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会社の歩き方 ~研究者からビジネスマンへ、そしてバック・トゥー・アカデミア~

令和7年度第3回(通算第112回)蔵前ゼミ印象記

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2025.07.14

2025年6月20日、Zoom による遠隔講義にて、令和7年度第3回蔵前ゼミ(通算第112回)が開催されました。

蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?

卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。

講師:川代 尚哉 先生

2000年 東京工業大学 大学院社会理工学研究科 経営工学専攻 修士課程修了

2003年 東京工業大学 大学院社会理工学研究科 経営工学専攻 博士課程修了


川代 尚哉 先生

講師の川代 尚哉 先生(三井住友DSアセットマネジメント)

当日の印象記を、広瀬茂久名誉教授が綴りました。その一部をご紹介します。

 講師の川代さんは、セミ ノンフィクション作品の主人公だ。著者は本学の今野 浩(1940~2022)名誉教授。今野さんは経験則と勘に頼る日本の非合理的な金融ビジネスの将来に危機感を抱き、客観的な判断を可能にする「理財工学」を提唱し、本学に「理財工学研究センター」(1999~2022)を設置した。今日のフィンテック(FinTech、 Finance + Technology)の源流を作った金融サービスの革命児といっていいだろう。その研究を支えた大学院生たちを紹介したのが上記本『工学部ヒラノ教授と最後の学生たち』だが、その中でも話の展開の中心にいるのが川代さんだ。彼は家業継承のために大学受験の志望分野を変更した関係で浪人を余儀なくされ「遅れてきた青年」になったが、並外れた優秀さと強い意欲は今野さんの目に留まり、今野さんが本学定年後に移った中央大学の助手に採用された。しかし不運なことに、交通事故に遭いアカデミアでの活躍の場を失ってしまった。

 体調がやや回復したところで、英国の大手資産運用会社BGI(Barclays Global Investors)を皮切りに、外資系金融機関を渡り歩き、今野さんに仕込まれた数理統計分析や最適化理論などオペレーションズリサーチOR(Operations Research)の手法を駆使して科学的な資産運用の実績を積んできた。現在は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社に移籍し、親会社の三井住友フィナンシャルグループを兼務するかたわら、副業としてIT系アド・テクノロジーAdvertising technology企業“マイクロアド”(MicroAd)の開発責任者を務めるとともに、直近2年は慶応大学の研究員もしている。超多忙そうだが、恩師今野さんからの川代さんへの最後のメッセージ“Back to Academia”に応えるべく、日々論文を読んでアップデートを怠らず、かつ論文を書いている。アカデミックな家庭で育った奥さんからは「勉強しているあなたの姿を見るとうれしくなる」と言ってもらえるようだ。アンガーマネージメントAnger managementの重要さも印象に残った。以下、川代さんの略歴をたどりながら、師匠と彼自身からのメッセージを読み解いていこう。

印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。

勝丸泰志蔵前ゼミ担当チーフ幹事

勝丸泰志(やすゆき、1977電気; 司会)蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント

 この度は蔵前ゼミにご登壇いただき、誠にありがとうございました。学生時代に大規模なポートフォリオ最適化モデルを解くアルゴリズムや信用リスクモデルの考案とその解法について研究されたと伺い、素晴らしい研究をされていたのだなと感心しました。同時に、東工大でそのような研究が行われていたことに、私が在籍していた頃との違い(時代の変化)も痛感しました。現在は本業、副業、そして研究の3足の草鞋を履かれているようで、とても大変そうに思うのですが、楽しんでやっておられるように感じられ、どこからそのエネルギーが湧いてくるのかにも興味を覚えました。

 ご講演の中では、学生がキャリアを考える際に持っておくと良い数多くの視点をご紹介いただきました。(1)専門知識をその専門分野だけではなく、他の分野で活かすと新しいことを生み出しやすい。(2)そのためにも多くの分野を知っておくと良いこと。(3)科学・技術の仕事であっても、マネジメント力を身につけておくと周囲と良い関係が築け、良い仕事に繋がり、結果として良い処遇、良い収入が得られること。(4)企業(法人)には価値観があり、それが自分に合うかどうかを確認すること。価値観が合わず、それに沿わない行動をとるとマイナスの評価をされかねないこと。さらに、(5)リスキリングや働き方改革についても、わかりやすく説明していただきました。

 東工大卒業生は、エンジニアリングは優秀だが、マネジメントに興味のない人が多いとのお話しがありました。マネジメントの概念が掴めていない学生が多かったのではないかと思いますが、質疑応答のなかで複数の学生からマネジメントについて質問があったことは、関心を持つきっかけになったであろうと嬉しく思いました。

 リスキリングについては、世間ではデジタル人材の不足を補うために、あるいは熟年労働者のスキル転換のためにといった目的で取り上げられることが多いですが、今の時代は、働く環境の変化や技術の変化が益々早くなっていますので、若い人であってもリスキリングは常に心がけておかなければならないと理解してくれることを期待します。

 この度のご登壇に重ねて感謝申し上げますとともに、川代様のこれからの益々のご活躍とご健勝、そして今後とも東京科学大学並びに蔵前工業会へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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