二谷時緒さん(右)

小寺先生(左)、二谷時緒さん(右)

この研究はどんな内容で、どのように世の中の役に立つことが期待できるのでしょうか?また、特に苦心した点などがあったら教えてください。

私たちの研究室では「量子コンピュータ」の基盤技術を研究しております。量子コンピュータは古典コンピュータに比べて高速な計算が可能だとされており、次世代型のコンピュータとして期待されています。将来的に量子コンピュータが実現すると、その計算能力から社会的に大きな影響を与えることが予想されます。私の研究は量子コンピュータのための素子の集積化に関わる研究ですので、はじめに私たちが研究している量子コンピュータについて説明したいと思います。

量子コンピュータを実現するうえで、私たちの研究室では量子ドットと呼ばれるシリコン半導体のナノ構造中に電荷を閉じ込め、スピン量子ビットとして用いる方法に注目しています。閉じ込められた電荷のスピンの向きが量子ビットに対応し、これを用いた量子計算で高速な演算が可能になるとされています。量子コンピュータを実現するうえで重要なことの1つがこのスピンを読み出すことです。スピンの持つ量子情報は大変壊れやすく、熱の影響が小さい極低温下でもマイクロ秒しか保つことができず、高速な読み出しが必要になります。そのスピンを読み出す方法の1つとして反射測定と呼ばれる手法があります。反射測定では高周波を量子ドットに印加し、その高周波の反射率の変化から量子ドット中のスピン状態を読み取ります。この時、量子ドットにLC共振回路をつなげるのですが、共振回路で用いるインダクタ(コイル)が物理的に大きいという問題があります。これは空間的な制限のある極低温環境で動作する量子コンピュータにおいて集積化の妨げになると考えられます。そこで、このインダクタを小型化するために、MOSFETでインダクタとして働く回路を作製し、極低温下におけるその動作が目的になります。極低温におけるMOSFET単体の直流電流特性や高周波特性を測定し、それらを用いた計算やシミュレーションから反射測定に十分なインダクタンス値と動作周波数を確認することができました。

やはり、実験や卒論執筆中に自分の力不足を感じることが多かったです。MOSFETに関する知識はもちろんのこと、実験におけるボンディングやハンダ付けなどの技術的な面、シミュレーションソフトの使用方法など多くのことについての実力が不足していました。実験中にうまくいかないことや、その原因の究明に時間がかかることも多く、また、実験を進めるときはどのように進めるのか、どのような方法があるのか、という点で多くの苦労をしました。今でもまだまだ実力不足な部分は多いですが、1つ1つ地道に取り組み、またわからないことを先輩方が優しく指導して下さったおかげでなんとか苦難を乗り越えることができたと思います。

受賞の感想

受賞のお知らせの時は大変驚きました。自分なりにこの一年間勉強してきましたが、まだまだ未熟な部分も多いと思っているので、受賞は大変嬉しいですが、ここで満足せずに修士課程でより一層勉学に励みたいと思います。また、多くの方が支えてくれたおかげで賞を取ることができたと思っていますので、小寺先生、米田先生、研究室の先輩、同期、スタッフの皆さん、そして友人と家族に改めて感謝申し上げます。小寺研究室の皆様には本当にお世話になり、ここに所属しなければこのような賞を受賞することもなかったと思います。本当に皆様に感謝しております。

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