生命理工学系 News

心からやりたいことをやろう!~人生は行動の積み重ね~

令和7年度第2回(通算第111回)蔵前ゼミ印象記

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2025.06.18

2025年5月23日、Zoom による遠隔講義にて、令和7年度第2回蔵前ゼミ(通算第111回)が開催されました。

蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?

卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。

講師:髙井 悠紀子 先生

2005年 東京工業大学 生命理工学部 生命科学科卒業

2007年 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 生体システム専攻 修士課程修了


髙井 悠紀子 先生

講師の髙井 悠紀子 先生(味の素(株))

当日の印象記を、広瀬茂久名誉教授が綴りました。その一部をご紹介します。

 とても元気が出る話だった。料理を美味しくしてくれる『味の素』のように、働く人の人生を豊潤にしてくれる『キャリアの素』がいたるところに練り込まれていたので、「シゴトは大人の最高の遊び」といわれても、すんなり納得できたのではないだろうか。

 幼少期に苦しめられた小児喘息が彼女の健康志向の基盤になっている。「健康って有難い。心も身体も元気じゃないとやりたいことができない!」と 子供の頃に刷り込まれたのだ。中学高校は、一転 体操着姿が目立つ活発な生徒として過ごし、医師を目指した。大学選びを意識するようになった頃、大きなニュースが世界を駆け巡った。ヒトのゲノム(設計図)が解読され、ゲノム医療の時代になるというのだ。純真だった髙井さんはゲノム情報の専門家になるべく、志望先を医学部から本学の生命理工学部に変えた。入学して2、3ヶ月もしないうちに、ゲノム医療は近未来ではなく、はるか先の話であることを悟り衝撃を受けた(近年の技術進歩は目覚ましく、当時の予想よりは早いかも知れない)。それでも卒論・修論では、ゲノム情報とその産物に関わるBioinformatics分野で一生懸命x一生懸命に研究をした。努力の結果 それなりの成果を得ることができたが、『自分は研究には向いていない』という冷酷な現実と向き合うことになった。

 それならば、「食」を通して人々の健康に貢献する道に進もうということで味の素㈱に「研究職」ではなく「総合職」で入社することにした。理系の修士出身で、総合職というのは当時としては非常に珍しいケースだったので、厳しい質問をされるのではないかと心配しながら面接に臨んだが、味の素社の採用担当者は逆に興味を持って丁寧に話を聞いてくれた。 “ハキハキと自分の考えを言う”髙井さんの性格や未来への可能性に感じるところがあったのだろう。採用となった。今でもその時のことを思い出すと感謝の気持ちでいっぱいになるそうだから、会社側にとっても採用面接は“新人教育の最高の舞台”になり得るのだ。

 10年近く“B to B”の営業を経験したところで、思うところあって、丁寧に根回しをして異動を実現した。ここも異例の人事で役員の秘書になったのだ。従来の若い秘書は“受け身で献身タイプ”だったが、髙井さんは“攻めの秘書”として「役員」ではなく「役員の仕事」に重点を置いて秘書業務に取り組んだ。これが転機となり、最近ではサステナビリティ推進部で、味の素㈱が掲げる主要テーマの1つ「10億人の健康寿命延伸」に取り組んでいる。自分が1つ上のステー ジに上がったことを自覚できる環境で仕事が出来るのは幸せに違いない。髙井さんの1日は5:00起床に始まり、5:30ヨガ、6:00子供たち起床と続く。この習慣も身体と心の健康を保つ秘訣に違いない。

印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。

勝丸泰志蔵前ゼミ担当チーフ幹事

勝丸泰志(やすゆき、1977電気; 司会)蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント

 この度は蔵前ゼミにご登壇いただき、誠にありがとうございました。ヒトの健康に携わりたい!という学生時代に芽生えた思いを貫き続け、身体と心の健康を社会に対して、家族に対して、そして自分自身に対して維持・改善する取り組みを続けていらっしゃることがよくわかりました。

 仕事選びで、実験は向いていないから総合職を志望されたとのことですが、研究者か技術者になることが当然と考える学生には意外に思えたかもしれません。しかし、営業職でも理系の知識や経験を活かすことができるとわかり、企業での就業経験のない学生には有益であったと思います。秘書の仕事もそうですが、その仕事の目的を正しく理解していれば、やり方は色々あって、その中で自分の知見を活かせること、創意工夫の余地があることが伝わったかと思いました。

 髙井様の場合は、総合職を選択したことで、現在では会社の事業とご自身のやりたいことが完全に一致しているように思えましたが、そうなるように行動してきた結果だと言えるでしょう。営業職を続けている時に、ヒトの健康に携わりたい!のに何をやっているのだろうと考え、人事部に相談に行かれたとのこと、やりたいことがあれば、行動しようというメッセージを実践されていました。結果、それが今の仕事には直結しないまでも転機となったことは間違いありません。

 これから自身のキャリアをデザインする学生にとって、とても参考になるエピソードが随所にあったであろうことは、多岐に亘る多くの質問からも伺えました。この度のご登壇に重ねて感謝申し上げますとともに、髙井様のこれからの益々のご活躍とご健勝、そして今後とも東京科学大学並びに蔵前工業会へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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