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田中裕也助教が2020年度「東工大挑戦的研究賞」を受賞

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2020.09.04

田中裕也助教(応用化学コース 主担当)が、2020年度「東工大挑戦的研究賞」を受賞しました。
授賞式は2020年8月4日オンラインのビデオ会議システムで開催されました。

挑戦的研究賞は、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏の分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開または解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰します。受賞者には、支援研究費を贈ります。40歳未満の准教授、講師又は助教が対象です。これまで本賞を受賞した研究者からは、多くの文部科学大臣表彰受賞者が生まれています。

田中裕也 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 助教

研究課題名:
アンチオーミック挙動を示す有機金属単分子ワイヤー開発への挑戦

田中 裕也助教

田中 裕也助教

単一もしくは少数の分子を電極に架橋することで電子素子を作り、これを基に極小の電子回路を構築する分野が分子エレクトロニクスです。分子エレクトロニクスは集積回路の構成素子を分子サイズ(ナノメートルサイズ=10–9 m)へ極小化できることから、電子回路の小型化・省エネルギー化・省コスト化が期待されています。一方で、その実現には色々な問題が残されています。その一つが架橋する有機分子ワイヤー(分子導線)と電極との間に働く大きな抵抗です。木や油が電気を通さないように、有機物は一般に電気を通しにくい性質があります。この常識を覆したのが、本学資源化学研究所(現化学生命科学研究所)出身の白川英樹博士であり、共役有機高分子であるポリアセチレンに不純物を“ドーピング”(添加)することで高い導電性を示す有機物を実現できることを示して、2000年にノーベル賞を受賞されました。共役高分子はマクロスケールの物質ですが、この手法をナノスケールへ展開できるのではないかと考えました。何を“ドーピング”するかが鍵となりますが、私は金属錯体に着目しました。多様な電子状態を取りうる金属錯体を“ドーピング”することで有機分子ワイヤーの物性を大きく変化させ、金属電極と有機物の間に働く抵抗を低減できると思ったためです。そこで有機分子ワイヤーの内部に金属錯体を“ドーピング”した有機金属分子ワイヤーを開発しました。これにより、既存の有機分子ワイヤーを凌ぐ高い単分子電気伝導度を示す分子ワイヤーを実現することができました。一方で、分子長が長くなると抵抗値が増大する、オーミック挙動を示すという課題が残されています。受賞となった研究では、複数の金属錯体を“ドーピング”し、その酸化還元特性を利用することで、分子長の伸長により抵抗値が低減するアンチオーミック挙動を示す分子ワイヤーの開発に挑戦します。

分子エレクトロニクスと有機金属分子ワイヤーの概念図

分子エレクトロニクスと有機金属分子ワイヤーの概念図

受賞のコメント
本研究は穐田・吉沢研究室で遂行されたものであり、穐田宗隆教授を始めとする共同研究者の先生方、共に研究を推進している学生との協同の成果です。この場を借りて深く御礼申し上げます。今年はコロナ禍により大学でも例年とは異なる研究環境に置かれていますが、この受賞を励みにして、より一層研究を推進していきたいと思います。
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