生命理工学系 News

地方創生におけるアントレプレナーの役割と必要性

令和7年度第6回(通算第115回)蔵前ゼミ印象記

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2025.12.11

2025年11月14日、Zoom による遠隔講義にて、令和7年度第6回蔵前ゼミ(通算第115回)が開催されました。

蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?

卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。

講師:山本 雄貴 先生

2006 東京工業大学 工学部 経営システム工学科 卒業


講師の山本 雄貴 先生((株)ドローンショー・ジャパン)

当日の印象記を、広瀬茂久名誉教授が綴りました。その一部をご紹介します。

 今回は中東のバーレーンからの中継で始まった(現地7:30、日本13:30)。いつもどおりのオンライン講義だが、講師の山本さんが商用でBahrain(ペルシャ湾の島国)にいたからだ。主題の“ドローンショーで地方創生を!”の一環で、中東の地方ともいえるBahrainに、日本のコンテンツが豊富できめ細やかなドローンショーを売り込み、集客につなげようというのだ。山本さんたちの㈱ドローンショー・ジャパン(DSJ)は、日本ではすでに、多くの実績を上げている。例えば、和歌山城公園では、毎年冬におこなわれるライトアップの点灯式でドローンショーも実施し、それまで2000人程度だった観客を25000人にも増やし広い公園を人、人、人で埋め尽くした。ドローンショーと言えば夜空を彩る現代芸術で、今後はオリンピックの開会式など各種イベントの主役になるだろうと思われているが、弱点もある。演舞時間が蓄電容量の関係で約15分間と短い上に、花火と違って飽きられやすいのだ。そこで山本さんたちはマンガやゲームのキャラクターなど日本特有のコンテンツを組み込む工夫やドローンショーの合間に、TV番組のように、協賛企業のCMを挟み込むことにより、費用負担を軽くするなどのアイディアでドローンショーの役割と市場の拡大を図っている。

 山本さんは、学生時代から漠然と起業にあこがれを抱いていたが、具体的なイメージがつかめず、とりあえず銀行に勤めた。週末には趣味のように空想の世界で起業を構想しPowerPointにまとめているうちに、エンジェル投資家に出会い徐々に「憧れ」が現実化し、1年後に思い切って銀行をやめ起業したが失敗、第2の試みではヒットを飛ばし役員として上場にこぎつけたが、そのことによって かえって新規事業への挑戦が難しい状況となり身を引くことにした。そこからどのようにして日本を代表するドローンショー企業DSJを作り上げたのだろうか。そして銀行勤めは無駄だったのだろうか。山本さんのキャリアも、ドローンショーのコンテンツ(夜空に描くデジタル絵巻)になりそうな予感がする講演だった。

印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。

勝丸泰志蔵前ゼミ担当チーフ幹事

勝丸泰志(やすゆき、1977電気)蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント

 この度はお忙しい中を蔵前ゼミにご登壇いただき、誠にありがとうございました。大変興味深いお話と学生からの質問に丁寧にお応えいただき、講義時間があっという間に過ぎたように感じました。起業を考える学生には大変参考になる講義だったと思います。講義を終わっての印象はドローンショーのデモをずっと見ていたように感じながらも、心に残ったメッセージが多くありました。いくつか挙げてみます。

 ドローンショーは、見慣れると飽きてくるので、コンテンツ、ストーリーを考える企画力が大事だが、日本はコンテンツが豊富にあることが強みであること、そして、現在のバッテリーの能力では15分のショーが限界だが、15分のストーリーを考えることは、細部に拘る日本人に向いているとのお話は、日本人に向いたビジネスを考えるヒントをいただいたように思いました。

 ドローンを全て内製しているのは、新たな技術をすぐに活かせる、技術力でコストを下げられるといった事業上の理由のみならず、雇用の創出や子供達に学ぶ機会を与えるなどの社会的な意義があること、そして、海外でも普段人のいない所に人を集める効果があるため、海外顧客から資金を得て日本の地方の雇用を創出し、経済循環を良くする効果を期待できることとのお話は、地方創生にも意味づけと仕組みづくりが重要だと感じました。

 ビジネス・モデルやアイデアに価値があると思いがちだが、実はそうではなく、それらをサービスとして成り立たせるために高速にPDCAを回すことに価値があるとのお話は、教科書でビジネスを学んだだけの人と、失敗もしながら実際に事業を立ち上げてきた人との違いを感じました。そして、ビジネス・モデルを思いついたら隠すのではなく、人の意見を聞いてみようとのお話は、起業を考える学生にはとても貴重なアドバイスだったと思います。

 銀行員時代(社会人1年目?)に、事業計画書をつくることが趣味だったというお話には、えっと思いつつ、起業家とはそんなものかと感心しました。数え上げればキリがありませんが、私自身とても楽しく聞かせていただきました。

 この度のご登壇に重ねて御礼申し上げますとともに、山本様のこれからの益々のご活躍とご健勝、そしてドローンショー・ジャパン様のご発展をお祈り申し上げます。引き続き東京科学大学並びに蔵前工業会へのご支援を賜りますようお願い申し上げて、お礼とさせていただきます。

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