応用化学系 News

澤田敏樹助教、清水亮太助教が平成30年度東工大挑戦的研究賞を受賞

  • RSS

2018.07.24

澤田敏樹助教、清水亮太助教が、平成30年度東工大挑戦的研究賞を受賞しました。

挑戦的研究賞は、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏の分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開又は解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するとともに、研究費の支援を行うものです。本賞を受賞した研究者からは、数多くの文部科学大臣表彰受賞者が生まれています。

澤田敏樹 物質理工学院 助教

研究課題名:繊維状ウイルスの階層的な集合化を利用した熱伝導性材料の創製

澤田敏樹助教

澤田敏樹助教

近年の電気・電子機器の小型化や高集積化に伴う発熱密度の上昇により、より効率的に放熱させる材料の開発が求められています。硬い素材でできた発熱部と放熱部を、フィルムやコーティング剤を使って密着させて放熱を図るには、柔らかい有機系高分子材料が有用とされていましたが、金属やセラミックスと比較して熱伝導性が2〜3桁低い点が問題となっていました。これまでは、有機系高分子の熱伝導性を向上させるために、無機材料との複合化や、配向操作を施した長い高分子鎖の共有結合を介した効率的な熱輸送を図る方法が検討されてきました。

本研究では、高い熱輸送効率をもつ材料を開発するにあたり、天然に様々見られる生体由来の階層的な集合化に着目しました。無毒で紐状のウイルス「繊維状ウイルス」の一種であるM13ファージは、液晶形成するほど規則的に集合化することが知られており、その性質を利用し規則的な集合化を基に、M13ファージからなるフィルムを調製しました。M13ファージが高度に配向したフィルムの特定部分の熱拡散率は、特別な配向操作を施していないにもかかわらず、毎秒0.63平方ミリメートルと、有機系高分子でありながら共有結合を介さずとも無機材料であるガラスに匹敵することを発見しました。無配向な場合と比較すると10倍以上の値であり、M13ファージを効率良く液晶配向させながらフィルム化することが重要であることを見出しました。今後は、熱が非共有結合を介して効率良く輸送されるメカニズムを明らかにするとともに、より効率良く熱伝導できる材料を、ウイルスをはじめとする生体高分子から創製していきたいと考えています。

ボリニウムイオンによるナノカーボンのホールドーピング(a) ホウ素化合物を用いたπ共役化合物の新規ワンポット合成法および得られる種々のπ共役化合物(b)

(a) 繊維状ウイルスM13ファージの模式図, (b) M13ファージフィルムの外観(直径1.5 cm), (c) M13ファージが規則的に配向した集合体の側面図と上面図の模式図

受賞コメント

上記成果は芹澤武先生の研究室で遂行されたものであり、共同研究者の先生方、研究を一緒に推進している学生との協同で得られたものです。この場を借りて深く御礼申し上げます。本研究を通じて、ウイルスなどの生体高分子のマテリアル素材としての潜在性を明らかにすることを目指します。

清水亮太 物質理工学院  助教

研究課題名:薄膜界面制御された水素化物薄膜電池を用いた常圧高温超伝導体の創製

清水亮太助教

清水亮太助教

200 Kを超える高温超伝導が硫化水素において発見され、高温超伝導体探索に新たな潮流が生じています。ここでの主役は「酸化物」ではなく「水素化物」ですが、200万気圧という超高圧が必要であることから実用性に乏しいのが大きな課題です。そこで我々は、「水素化物薄膜合成」、「薄膜・界面制御技術」、「固体電気化学」の知見を融合した「水素化物薄膜電池」を実現することで、水素化物における常圧下での高温超伝導の発現を目指しています。この超高温超伝導が実現し、損失ゼロの送電によるエネルギー問題の解消や超高速量子コンピューティング応用を通じた巨大なインパクトを産み出すことが最大の目標です。

我々はこれまで、「機能性酸化物薄膜の合成・物性制御」、「薄膜Li電池の超高速充放電」などの研究を行ってきました。一見すると本提案との関連がわかりづらいですが、「水素化物薄膜」というキーワードにこれらの知見を組み込むことで、新しい融合分野を開拓しています。昨年度までに、チタンやマグネシウムなどの高品質かつ方位のそろった水素化物薄膜の作製に成功しました。今後は、パラジウムやマグネシウムの金属水素化物薄膜を電極とする「水素化物薄膜電池」を作製し、結晶歪み・水素の配位構造・水素含有量を自在に操ることで、バルクでは実現不可能な準安定相における新奇高温超伝導体の創製へと展開する予定です。

我々が提案する「水素化物薄膜電池」の構造と構造・水素量制御の概念図。

我々が提案する「水素化物薄膜電池」の構造と構造・水素量制御の概念図。

受賞コメント

栄誉ある賞と研究支援を賜りましたことに厚く御礼申し上げます。受賞にあたり、一杉太郎先生(本学教授)を初めとした共同研究者の方々と研究室の学生諸君に深く感謝いたします。

  • RSS

ページのトップへ

CLOSE

※ 東工大の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE