電気電子系 News
プラズマ処理による紙幣付着細菌の殺菌およびウイルス不活化実験
今回、電気電子系約100名の中から8名が、特定課題研究に関する優れた論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。
沖野研究室では、プラズマ技術を様々な分野へ応用する研究を行なっています。プラズマとは固体、液体、気体に次ぐ物質の第四の状態のことを指します。プラズマ中では反応性の高い活性種や高エネルギーの粒子が生成されますので、半導体製造などに使用されてきました。従来のプラズマは低気圧下で生成されていましたので、真空チャンバやポンプなどが必要でした。我々の研究室では、これらを必要としない、大気圧プラズマの研究を行なっています。
私は,大気圧プラズマを用いた殺菌をテーマに研究を行いました。現在、コロナウイルスの影響もあり、細菌やウイルスに敏感になっていると思います。例えば、紙幣は不特定多数の人々が触れるため多種多様な細菌やウイルスが付着しており、感染増加の一因ではないかと言われています。そこで本研究では、誘電体間で連続的な放電を行ってプラズマを生成する,誘電体バリア放電を用いて紙幣に付着した細菌の殺菌とウイルスの不活化の実験を行いました。その結果、窒素で生成したプラズマで高い殺菌効果が確認され、さらに加湿したガスを用いるとより高い殺菌効果が得られることを確認しました。また、プラズマの下流部で殺菌効果が高かったことから、寿命の長い活性種が殺菌に寄与している事が示唆されました。ウイルスでの不活化効果も確認することができました。これらにより、紙幣消毒の高速化に向けた装置開発への指針が得られました。この結果は、紙幣だけでなく薬剤や熱による処理が困難な対象の消毒に応用できると考えています。
このたび、学士優秀論文賞を受賞できたことを大変嬉しく思います。私は高専でプラズマに関する研究を行なっていましたが、より高度な研究がしたいと考えて3年次編入で本学に入学しました。このため、高専での研究の経験と反省も活かしながら実験や論文の執筆をすることができました。沖野先生をはじめ、実験や論文の執筆でお世話になった先輩方に大変感謝しております。また,殺菌実験では東京医療保健大学の岩澤先生と松村先生に大変お世話になり、この場をお借りして感謝を申し上げます。今回の受賞を励みにして、修士課程での研究を進めていきたいと思います。