生命理工学系 News
令和8年度第1回(通算第116回)蔵前ゼミ印象記
2026年4月24日、Zoom による遠隔講義にて、令和8年度第1回蔵前ゼミ(通算第116回)が開催されました。
蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?
卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。
1986 東京工業大学 工学部 化学工学科 卒業
1988 東京工業大学 大学院理工学研究科 化学工学専攻 修士課程修了
講師の乘竹 史智 先生(ライオン株式会社)
当日の印象記を、広瀬茂久名誉教授が綴りました。その一部をご紹介します。
正統派の分かりやすい講義で、しかも前半は失敗談だったので、親しみが持てたのではないだろうか。「技術」という武器を持って、これから社会という大きな舞台へ飛び出していく学生を励ますには、「大言壮語」や「ビジネス書の流行り言葉」より、自分の経験を丁寧に分析し、「少しでも参考になれば嬉しい」という気持ちを込めた今回のような話の方がより効果的ではないかと思った。基本は、『技術起点』(技術でイノベーションを起こし、技術で事業を拡大していくこと)だが、「技術が良いだけではモノは売れない」という冷徹な現実があるので、『顧客視点』(生活者のことをイメージし、ニーズとその変遷に敏感に対応して研究する姿勢)も大事にして欲しい、そうすれば おのずと「自分たちの技術で、誰のどんな困りごとを解決したいのか?」という目的を仲間と共有でき、リーダー役も務まるようになるとのことだった。
オープンイノベーションも期待したほどの果実は簡単には得られない。まずは、会社にあるリソースを賢く利用し、「技術力×データを扱う力×実行力」で臨めば、道は拓けるそうだ。評論するだけでは世界は微塵も変わらない。自ら手を上げ、自分を賭けて実行する。その覚悟がある人にだけ、新しい道は見えてくる。乘竹さんの話をここまで厳しくとらえた人は少ないと思うが、「自らリスクを負って実行に移す」というと多くの人はしり込みするだろうから、「用意周到に準備した結果ならば、失敗してもやらないよりはまし」と考えて挑戦してはどうだろう。「ハミガキの香料開発」は職人芸で、AIには一番苦手な仕事と思っていたが、「熟達調香師(Flavorists)とAIが共同で作業を進めている」という最後の話題も印象深かった。「技術力×データ・AIを扱う力×実行力」が求められる時代になったようだ。
印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。
「2026年度1Q2Q 蔵前ゼミを始めるにあたり」中島 肇(1977化工)蔵前工業会神奈川県支部長
本ゼミは、蔵前工業会神奈川県支部と生命理工学院*との共催で、2008年7月から18年間続いてきています。OB・OGの方々に、それぞれのキャリアを語ってもらい、学生の皆さんの将来設計の一助にしていただくのが狙いです。数学の幾何の問題に例えれば、先輩方の経験(失敗談や成功談)は皆さんの人生行路の要所要所で「補助線」の役割を果たし進路決定を助けてくれるでしょう。
皆さんの多くはM1で、修士課程が始まったばかりですが、実際には もう就活が始まったと認識されていると思います。大学はもちろんのことですが、蔵前工業会の方でも皆さんの就活をしっかり支援したいと考えています。私は神奈川県支部長であると同時に本部の理事でもありますので、蔵前工業会としての支援活動も紹介しておきます。すでに情報は届いているかと思いますが、第2回K-seek(インターンシップ企業研究会)が次のようにオンラインで開催されますので是非ご参加ください。1日目は座学中心の業界勉強会で業界を8つに分類して概要が説明され、2日目は127社がWebinar形式でブースを開き、インターンシップのスケジュールなどについて説明があります。
【インターンシップ企業研究会(K-seek)】
第1部「インンターンシップ事前勉強会」(2026年5月9日、土)
第2部「インターンシップ説明会」(2026年5月10日、日)業界別
*(注)正確には2016年の大学組織改革前の大学院生命理工学研究科と大学院総合理工学研究科(いずれも、「すずかけ台キャンパス」〔現横浜キャンパス〕を拠点としていた)。本ゼミは、今回で116回目となりますが、過去の分も『蔵前ゼミ印象記』としてまとめられていますので読むことができます。著者は本ゼミの立上げに尽力された広瀬茂久先生(元生命理工学研究科長)で、バイオ分野以外のテーマについても分かりやすく書かれていますので、貴重なアーカイブとなっています。インターネットで「蔵前ゼミ印象記」と入力して検索すると出てきます。
勝丸泰志(やすゆき、1977電気)蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント
この度は蔵前ゼミにご登壇いただきまして、誠にありがとうございました。貴重なお話を数多く聴かせていただきましたが、学生も興味深く聴いたであろうことは、質問の多さからも伺えました。
事業における技術の位置付けを、Supply ChainとEngineering Chainで表し、研究を3つのステージに分け、さらに研究のジレンマを説明されたことで、学生は企業における研究の位置付けが良く理解できたと思います。
自社通販を行うことで、それまで得られなかったデータが得られ、生活者の行動がよくわかるようになったお話は、研究・開発だけに目が行きがちな理工系の学生が、事業において生活者の行動を知ることの重要性と市場のイノベーションに価値があることを理解する貴重な場になったと思います。
元々データに基づく(データドリブン)な世界を志向されていたとのこと、DXという言葉がなかった時代からDXを先取りされていたようですが、デジタル技術は情報産業だけではなく、あらゆる産業で活かせること、むしろ活かさなければならないことが理解できる、時宜を得たお話でした。
加えて『“良い習慣”の提案』が私には響きました。2005年当時のビジョンとのことですが、聞いただけで健康になりそうな良い言葉だと感心しました。
本年度第1回蔵前ゼミが、多くの貴重なメッセージが込められた実り豊かな時間となりましたことに重ねてお礼申し上げます。
最後に、乘竹様のご健勝と益々のご活躍をお祈り申し上げますと共に、引き続き東京科学大学並びに蔵前工業会へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。