応用化学系 News
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の小西玄一准教授(応用化学コース 主担当)が第34回光化学協会賞(学会賞)を受賞しました。この賞は、光化学協会が1987年に創設したものであり、光化学の研究において顕著な業績をあげた50歳未満の光化学協会会員に授与されます。過去に、東工大の教員は、小尾欣一博士(第1回)、石谷治博士(第21回)が受賞しています。受賞式は、9月10日に光化学討論会(Web学会)の中で行われました。
光化学協会(現会長:石谷治 東工大 理学院 化学系 教授)は、1960年に第1回が開催された光化学討論会を母体として、1976年に田中郁三 本学教授(後に本学学長)を初代会長として設立されました。現在では、光化学、光技術領域の基盤研究から幅広い応用技術を担う専門家集団として、光化学の情報発信基地として大きな役割を担っています。また、世界の光化学系学会のコア学会の1つであり、オフィシャルジャーナルであるJournal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews(インパクトファクター11.95)を運営しています。
先端有機発光材料を指向した環境応答性色素の合理的設計
本研究は、東工大で過去10年間に集中的に行ったものです。環境に応答して発光性(発光色や発光オン・オフ)を変える蛍光色素に関する研究であり、基礎から分析化学、材料科学、生命科学への応用まで幅広い内容となっています。
私は、修士の時に有機光化学を学びましたが、博士課程では高分子合成、助手時代には生理学と材料科学の研究室に所属しており、光化学からは離れていました。光化学に本格的に戻ったきっかけは、本学に赴任して高分子の原料を作っていた時に、面白い発光現象に出逢ったことです。その後は、本業の高分子よりも光化学や液晶の研究が中心になりました。最近では専門のすべてがハイブリッド化して、何の専門家かわからなくなっています。この自由さは、若手准教授を研究室主宰者にする東工大高分子工学の伝統と、細野秀雄先生のもとで行ったJSTさきがけ研究(元素戦略)のおかげです。最後に、研究室出身の5人のアカデミアで活躍する研究者をはじめ、卒業生、共同研究者、旧高分子工学科の皆様に感謝いたします。
本研究業績に関して、凝集誘起発光(AIE、トムソン・ロイター社の2015年のリサーチフロンティアで化学・材料部門でランク2)は概念が提唱されてから2020年で20周年となり、小西研の論文がアメリカ化学会に発表された重要論文30選(日本からは唯一)および英国王立化学会に発表された重要論文(約40報、日本からは2報)に選出されました。