電気電子系 News

2025年度優秀修士論文賞 受賞!-佐藤 優介さん (小寺研究室)-

変調マイクロ波駆動によるシリコン正孔スピン量子ビットのコヒーレンス向上

  • RSS

2026.04.03

2025年度は電気電子コース124名(9月修了9名,3月修了115名)の中から10名が、優れた修士論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。

(左:松﨑、右:山中君)

手前は小寺哲夫准教授(左)と佐藤優介さん(右)。奥は実験で使用した希釈冷凍機(左)と測定系(右)。

この研究はどんな内容で、どのように世の中の役に立つことが期待できるのでしょうか?

私たち小寺研究室では、シリコンなどの半導体を用いて、汎用的な量子コンピュータを実現するための研究を行っています。量子コンピュータは、量子力学的な「重ね合わせ」や「量子もつれ」などを計算に用いる新しい原理のコンピュータであり、従来のコンピュータでは途方もない時間がかかる複雑な計算を、ごく短時間で解く可能性を秘めた次世代の技術です。実用化されれば、金融、創薬、AIなど幅広い分野で、社会に大きな革新をもたらすことが期待されています。

実用的な量子コンピュータの構築には、計算の基本単位である量子ビットを、百万個規模で集積する必要があると考えられています。現在、超伝導や光など様々な方式が研究されていますが、この大規模集積の達成が大きな壁となっています。小寺研究室が取り組む半導体方式では、量子ドットと呼ばれる微細な半導体構造中に閉じ込めた電子や正孔のスピン状態を量子ビットとして利用します。この手法の最大の強みは、私たちの身の回りにあるパソコンやスマートフォンで使われている既存の半導体製造技術をそのまま応用できる点です。そのため、百万個という大規模な集積化を叶える、有望なアプローチとして注目されています。

その中でも、私たちはシリコン中の正孔スピンを用いた量子ビットに着目しています。正孔スピンは、スピンと電場の結合が強く、スピンの操作性に優れるという利点があります。一方で、電気的なノイズに対して脆弱であり、量子状態を保持できる時間(コヒーレンス時間)が短いという課題がありました。そこで私たちは、スピン操作に用いるマイクロ波の位相を時間的に変調することで、ノイズの影響を抑制し、シリコン正孔スピン量子ビットのコヒーレンス時間を向上させることに成功しました。

本成果は、このマイクロ波変調技術を用いることで、正孔スピンの短いコヒーレンス時間という課題を克服できる可能性を示すものです。シリコン正孔スピン量子ビットの実用化に向けた大きな一歩であり、大規模量子コンピュータ実現への重要な技術的前進であると考えています。

受賞の感想

このたびは優秀修士論文賞に選出いただき、大変光栄に存じます。先生方、研究室の皆様、共同研究先の皆様、そして家族の多大なるご支援に、心より感謝申し上げます。

半導体で量子コンピュータをつくるという小寺研究室の研究内容は、物性や量子に関わるものづくりがしたいと考えていた私にとって、まさに理想的なものでした。小寺研究室での2年間は、人生において最も濃密な時間といっても過言ではありません。世界最先端の実験設備の中で、新しいことを探求し、それを形にする楽しさを強く感じました。研究室は常に活気があり、日々のディスカッションから多くのことを学ぶことができました。また、海外での国際会議に参加する機会も多くいただき、新しいアイデアや考え方に触れることができたのも非常に大きな喜びでした。

小寺研究室で得たかけがえのない経験は、今後の人生において力強い自信となります。この経験を糧に、今後もより一層精進してまいります。

  • RSS

ページのトップへ

CLOSE

※ 東京科学大学の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE