応用化学系 News

穐田宗隆名誉教授(前 応用化学系教授)と田中裕也助教が令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞

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2022.06.02

科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めたとして、穐田宗隆名誉教授(前 応用化学系教授)が令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を、田中裕也助教が同 若手科学者賞をそれぞれ受賞しました。文部科学省が4月8日、発表しました。表彰式は4月20日、文部科学省(東京都千代田区)で行われました。

科学技術賞(研究部門)は、科学技術の発展等に寄与する可能性の高い、独創的な研究または開発を行った者が対象です。令和4年度は48件(65名)が受賞しました。

若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象としています。令和4年度は98名が受賞しました。

東京工業大学では、穐田宗隆名誉教授、田中裕也助教を含む12名の関係者が令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞しました。受賞者の詳細については、東工大ニュース:「東工大関係者12名が令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞」別窓をご覧ください。

科学技術賞(研究部門)

穐田宗隆 名誉教授

 受賞業績:可視光駆動環境調和型物質生産に関する研究

穐田名誉教授

穐田名誉教授

太陽光に代表される可視光はクリーンなエネルギー源として注目されており、近未来の水素社会を支える水からの水素発生などとともにその有効利用に関する研究が活発に進められています。一方、本研究を開始した20年前には可視光エネルギーによる有機物生産はほとんど注目されていませんでしたので、教授に昇任して新規研究テーマに取り組むべく、着色した金属錯体の可視光照射によって生じる光励起種を利用した有機反応の開発をはじめました。その結果、二核錯体触媒からはじまって、酸化還元活性な光励起種の電子移動を経る温和な環境調和条件下での高反応性有機ラジカル種の発生、さらにはこの過程を含む「フォトレドックス触媒」反応系の開発につながりました。前後して発表されたマクミラン(David William Cross MacMillan)教授(2021年のノーベル化学賞受賞者)らの研究などとも相まって、時を経て現在のような大きな潮流になることは想像もできませんでしたが、研究のダイバーシティの重要性を実感しています。
今回の表彰はスタッフ(稲垣昭子助教、小池隆司助教、大沢正久客員准教授)ならびに学生諸氏の創意と努力の賜物であり、この機会を借りて改めて深謝します。(スタッフの職位は在職時のものです。)

二核光触媒(上)とフォトレドックス触媒(下)

二核光触媒(上)とフォトレドックス触媒(下)

若手科学者賞

田中裕也 科学技術創成研究院 助教

 受賞業績:金属錯体分子素子の創製と電子状態の解明に関する研究

田中助教

田中助教

分子エレクトロニクスは分子を電極に架橋することで電子素子を作り、これを基に電子回路を構築する分野であり、集積回路の構成素子を一分子サイズ(ナノメートルサイズ=10–9 m)へ極小化できることから、電子回路の小型化・省エネルギー化・省コスト化が期待されています。一方で、架橋する有機分子ワイヤー(分子導線)と電極との間に働く大きな抵抗が問題となっていました。私はこの問題の根幹が金属電極と有機分子の相互作用が弱いことに起因すると考え、電子状態制御が容易な有機金属錯体に着目しました。有機分子ワイヤーに金属錯体の共有結合を介して「ドーピング(導入)」した金属錯体分子ワイヤーは、既存の有機分子ワイヤーを凌ぐ高い単分子電気伝導度を示すことを示しました。また金属錯体を複数「ドーピング」することで、長さが伸張しても抵抗値変化の少ない分子ワイヤーの開発にも成功しました。
受賞対象となった研究を遂行するにあたり、ご指導いただいた穐田宗隆名誉教授を始めとする共同研究者の先生方、共に研究を推進した学生の皆様に心より感謝申し上げます。

分子素子の構造と金属錯体分子ワイヤーの概要

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