電気電子系 News
犠牲層を用いたCIGS太陽電池の特性およびアルカリ金属拡散への影響
今回、電気電子系約100名の中から8名が、特定課題研究に関する優れた論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。
山田研究室では、CIGS太陽電池に関する研究を行っています。このCIGS太陽電池は、現在最も一般的な結晶シリコン系太陽電池の100分の1程度の厚さで、軽く柔軟性のある太陽電池です。しかし、現状では効率の良いCIGS太陽電池を作成するには、高温での製膜に耐えられるガラス基板を用いる必要があり、CIGS太陽電池のもつ特性を十分に活かしきれていません。また、更なる高効率な太陽電池の構造として、バンドギャップの異なる太陽電池を重ねる“タンデム太陽電池”がありますが、ボトムセル上にトップセルを直接製膜してしまうと、製膜時の熱によりボトムセルの接合が損傷してしまうという問題があります。この問題を回避するため、先行研究ではガラス基板上に”犠牲層”と呼ばれる層をあらかじめ作製し、その上に作製した太陽電池を、犠牲層を溶解して剥離するという研究が行われていました。しかし、この犠牲層を入れることで、太陽電池の効率が著しく低下することがわかっていました。
本研究では、犠牲層に用いられている材料の組成を変えることで、犠牲層がCIGS太陽電池に及ぼす影響について調査を行いました。その結果、犠牲層として用いていたZnOに含まれるBの濃度が、CIGS太陽電池の高効率化に重要な“ガラス基板からのアルカリ金属拡散”に大きく影響することがわかりました。また、純粋なZnOを犠牲層として用いることで、犠牲層を用いたCIGS太陽電池の効率を大きく改善することに成功しました。これにより、薄さや軽さを活かした太陽電池や、タンデム太陽電池のトップセルの作製手段としての応用が考えられます。
この度は学士優秀論文賞という栄誉ある賞をいただき、大変嬉しく思います。私自身は高専からの編入生で、特定課題研究は私の人生で2回目の研究となるのですが、高専時代の経験と反省を活かして満足のいく結果が出せたと感じています。また、去年度は新型コロナウイルスの流行により、様々な面で制限されることの多い1年でした。そのような状況下でも熱心にご指導をいただいた山田先生、宮島先生、中田先生をはじめ、装置の使用法や測定法など親身になって教えてくださった先輩方、多くの面で相談に乗っていただいた研究室の方々にこの場を借りて感謝いたします。これからも今回の受賞を励みにし、研究に取り組んでいきたいと思います。