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高電圧工学 -授業紹介#16-

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2020.11.27

こんにちは、電電HPサポーターズです!
授業紹介シリーズでは電気電子系の特徴的な授業を学生目線で高校生・学士課程1年生向けにわかりやすく紹介します。
今回は3年生向けの『高電圧』の授業の紹介です。

コロナ禍中はZoom講義

コロナ禍中はZoom講義

まず、高電圧とはなんでしょう?

「電気設備技術基準 第3条」により、600Vを超えるものは法的に「高圧」と定められています。しかし、技術の観点から見ると、この「600V」という定義はあまり包括的ではありません。なぜかというと、600V以下の電圧であったとして、印加された材料が絶縁性をなくし、大電流が流れてしまう「絶縁破壊」現象も十分に起こり得るためです。
そのためこの講義では、放電と絶縁破壊を起こしかねない電圧を「高電圧」と捉えます。

講義の前半では、まず高電圧による放電現象の「物理」について学びます。放電というと、一番お馴染みの現象は「雷」です。雲の中のひょうが衝突し合うと、正負の電荷分離が起こります。この電荷により強い電場が作られ、雲と大地の間の絶縁が破壊されると、雷放電が発生します。

ちなみに、雷撃を避けるために樹木をできるだけ遠ざけたほうが良いと考えられがちですが、実は樹木の上端を頂点とした45°の円錐内部という保護範囲に身体を位置したほうが安全です。また、身体全体を保護範囲に入れるためにしゃがんだほうが良いということと、樹木に近づきすぎると雷撃を受けて帯電した樹木からの2次的な放電を受けかねないことは要注意です。

講義の後半では、主に実在のモデルを使った問題について話し合い解決するグループワークに取り組みます。「何回の雷が打てば露天風呂の温度が30度上昇するか」などのクイズについて吟味することで、高電圧工学についての理解を深められるだけではなく、身の回りの物理現象を大学で勉強する論理に結びつけられるようになります。エンジニアとして最も求められている能力、すなわち限られた知識で問題を解いていく力も磨かれます。

業界によっては、想像だにできない規模の電圧を取り扱うことが必要になります。例えば、送電の時の電力損失を抑えるために、発電所から送られる電気は110kV以上もの高電圧まで昇圧され送電されます。さらには1MVで電子ビームを生成する電子顕微鏡まで開発されています。
このような大電圧を取り扱うエンジニアになるには、特殊なノウハウと知識が必要になります。この講義を通じて、高電圧という異世界への一歩を踏み出せることでしょう。

~担当の赤塚先生からの一言~

「高電圧工学で一番学んでほしいこと」
高電圧現象を理解するには、電気回路の知識だけでなく、原子励起・電離などの原子物理学や、バンド理論などの物性物理学など、様々な知識が必要です。高電圧工学の講義を通じて、これまで習った様々な分野の物理学・化学を統合し現象を理解する「総合力」を身につけて欲しいと思います。
「学生のみなさんに伝えたいこと」
高電圧工学というと、重電・電力分野の応用工学・安全工学とみなされがちです。
それはもちろん重要なのですが、くわえて、放電現象やプラズマ生成にも高電圧の知識が必要です。
放電プラズマを利用したメモリ製造などの半導体工学、放電や電子ビームによる電磁波の生成など、電気電子工学の様々な分野に、高電圧現象は応用されています。電気電子工学を志す多くの方々が、高電圧工学に興味を持ってくれるよう、期待しております。
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