電気電子系 News
電気自動車駆動用2重3相極数切換誘導電動機に関する研究
2025年度は電気電子コース124名(9月修了9名,3月修了115名)の中から10名が、優れた修士論文発表を行いこの賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。

3年間の研究室生活でモータについて議論しあい、同じく優秀修士論文賞を受賞した同期の山中 治紀君(筒井・遠藤研究室)と共に撮影 (左:松﨑、右:山中君)
私は電気自動車(Electric Vehicle, EV)駆動用モータに関する研究を行っております。本研究で注目するEV駆動用モータには主に3つの要求が挙げられます。まず,1つ目にレアアースフリーである事です。EVの安定生産にあたっては,動力源であるモータの安定供給が必要不可欠です。EV用モータとしては、現行の電気自動車の多くが永久磁石を用いた永久磁石同期電動機ですが、永久磁石を製作するにあたり大きな価格変動が伴うネオジムやジスプロシウムなどのレアアースが必要となります。これらの価格変動はモータの安定した生産,もといEVの安定した生産に影響を与えることになるため,EV用モータとしてはレアアースを使用しないモータが良いと考えられます。
2つ目に求められる性能としては耐故障性が挙げられます。ガソリン車で原動機のエンジンストール(エンスト)が発端で事故に繋がるのと同様に,EVにおいてもインバータ故障により事故に発展する可能性があるため,EV用モータには万が一インバータ故障が発生しても安全に運転が継続できるようにフェールセーフを実現する構成が要求されます。
3つ目に求められる性能としては広範囲の動作領域が挙げられます。自動車は市街地の走行から高速道路での走行,登坂走行に至るまで幅広い走行環境が存在するため,駆動用モータとしては幅広い駆動領域で高性能である事が要求されます。
これらの要求に対して、誘導電動機(Induction Motor, IM)を基にした極数切換IMが有効であると考えられます。極数切換IMは構造が簡単で堅牢性が高いIMの構造を踏襲しており、インバータを複数台用いた多相構成であるため、モータ本体の堅牢性に加え、駆動系のフェールセーフを実現することができます。さらにIMは永久磁石を使用しないモータであるためレアアースフリーに貢献し、且つ永久磁石によりモータの磁極数が固定されないため、固定子巻線への電流の流し方により自在にモータの磁極数を変更することができます。この極数切換が幅広い動作領域の確保に貢献します。
本研究ではインバータを2台使用した2重3相構成の極数切換IMについて、極数切換が可能な巻線配置やモータ構造の違いによる動作性能の差異を電磁界解析によって明らかにしました。この研究はEV需要が高まっている世の中に対して、極数切換IMの有効性を示すとともに極数切換IMの有効的な導入を検討する上で役に立つと考えられます。
この度の優秀修士論文賞の受賞に関して、大変光栄に存じます。本研究にあたりご指導賜りました千葉 明教授、清田 恭平准教授はじめ、ゼミの際に貴重なご意見賜りました筒井 幸雄 特任教授、藤井 勇介助教(現 九州工業大学 大学院 生命体工学研究科 准教授)に心より感謝申し上げます。また、日頃より支えてくれた家族に感謝申し上げます。
また、私は高専から修士修了までの9年間に渡って電気電子を専攻してきました。今年度をもって学生生活が終了するということで、電気電子を志した原点について振り返ってみることにしました。私が電気電子を志したきっかけは2011年3月11日に発生した東日本大震災の時で、当時小学3年生でした。私の地元周辺では地震直後から暫くの間停電しており、夜間は懐中電灯の明かりを頼りに生活しておりました。元々工作が好きだった私は懐中電灯のように明かりを確保できるものを自分でも作ってみたいと思い、当時家に持ち帰っていた理科の豆電球実験の教材と半透明のプラスチックケースなどを組み合わせて、より広範囲に明かりが確保できるように電池のつなぎ方や豆電球、ケースの置き方などを当時の知識ながらに停電の中で試行錯誤しました。電気の重要性を理解し、電気電子に魅力を感じたのがまさにこの時でした。
来年度からは電気電子分野に関連した企業に就職するため、電気電子を志した小学3年生の時の初心を忘れずに、自身がこれまでに身に着けてきた知識を活かしていきたいと考えております。