電気電子系 News
「異種熱電材料の直列結合形成と任意形状に貼付け可能な光熱起電力型撮像素子への応用」に関する研究
今回、電気電子系約140名の中から15名が、優れた修士論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。
この度、本学工学院電気電子系電気電子コースの修士課程を修了すると共に、電気電子系優秀修士論文賞及び副賞の楽水会賞を受賞し、更には電気電子コースの総代に選出していただきました。優秀修士論文賞・楽水会賞に加えて総代への選出により学位記授与式への期待が膨らんだ矢先、昨今のコロナウイルス騒動の影響で思い望んだ形にはなりませんでしたが、身に余る光栄であることには変わりありません。様々な形でサポートを賜りました方々にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。
手短にですが私自身の研究内容に触れていきますと、カーボンナノチューブフィルムによるフレキシブル非破壊撮像カメラに関する研究という点が一つの大きな軸として挙げられます。微細工業製品の全自動大量生産に伴う生産量・速度双方の飛躍的向上に対して、品質保証手段として安価に量産可能な高機能非破壊検査素子の活用が必須となります。私の所属する河野研究室では低コストで大面積加工が可能であり、高い機械的強度や超広帯域電磁波吸収等のユニークな性能を示すカーボンナノチューブに注目し、任意形状に貼付け可能な薄膜非破壊撮像カメラの設計を進めています。ミリ波・テラヘルツ波・赤外・可視光それぞれに特徴的な高速立体撮像を実証し、マルチモーダルなスマートデバイスへの展開が期待されます。修士課程の2年間では主にフレキシブル非破壊撮像カメラの徹底的かつ網羅的な基礎撮像性能の向上に取り組み、産業用プロトタイプの開拓へと繋がるに至りました。
素子材料の物性評価といった基礎研究から顧客ニーズに合わせた産業システム化を含む応用研究まで、学生の立場のうちから一貫して最前線に立てるという点が河野研究室の大きな強み・魅力であり対外的にも大きな関心を寄せられる独創的研究の根幹を成す一方で、研究に従事する身としては日々新たな分野への挑戦となります。当然ながら壁にぶつかることも多く、心身ともに打ちひしがれることもありますが、その度に自らの置かれた環境がいかに恵まれているかを強く痛感しました。研究室の仲間達は公私を通じて私を支えてくれる大きな助けとなり、彼らの存在無しには修士課程での努力が大きく実を結ぶことは無かったと感じています。小寺哲夫先生には研究室同士の繋がりが強いこともあり、日々気さくに接していただきました。浅田雅洋先生、鈴木左文先生とは研究分野が近いこともあり学内発表のみならず国内外の学会においても幾度となくご一緒する機会に恵まれ、数多くの建設的な助言を賜りました。コース主任である若林整先生には本学COIプログラムを通じて貴重なアウトリーチの場を様々にアレンジしていただきました。
最後に指導教員の河野行雄先生には修士課程学生としてだけでなく、人間性を一回りも二回りも大きく育てていただきました。学部4年時の卒業論文研究時から3年間に渡り、投稿論文や解説書籍の執筆、当該研究分野の最高権威国際会議における基調講演を含む数多くの学会発表といった対外発表に加えて、国内外の学会における多くの受賞・表彰や様々な助成金獲得、更にはテレビ出演による研究紹介といった盛んなアウトリーチ活動等、貴重な経験を何度も積むことができましたが、時に厳しくも常に前向きで理路整然とした河野先生の万全の指導があってこそでした。改めて感謝申し上げます。
修士課程での2年を含む東工大での6年間は、丁度6年前の高校3年生時点での想像を遥かに上回る充実した期間となりました。6年間の東工大生活を経て社会へ飛び出す方々が多数の中で、私は引き続き河野先生の指導の下、博士課程へ進学し、数少ない7年目の東工大生活を迎える学生となります。しかしながらいずれの進路においても東工大での学び・成長は今後の私達の大きな核になると確信しています。