電気電子系 News
超高速フォトニックネットワーク用光信号処理システムと光集積デバイスの実現
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、超高速光信号処理技術と光集積回路の実現を目指す、植之原研究室です。
波動・光および通信グループ
電気電子コース
研究室:すずかけ台キャンパス・R2-820
教授 植之原裕行
研究分野 | 光エレクトロニクス、光ファイバ通信システム |
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キーワード | 光信号処理、光信号歪補償、符号化・復号化、光スイッチング |
Webサイト | 植之原研究室 |
光通信システムは長距離・大容量伝送用途として世界に張り巡らされ、インターネット・モバイルネットワークのインフラとして必要不可欠です。しかしながら、信号当たり100Gbps、1本のファイバ当たり1Pbpsを超え、周波数利用効率を向上するための多値変調・マルチキャリア変調方式や、必要な帯域に応じてシステムを変更する技術、波形歪を歪量に応じて適応的に等化する技術、効率よく情報を収容する符号化・複合化技術が必須となっています。同時に、高密度集積素子の活用で低消費電力を実現することが求められています。光信号処理技術は、波長多重信号の一括処理や電気/光・光/電気変換の除去、低遅延性が期待でき、その実現を目指して取り組んでいます(図1)。
先頭ビットの相対位相と遅延干渉計の位相を合わせて干渉の強め合う条件を利用した超高速光信号のシリアル/パラレル(SP)変換(図2)、高非線形ファイバ中の四光波混合(FWM)による光排他的論理和(XOR)演算技術を応用した誤り訂正符号化(図3)、並列一括符号処理による誤り訂正符号の復調回路などの光信号処理技術の実現を目指しています。光SP変換については、回路規模を縮小するためのシリコン細線導波路構造の検討を進めています(図2)。
また光PSK・QAM信号に対して光ファイバ伝送中の非線形歪を低負荷で補償する逆伝達関数処理(図4)、半導体光増幅器(SOA)のFWMを利用した位相感応型信号再生器技術についても検討を行っています。
さらに、同相・直交位相、偏波、波長、直交副搬送波への多重ビット数を適切に組み合わせることにより変調エネルギーあたりの周波数利用効率を向上する符号化・復号化(多次元変復調)技術についても取り組んでいます。
高速光パケットスイッチの超高速ラベル識別回路として光SP変換器を応用する場合、処理ビット数の増加にともない構成素子数が増大するため小型・高密度に作製可能な集積技術が必須です(図2)。またデジタルコヒーレント光送受信器を実装した再構築可能な光分岐挿入装置(ROADM)においても波長分波・スイッチ・送受信回路の高密度実装が求められます。いずれも各機能をシリコンなどの半導体導波路素子で集積化することによって小型化・機能の高密度実装が可能です。現在、基本構成要素の試作と機能評価、小型実装を可能とする構成法の検討を行っています(図5)。超小型光集積素子を電気的に駆動するLSIとの2.5次元実装技術も重要です。
大容量のバースト光データを高効率かつ低遅延で転送を行う光パケットスイッチの実現が期待されています。各通信パケットの転送先情報を持つラベルを光パケットの先頭に付加し、光信号処理で識別した後に波長変換型光スイッチで転送することにより、競合確率と処理遅延の低減が期待できます。また、空間多重技術に対応した高密度・高スループットの多次元光ノードの構成法、光パスの設定・解放の繰り返しに伴う波長資源の断片化(フラグ)を光電変換を解さずに解消するデフラグ技術についても検討を進めています(図6)。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 植之原裕行
E-mail : uenohara.h.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5038
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。