電気電子系 News
IEEEメダル(2018年)とのダブル受賞は世界初
東京工業大学の赤木泰文名誉教授(現・イノベーション人材養成機構特任教授)は、9月8日(日本時間9月9日)、欧州パワーエレクトロニクス学会(EPE: European Power Electronics Association)の最高位賞「2020 EPE Gaston Maggetto Medal(ガストン・マジェット・メダル)」を受賞しました。赤木名誉教授は2018年に世界最大の電気電子分野の国際学会であるIEEE(アイ・トリプル・イー、The Institute of Electrical and Electronics Engineers)から2018 IEEE Medal in Power Engineering(メダル・イン・パワーエンジニアリング)を受賞しています。EPEとIEEEの両方から最高の栄誉であるメダルを受賞したのは世界で初めてです。
EPEの設立は1983年で、本部はベルギーのブリュッセルにある国際学会です。1985年からは「パワーエレクトロニクスとその応用」に関する国際会議を主催しています。IEEE Power Electronics Society(米国電気電子学会 パワーエレクトロニクス部門)の設立は1987年です。世界のパワーエレクトロニクス研究者の多くはEPEとIEEEの会員です。
赤木名誉教授のパワーエレクトロニクス※の研究、なかでも大容量電力変換システムとその産業・交通・電力への応用に関する長年の功績が今回の受賞につながりました。この賞は、欧州における電気自動車の先駆的研究者でありEPE初代会長のガストン・マジェット教授(ブリュッセル自由大学、1939~2007年)の名を冠しています。EPEによると、EPEの賞の中で最高の賞とされています。授賞式はオンラインで開催されました。
本賞の日本人受賞者は、2018年の正田英介氏(東京大学名誉教授、前・公益財団法人鉄道総合技術研究所会長)に次いで二人目です。赤木名誉教授は、2018年5月にIEEEのメダル・イン・パワーエンジニアリングを日本人として初めて受賞しています。IEEEは16の分野でメダルを授与しており、メダルはIEEEの最高の栄誉です。今回、世界で初めてEPEとIEEEの両方の最高賞を受賞する快挙を達成しました。
※パワーエレクトロニクス(電力電子工学)は、パワー半導体デバイス(電力用半導体素子)のスイッチング動作を活用して電力変換を高効率に実現する電気電子工学の基幹技術の一つです。その代表的な応用例は、情報・OA機器(ACアダプタ、PC電源)から家電製品(エアコン、冷蔵庫、IH調理器)、産業・医療機器(無停電電源、ポンプ、誘導加熱、MRI)、運輸・交通(新幹線/在来線電車、電気自動車、電気推進船)、太陽光・風力発電、直流送電などであり、多岐にわたっています。
突然、EPEの事務局から受賞決定のメールが届き、驚くと同時に大変に嬉しく思いました。どなたがノミネートしてくれたのかわかりませんが、たぶんドイツの大学教授ではないか、と推測しています。このノミネータの方を含め、同僚や大学院学生など多くの方々に感謝いたします。本学のイノベーション人材養成機構の特任教授としてキャリア教育を担当しながら、ライフワークとしてのパワーエレクトロニクスの研究を続けたいと思っています。