電気電子系 News
パワーエレクトロニクスの電力システム・スマートグリッドへの応用
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、電力システム用パワーエレクトロニクスに関する研究を行う、赤木・萩原研究室です。
研究分野 | パワーエレクトロニクス |
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キーワード | スマートグリッド、高圧モータドライブ、電池電力貯蔵装置、ハイブリッド直流遮断器、高圧・大容量DC/DCコンバータ |
Webサイト | 赤木・萩原 & 藤田研究室 |
近年、風力や太陽光に代表される自然エネルギーの大量導入が進んでいます。自然エネルギーの発電電力は時々刻々と変化するため、電力平準化を目的とし電池電力貯蔵装置を導入する必要があります。しかし、従来の電池電力貯蔵装置は大容量電池ストリングスを一括して設置・管理するため、電池ストリングスを構成する電池モジュールの一台に故障や不具合が発生した場合、システムを運転継続できないという実用上の大きな課題がありました。
本研究室では、次世代電池電力貯蔵装置に関する研究を行っております。これは、電池ストリングスを一括して設置・管理するのではなく、電池モジュールごとに管理を行う点に特長があります。具体的には最新のパワーエレクトロニクス技術、ディジタル制御技術を駆使し、世界で初めて実験検証に成功いたしました。左に示す実験装置は、電力変換器18台とリチウムイオン電池モジュール18個から構成されており、その実験結果は世界中の関連の研究者・技術者を唸らせました。これらの研究成果をまとめた学術論文は2013年にはIEEE Power Electronics Society から First Prize Transactions Paper Award を受賞しました。
日本の配電系統は樹枝状に構成されており、複数のフィーダから構成されております。従来、フィーダ電圧は配電変電所の負荷時タップ切替変圧器や自動電圧調整器といった機械的手法により調整されてきました。しかし、近年の太陽光発電の大量導入により、フィーダ電圧の管理を上記の機械的な手法を用いてのみで実現することが困難になってきました。
本研究室では、上記問題点を解決する手法として、ダブルスター構成モジュラー・マルチレベル・カスケード変換器を用いた電力潮流制御器に関して検討を行っております。これは、二つのフィーダ間の電力潮流を制御することで、太陽光発電が大量導入時においてもフィーダ電圧を適切に管理できる点に特長があります。左に示す実験装置は、パワーデバイス192個使用した世界最高レベルであり、経済産業省の「次世代送配電系統最適制御技術事業」の一環として研究を行いました。上記の実験装置を用いた実験結果・シミュレーション結果は、国内外の権威ある学術論文誌に掲載済みであり、非常に高い評価を得ています。2014年にはIEEE IAS IPCC First Prize Paper Award を受賞しました。
ファン・ブロアやポンプなどは、可変速運転を行うことによって大幅な省エネが達成できます。しかし、高圧・大容量インバータの開発・実用化は遅れています。従来、インバータの高圧化には多巻線変圧器を使用することで対応してきました。しかし、この複雑な巻線構造の変圧器は高コストで、信頼性が低いという課題がありました。
本研究室では、左図に示す次世代マルチレベル変換器を用いた誘導電動機・同期電動機駆動システムを設計・製作し、良好な特性を実証しました。2014年と2016年にはIEEE IAS IPCC Prize Paper Awardを受賞しました。
電気自動車の急速充電装置や、今後の普及が想定される直流スマートグリッドでは 高圧・大容量双方向絶縁形DC/DCコンバータが必要不可欠です。従来は商用周波数(50/60 Hz)変圧器を使用しており、小型・軽量化を実現するための障害でした。
本研究室では、次世代パワーデバイスであるSiC-MOSFET/SBDモジュールを使用した750 V、100 kW、20 kHz双方向絶縁形DC/DCコンバータに関して実験検証を行いました。その結果、電力変換効率(DC入力からDC出力まで)98.7 %という高効率を達成いたしました。この値は、同一回路・同一運転条件では世界最高効率です。損失分析については、世界のパワーエレクトロニクス研究者が思いもよらなかった簡便な手法を考案しパワーデバイスのスイッチング損失と導通損失、磁気デバイスの鉄損と銅損の分離に成功しました。現在も、さらなる高効率・小型軽量化を目指して研究を継続しています。
直流電気鉄道や実用化が期待される多端子直流送電システムでは、短絡事故が発生した場合に電流を遮断するため直流遮断器が必要不可欠です。従来の直流遮断器は、機械式遮断器(真空遮断器)とサイリスタ、コンデンサ、リアクトル、バリスタなどから構成されているため、遮断時間が長いという問題点がありました。
本研究室では、安岡・竹内研究室と共同でハイブリッド直流遮断器の研究を行っています。これは最新の半導体の高速動作と高速機械式遮断器を併用することで、直流電流の高速遮断を実現する点に特長があります。本研究室では、直流300 V、150 A定格(本実験室で可能な最大容量)の実験装置を設計・製作し、左図の特性評価から直流高電圧(250 kV以上)に適した次世代ハイブリッド直流遮断器の動作原理検証に至るまで幅広く研究しています。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 赤木泰文
E-mail : akagi@ee.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3549
准教授 萩原誠
E-mail : hagiwara@ee.e.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2852
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。