応用化学系 News
吉川史郎准教授が優秀賞を受賞
東京工業大学は、「東工大教育賞」の受賞者を決定し、11月22日、大岡山キャンパスで授与式を行いました。
この賞は、教員の教育方法および教育技術等の向上を図り、より優れた教育を推進することを目的として制定されたもので、今回で21回目の授与式となります。
授与式では、受賞者に対して益一哉学長から賞状が授与されました。
教育に関して優れた業績を挙げたとして、応用化学系の吉川史郎准教授を含む次の28人(11件)が選ばれました。
※所属・職名は受賞当時のもの
小中高生に対して理数系さらには将来の工学への興味を喚起させることを目的に、動く機械を設計・試作して競争を行うなど、ものつくり実習出張授業を企画・実施している。1つのモーターで動く4足歩行機械やゼンマイユニットの振動を利用して走る移動機械など、短時間で安全に製作でき、受講生が独自の工夫を楽しめるテーマで実施しており、2010年から21校において延べ63回開講し、開催校アンケートや工学・教育関連学会で高く評価されている。
工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院は、合同で欧米、アジア・オセアニア地域の有力大学と部局間協定を締結して、3ヵ月程度の学生の受け入れ・派遣を中心とした学生交流を促進している。特に派遣では留学研究の計画立案、実施等を学生が主体的に行い、その成果を留学後に発表会で公開形式で報告している。一方、受け入れ学生は学内国際学生ワークショップ(MISW)などにも参加し、本学学生との交流の場で重要な役割を果たしている。これらは参加学生の国際意識の醸成のみならず、視野の拡大、自主性、積極性の向上に大きく貢献している。
理学院 物理学系では2年次第4クォーター(4Q)から1年間、学士課程の学生に実験技術を習得させているが、例年1割程の学生が単位修得に苦しんでいる。そこで2年次第3クォーター(3Q)で実施する物理実験学で、グラフの作成方法やレポートの書き方などにこれまでより多くの時間を割き、具体例を示したり演習問題を課したりと工夫をした。その結果、同年度4Qのレポートの内容が改善されたとの報告があり、講義内容変更の成果が出たことが分かった。
八島教授は、高校の化学の教科書21冊全てと大学の教科書を精査し、7つの問題点を指摘して改善案を示し、学会や学会誌で発表した。その内容を反映した教科書も執筆し、東工大の学士課程1年および3年次と大学院の講義、高校での出張講義、高校生の東工大での実習に生かしている。高校の教員、高校生、大学生および大学院生からの反響も大きく、東工大の教育の質向上や、高校教育、高大接続、大学院や企業での研究開発へのスムーズな移行に貢献している。
理学院 地球惑星科学系の実験科目「地惑実験」は、化学実験・物理計測から野外実習に至るまで広範な内容を含むため、学生が身に着けるべき安全衛生の知識は多岐にわたる。また、得られた実験データを正しく解析する力も必要である。そこで地球惑星科学系では必修科目「地惑実験学」を設け、上記実験科目の履修に必要となる安全衛生およびデータ解析を同時かつ集中的に教えている。これにより学生が安全に実験を行い、かつレポート執筆に必要なデータ処理をスムーズに行えるような流れを構築することができた。
本取り組みは、系所属学生にとって初めてとなるプログラミング基盤科目の重要性に鑑み、自動採点システムと人間による直接指導を併用した授業演習形態を実践した。良いプログラムを書くには、プログラム動作の正誤だけでなく、速さはどうか、見た目や保守性はどうか、といったさまざまな観点を理解し習得しなければならない。本取り組みにより、約80人の受講生が自身でプログラムの正誤を判断できるようになった。また受講生全員に多様なプログラミングの理解度を1対1で対面確認できるようになった。
研究室配属においては、全員にとって妥当な配属となるようにすることはもちろん、他の学生を気にして「第一志望」を調整するための葛藤や不公平感を避けることも重要である。これを実現するために、理論保証をもつメカニズムを単純に利用すると、教員の負担が非常に大きくなる。そこで森立平助教(在職当時)と共に中心となって利点と負担のバランスを議論し、2022年度から新しい方法で情報理工学院の数理・計算科学系の研究室配属を行っている。
環境・社会理工学院 融合理工学系では、学内の問題を発見し、解決策をデザインする課題解決型の授業「システムデザインプロジェクト」を行っている。この授業では、「誰のどのような問題か」、「それがなぜ放置されているか」に注目しつつステークホルダーにインタビューし、解決策をプロトタイピングして検証する方法を学ぶ。また、日本語話者と英語話者が混合チームで協力し、異なる視点から問題に取り組む貴重な機会を提供している。
2016年度から実施された東工大教育改革の成果検証を行うため、各種エビデンスデータの収集・提供および教育改革評価報告書の分担執筆を行った。2019年の着任以来、所属部門(リベラルアーツ研究教育院)において教育成果検証のためのアンケート調査、インタビュー調査を実施してきた経験を生かし、教育改革の重点施策に関するインタビュー調査や卒業前・修了前の学生アンケート調査のデータ分析を行い、全学の多岐にわたる施策に関する多面的な成果検証の実現に貢献した。
博士後期課程に、従来の教養先端科目(1単位)に替えて、2単位の越境型教養科目を新設した。異なる研究室の学生との協同作業を通して知見を広げるという旧科目の特長は残しつつ、オリジナルの動画教材を作成し、ダイバーシティ&インクルージョンの基本理念の浸透を図っている。2単位化によって、修了要件を満たすにも当科目を1度履修するだけでよく、オンライン開講でもあるので、学生にとっては受講のしやすさも高まったはずである。
リベラルアーツ研究教育院(ILA)と博物館は共同で、学士2年次向けの「大学史」と修士1年次向けの「東工大のキャンパスに親しむ」という文系教養科目を運営している。大学の各分野の成り立ちに詳しい教員(ILA、博物館、工学院、生命理工学院)や卒業生、東急株式会社をはじめとする地域の企業や組織から多様な視点を提供してもらうことにより、両科目とも多数の受講生を集める人気科目となった。学生による博物館利用の拡大、および学生自身が記録を未来に残して発信するサイクルの形成という効果を生んだ。