電気電子系 News

2021年度電気電子系代表および学士優秀論文賞 受賞!― 佐藤 直人さん(波多野研究室)―

高温高圧下環境におけるダイヤモンド量子センサの応用に向けた電子スピンの圧力依存性の計測

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2022.04.14

今回、電気電子系約100名の中から9名が、特定課題研究に関する優れた論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。

佐藤直人さん

佐藤直人さん

この研究はどんな内容で、どのように世の中の役に立つことが期待できるのでしょうか?

波多野岩崎研究室では、ダイヤモンドの量子性を用いた量子センサ、量子ネットワーク用の量子光源や量子メモリの研究を行なっています。ダイヤモンド中のNV欠陥(NVセンタ)は、ダイヤモンド中の炭素原子が窒素と空孔に置換された格子欠陥です。磁場、応力、電界、温度に対して高い感度をもち、かつ単一のNVを観測できる点から nm スケールの空間分解能を有しているため、高感度かつ高空間分解能な量子センサとして機能します。そのため、NVセンタの量子センサとしての応用は科学から産業まで幅広く、科学分野においては細胞内計測、タンパク質の構造解析などの生命科学分野や、地球惑星科学、固体物理学、化学、量子情報通信、産業での応用ではバッテリー、脳磁、心磁、電力インフラ、微細なデバイス評価装置用センサの開発など多岐にわたる分野への応用が期待されています。先行研究では、高温常圧下環境においてナノダイヤモンド中のNVセンタの電子スピンを量子コヒーレンス制御することに成功しています。また、常温高圧下環境では鉄の圧力駆動α⇄ε相転移測定へ向けた圧力係数測定が行われており、ガドリニウムの温度ー圧力相図の測定を可能にするベクトル磁場イメージングを実証しています。しかし、高温高圧下環境でのNVセンタの共鳴周波数の温度圧力の依存性は未だ不明であり、地球惑星科学の発展のためにも高温高圧下環境で動作する高精度なセンサの研究が早急に求められています。

そこで、本研究では高温高圧下環境で温度圧力イメージング可能な感度をもつ高精度なセンサを開発することを延長線上の目標として、高圧下環境を作り出す実験系と計測方法の構築、さらに高圧下におけるNVセンタの電子スピンの特性を計測しました。その結果、学内にNVセンタとダイヤモンドアンビルセルを組み合わせた測定系を立ち上げ、ODMRスペクトルを測定することに成功しました。また、本研究の独自性として高圧下環境において未検証であるナノダイヤモンドにおいても先行研究と同様の結果が得られたことが挙げられます。高温系への拡充が容易であるナノダイヤモンドにおいて常温高圧下環境でODMRスペクトルが測定できたことは、高温高圧下環境での測定を目指す我々にとって非常に大きな前進であると考えられます。この結果は、将来的に地球内部の組成や下部マントル最下部の構造、地磁気の揺らぎの解明を目指すにあたり、ナノダイヤモンド中のNVセンタを使用することの有用性が示されたと考えられます。

受賞の感想

この度は電気電子系代表、学士優秀論文賞という2つの栄誉ある賞を頂くことができ大変光栄に思います。新型コロナウイルス感染症の影響により、様々な面で制限されることが多い中、NVセンタに関して基礎理論から丁寧に教えていただいた波多野先生、岩崎先生、荒井先生、太田先生をはじめ、実験方法や研究者としての心構えに関して幾度となく指導していただいた先輩方、切磋琢磨しあった編入生の同期にこの場を借りて深く感謝申し上げます。修士課程においても、今回の受賞に慢心することなく研究に真摯に取り組んでいきたいと思います。

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