電気電子系 News

千葉研究室 ―研究室紹介 #44―

ハイブリッド自動車用スイッチドリラクタンスモータ、磁気浮上ベアリングレスモータ

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2016.11.25

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、省エネルギー、温室効果ガス削減に貢献する2種類の革新的モータの研究開発を行う、千葉研究室です。

教授 千葉明

電力・エネルギーグループ
電気電子コース・エネルギーコース
研究室:大岡山キャンパス・S3-601/607/608
教授 千葉明別窓 助教 杉元紘也別窓

研究分野 電気機器、メカトロニクス、制御工学、磁気浮上
キーワード レアアースフリーモータ、スイッチドリラクタンスモータ、ベアリングレスモータ、磁気軸受
Webサイト 千葉研究室別窓

主な研究テーマ

研究テーマ

省エネルギー、温室効果ガス削減に貢献する2種類の革新的モータの研究開発を行っています。電気自動車やハイブリッド自動車の主機モータへの応用を目指して、レアアース磁石を用いずに、高性能を実現するスイッチドリラクタンスモータの解析、設計、試作、実験、評価を行っています。また、次世代モータとして、機械的ベアリングを用いずに、電磁力によって回転軸を磁気支持する磁気浮上ベアリングレスモータの基礎研究を行っています。

本研究室の研究テーマは、電気、機械、情報、電子を融合した内容であり、幅広い知識と技術を身に付けることができます。また、実機を設計・試作し、実験することを大切にしています。モータの研究を通して、ものづくりの重要性を学ぶことができます。

最近の研究成果

EV/HEV用スイッチドリラクタンスモータ(SRM)

スイッチドリラクタンスモータ(SRM)は、固定子及び回転子が鉄心と巻線のみで構成され、永久磁石を使用しないため、安価で堅牢である利点があります。現状、市販のハイブリッド自動車の主機モータには、永久磁石が使用されていますが、レアアースの供給不安や価格変動の問題から、永久磁石を用いないSRMへの関心が高まっています。しかしSRMは、以下の4点の課題があり、ハイブリッド自動車用への応用は難しいとされていました。(i)低トルク密度、(ii)低効率、(iii)インバータが特殊、(iv)振動・騒音が大きい。

本研究テーマでは、これらの困難な課題に果敢にチャレンジし、これまで(i)(ii)を解決するモータ構造に関する研究開発を行いました。設計段階では、モータの3Dモデルを作成し、磁界解析ソフトを用いて、シミュレーションを行い、構造を検討します。一方、この分野は、良いシミュレーション結果が出たとしても、その結果のみでは評価されず、実験結果が重要です。そこで、ハイブリッド自動車用と同じ体格で、同じトルク、出力を発生させることが可能な、60 kWの実サイズの試作機を製作し、実験的に有効性を実証しました。

この研究成果は、SRMが永久磁石モータに匹敵する性能を出すことが可能であることが、実サイズの試作機で実験的に実証された世界初の事例であり、世界中の企業や大学から注目を集めています。

スイッチドリラクタンスモータとは?鉄心と巻線のみで構成され、永久磁石を用いない 堅牢、安価

スイッチドリラクタンスモータとは?
  • 鉄心と巻線のみで構成され、永久磁石を用いない
  • 堅牢、安価

SRMの効率向上の変遷 鉄心材料や巻線の工夫により、SRMの効率向上を図ってきた。

SRMの効率向上の変遷
鉄心材料や巻線の工夫により、SRMの効率向上を図ってきた。

ハイブリッド自動車用主機モータへの応用 トルク、出力、効率目標を達成

ハイブリッド自動車用主機モータへの応用 トルク、出力、効率目標を達成

ハイブリッド自動車用主機モータへの応用
トルク、出力、効率目標を達成

スイッチドリラクタンスモータの振動・騒音低減

SRMの振動・騒音は20年以上前からの課題であり、低減方法に関する論文は多数存在しますが、顕著な低減効果はありませんでした。

本研究室では、2012年頃から本研究テーマに取り組んでいましたが、最初の2年間は成果が出ませんでした。2014年頃に、固定子ヨーク部のラジアル力の和の脈動を低減するように電流を流すことで、振動・騒音が低減可能となる革新的方法を提案し、実験的に有効性を実証しました。

本研究テーマでは、SRMの振動・騒音が大幅に低減可能となるメカニズムを数式による基礎理論の構築、磁界解析を用いた数値シミュレーションによる検証、試作機を用いた実験的検証により明らかにすることができました。この研究成果は、学術的な価値だけでなく、産業応用においても多大な貢献となっています。

スイッチドリラクタンスモータの試作機

スイッチドリラクタンスモータの試作機

固定子ヨークのラジアル力の和の脈動を低減

固定子ヨークのラジアル力の和の脈動を低減

画期的な制御方法を提案し、大幅な振動・騒音の低減に成功

磁気浮上ベアリングレスモータ

近年、モータの小型化・高速化・高効率化が進み、今後もその要求が高まると見られています。しかし、現状の機械的ベアリングでは、一般的に、高速回転時に機械損が増加するため、回転速度が制限されていまします。そこで、本研究室では、機械的ベアリングが不要で、電磁力により回転軸を非接触で磁気支持可能なベアリングレスモータの研究開発を行っています。

ベアリングレスモータは、長寿命・メンテナンスフリーという利点があるため、高速回転用途に限らず、ベアリングの故障が多い用途、長時間の連続運転が要求される用途やメンテナンスが困難な場所に設置される場合にも大変有効です。したがって、冷却ファンや風力発電機などへの応用を目指して、研究開発を行っています。

ベアリングレスモータとは?機械的なベアリングが不要で、電磁力により回転軸を磁気支持

ベアリングレスモータとは?
機械的なベアリングが不要で、電磁力により回転軸を磁気支持

ベアリングレスモータの利点

ベアリングレスモータの利点

冷却ファンへの応用 試作した固定子

試作した固定子

冷却ファンへの応用

冷却ファンへの応用

直径1mのブレードを取付けた試作機

直径1mのブレードを取付けた試作機

ブレードの影響を考慮したブロック線図

ブレードの影響を考慮したブロック線図

風力発電機への応用

教員からのメッセージ

千葉先生より
千葉研究室では、ものづくりを重視した次世代の革新的モータの研究開発を通じて、設計から解析、試作、実験、評価まで幅広く携わることができます。スイッチドリラクタンスモータの研究では、困難な課題にチャレンジし、独創的なアイディアを実際に形にできる点が面白いと思います。ベアリングレスモータの研究では、なかなか磁気浮上せず、何度も失敗と改良を続けて、最後に磁気浮上に成功した時の感動は計り知れないものです。世界で活躍する一流のモータ技術者になるために、千葉研究室で共に貴重な時間を過ごしましょう!

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 千葉明
E-mail : chiba@ee.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2697

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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