電気電子系 News
洋上風力発電向け多回線直流送電の供給信頼度向上に関する研究
今回、電気電子系約140名の中から13名が、優れた修士論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。
榎本光芳さんと使用した実験装置
修士課程では、将来の洋上風力発電の大規模導入に向けて、洋上と陸上を結ぶ直流送電システムについて研究を行いました。大容量長距離や海底ケーブルを介した送電に際して、直流送電は交流送電と比較してコスト的なメリットがあるため、洋上風力発電の導入に向けて非常に注目されています。一方、直流送電は交流送電と比較して、事故時にその悪影響を低減する保護動作が難しい課題があります。研究室では直流送電システムにおける供給信頼度(電力システムから電気を供給する信頼度)向上に向けた研究を行っていますが、先行研究では送電ケーブルの一部で事故が発生した際に、付随する洋上の風力発電設備が停止する課題がありました。大規模な洋上風力発電の導入に向けては、事故が発生しても、風力発電設備が運転継続することが求められます。そこで私の研究では、直流送電システムに必要となる交流‐直流変換器と送電経路の切替が可能な断路器の組み合わせによる、風力発電設備が運転継続可能な系統切替手法を提案しました。その結果、シミュレーションおよび縮小モデルを用いた実験検証にて発電設備の運転継続可能性を確認し、供給信頼度の向上につながる成果を挙げられました。本研究成果は、将来の洋上風力発電の導入に貢献しうると考えます。
この度は素晴らしい賞をいただき、大変光栄に思います。本受賞は、佐野先生をはじめ、日々大変ご丁寧なご指導を頂いた先生方、非常に優秀な先輩方、友人、そして家族のサポートがあってこその受賞です。この場をお借りして深く感謝申し上げます。
本研究は、複数の電気機器が協調する直流送電システムを対象とし、かつ事故が起きても送電を停止しないように制御する比較的過酷な状況下での研究でしたので、実験検証の際は様々な困難がありました。しかし、その分研究成果を得られた際は非常に大きな達成感を感じ、同時に、おこがましいのですが、日々電力の安定供給に携わっている技術者の方々に感謝の思いが湧いてきました。現在はエネルギー事情の過渡期かもしれませんが、そのような状況下でも電力の安定供給実現のため、少しでも貢献できれば幸いです。