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2020年度ニコラ・テスラ賞受賞インタビュー    ―千葉明先生―

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2020.03.16

こんにちは、電電HPサポーターズです!
千葉明教授が、IEEE(アイ・トリプル・イー、Institute of Electrical and Electronics Engineering)の2020年度のニコラ・テスラ賞(Nikola Tesla Award)を受賞することになりました。
IEEEは、世界最大規模の電気及び情報工学分野の学術研究団体であり、世界中に42万人以上の会員がいます。また、IEEEのニコラ・テスラ賞は「電力の発生と利用への顕著な貢献」を表彰しているものです。
受賞者千葉明教授から感想を伺いました。

2020年度のニコラ・テスラ賞の受賞者千葉先生

2020年度のニコラ・テスラ賞の受賞者千葉先生

  1. Q:先生、受賞おめでとうございます!ご感想を聞かせてください。
  2.  本当にびっくりしたし、ありがたく思っています。こんなに早く来るとは思わなかった。
  1. Q:「ベアリングレス・リラクタンスモータへの貢献」が認められ、ご受賞されたんですね。モータの研究を始めたきっかけはなんでしたか?
  2.  学部と修士のときは、パワーエレクトロニクスを研究しました。どちらかというと、パワー・デバイスを使って電圧と電流のスイッチングを研究していたんです。特に、50 Hzや60 Hzの低い周波数から500 Hz, 600 Hzの高い周波数にする変換器を研究しました。それを使うと何がうれしいかというと、(高い周波数だと)モータの回転速度が上がるんです。それでモータの高速回転ができます。当時、高速回転で回るモータはあまりなかったです。
    それで、博士課程になって、発電機やらないかと言われたのはモータを研究するきっかけでした。そして、モータを研究したら、(回転速度)15,000 rpmを超えるあたりからベアリングでトラブルばかり起きたんです。24,000 rpmや100,000 rpm等で回したらベアリングが壊れてしまいます。ベアリングが壊れたら、モータのところを開けて交換するんです。
    例えば、(ボールペンを指す)ボールペンの回転する部分を開けて、また戻すと、全部はちゃんともとの位置に戻るんです。しかし、モータは、こっちをたたいたり、そっちをたたいたりすると、ずれるんですね。そのたたき具合によって、上手い人だとベアリング交換はうまくいくが、私うまくないから失敗してしまいます(笑)。
    これはないと思って。オシロスコープで、シャフトがずれてるかどうかを確認できたらいいなぁと思いました。それで思いついたのは、磁気浮上でした。磁気浮上させて、センサーをつければオシロスコープで観測すると中心がずれているかわかります。
    その時、磁気軸受はすでに存在していて、磁気軸受のマネをするのもつまらないし、ある日モータの軸合わせをしていた時に、電流を流しっぱなしで、普通だと回るはずのモータシャフトが、回らなくなりました。電流を切ったら、また回るようになりました。それで体験したのは、電流によって結構大きな力が発生するというのはわかりました。その力を磁気浮上に使おうと思いました。
    しかし、先生にアイデアを持っていったら、こう言われました。「千葉くん、君の言っていることは大変いいと思う。しかし、君は早く卒業したほうがいいと思う。それはあとにしたほうがいい」って言われてしまいました(笑)。そういうことで、まず卒業したほうがいいと思って、卒業したら楽しく、ベアリングレスモータの研究をやりました。
    最初のベアリングレスモータは中々浮上しませんでした。一年経っても、浮上しませんでした。止まっている状態だと浮上しましたが、回り始めるとドタンと倒れました。その半年後に、ようやく浮上するようになりましたが、そこまでは本当に長い道でした。それ以降も、面白いと言ってくれた人もいましたが、研究する必要はある?と言う人もいました。
  1. Q:IEEEのホームページを拝見すると、先生はベアリングレスモータ技術のパイオニアというふうに書いてありますね。他の研究者より先駆けてベアリングレスモータの開発に携わったということですね。
  2.  そうですね。当時、ベアリングレスモータを研究していたのは東工大のグループとスイスのETHチューリッヒ大学のもう一つのグループだけでした。我らは我らで、全てのモータをベアリングレスモータにするんだという理論を展開しました。はじめて会ったときは、似たようなことをやっているんだ、とびっくりしました。
    それから学会で会うたびに、あ、ちょっと違うことをやっているね、と少し競争しました。彼らは、会社を作って、製品にすることで一生懸命でした。我々は、モータの制御理論に一生懸命、数式を立て、論文を書くことに一生懸命でした(笑)やっていることは違うでしょう?
  1. Q:ベアリングレスモータの研究履歴について聞かせていただき、ありがとうございます!最後に本大学の若者たちへ一言をください。
  2.  学会で発表する時、質問がきます。はじめて学会でベアリングレスモータの発表をした時、すごくひどい質問がありました。「そのモータ絶対役に立たない」と言われました。大変がっかりしました。しかし、その意見は間違っていたと最近わかってきたんですね。だから、何を言われても、自分が面白いと思ったこと、やりたいことを研究したほうがいいと思います。


3月18日 13:55 本文中に誤りがあったため、修正しました。

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