電気電子系 News
ハイブリッド自動車用スイッチドリラクタンスモータの高トルク化に関する論文
千葉明教授とポスドクの清田恭平氏らが、IEEE Power and Energy Society and the Editorial Board of the Transactions on Energy Conversionより「Third place best paper in IEEE Transactions on Energy Conversion」を受賞しました。
この賞は毎年IEEE Transaction on Energy Conversion掲載の論文(2015年183件)から、上位3件に送られる賞です。論文のタイトルは“Development of a Rare-Earth-Free SR Motor With High Torque Density for Hybride Vehicles”です。
この論文では、レアアースフリーモータの一つであるスイッチドリラクタンスモータのトルク・出力・効率の3点を、2003年から市販されているハイブリッド自動車用永久磁石モータと同等あるいはそれ以上まで向上可能であることを実証しました。
ハイブリッド自動車、燃料電池車、電気自動車などの環境車には、小型、軽量、高効率、高トルク、広い動作範囲を持つモータが適用されています。現在、レアアース永久磁石を利用したモータが適用されていますが、永久磁石のコストが高く、また、永久磁石の動作温度が低い問題点があります。このような状況下で、千葉明教授は、レアアース磁石が不要で、コストが低く、動作温度広い特長があるスイッチドリラクタンスモータに注目しました。研究開始当初は、スイッチドリラクタンスモータには4つの課題があるといわれていました。すなわち、低トルク密度、低効率、騒音、特殊な制御回路です。特に、トルク密度と効率の課題を同時に解決することは困難な状況でした。
本研究では、2003年から市販されているハイブリッド自動車用永久磁石モータをターゲットに研究を進めました。すなわち、目標永久磁石モータと同じ外径、軸長にて、
を目標に設定しました。この論文では、従来より薄く損失が小さいケイ素鋼板を使用することにより最高効率を95%まで向上させました。また、極数(モータのコイルの数)を一般的なものの3倍にし、デザインを工夫することにより、最大トルク400 Nmも同時に達成しました。さらに、実際の走行を想定した電力消費量計算により、従来のモータと同等の電力消費量を達成可能であることを明らかにしました。また、出力は160%に向上することを明らかにしました。効率およびトルクを、実機サイズのモータを実際に試作し実験を行うことで実証したことが、学会にて高く評価されました。本論文に掲載されている実験は、当時本学学生であった清田恭平氏をはじめとする、本学、北海道大学、東京理科大学などの学生諸君の協力を得て行われました。