生命理工学系 News
令和7年度第1回(通算第110回)蔵前ゼミ印象記
2025年4月25日、Zoom による遠隔講義にて、令和7年度第1回蔵前ゼミ(通算第110回)が開催されました。
蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?
卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。
1992年 東京工業大学 工学部 制御工学科卒業
1994年 東京工業大学 大学院理工学研究科 制御工学専攻 修士課程修了
講師の小川 敦司 先生(投資家、OGAWA(株))
当日の印象記を、広瀬茂久名誉教授が綴りました。その一部をご紹介します。
“幸せホルモン”には3種類あり、光の3原色のように、混じり方によって人それぞれの『幸せ』が醸し出されるようだ:(1)心身のストレスを緩和してくれる基本的な幸せホルモン〔リラックス・ホルモン、Serotonin、 S〕、(2)家族等とのつながりを司る幸せホルモン〔愛情ホルモン、Oxytocin、 O〕、(3)目的達成に向けてモチベーションを高め、高揚感を醸し出す幸せホルモン〔成功ホルモン、Dopamine、 D〕。S>O>Dとなるのが理想とされているが、ひと昔前は健康や家庭を顧みない猛烈型 S=O≪D が歓迎された。その反動もあってプライベート優先型 S=O≫D を経て、社会が成熟しつつある現在は、仕事とプライベートの融和型 S≤O≥D が標準となりつつあるが、時間に追われる状況は続いており、最も基本的かつ重要なリラックス・ホルモン(S)不足に陥っている。3種の幸せホルモンの発現パターンは人それぞれで、それこそが個性ゆえ無理に変える必要はないが、自由に使える時間を増やす工夫をして、幸せホルモンのバランスを整えるとより充実した一生を送れるに違いない。
そこでヒントとなるのが今回の小川さんの話で、手先の器用さを生かしてトヨタで、2回の海外赴任を含め、技術者としてのキャリアを満喫した後、思うところあって早期退職し、それまでの労働収入から権利収入(不動産投資)に切り替え、時間的制約から逃れることに成功した(53歳)。離れ業で特殊なケースとも思えるが、参考になることも多いと思うので、その過程をたどってみよう。
印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。
「2025年度1Q2Q 蔵前ゼミを始めるにあたり」中島 肇(1977 化工)蔵前工業会神奈川県支部長
このゼミは大学と蔵前工業会神奈川県支部との共催で行われています。両方(すずかけ台キャンパスと神奈川県支部)とも同じ神奈川県にあることが発足のきっかけです。ゼミの狙いは、社会に出て活躍している先輩からの 現役大学院生への 示唆に富むメッセージによって皆さんの将来に役立つ多くのヒントを得てもらうことにあります。
今回で110回目となりますが、過去の分(2008~)も『蔵前ゼミ印象記』としてまとめられていますので読むことができます。著者は本ゼミの立上げに尽力された広瀬茂久先生(元生命理工学研究科長)で、バイオ分野以外のテーマについても分かりやすく書かれていますので、貴重なアーカイブとなっています。インターネットで「蔵前ゼミ印象記」と入力して検索すると出てきます。
先輩たちがキャリアを重ねていく中で直面した、選択や決断を迫られた場面を紹介してくれますので、その時の判断基準や行動基準を皆さんが実際に体感できる貴重な機会になると思います。前向きに授業に臨んでください。
東京科学大学Science Tokyoの前身校の1つが創設された地の名称に因んで「蔵前工業会」と名付けられた私たちの同窓会組織は、国内外9万人もの理工学系人材からなるネットワークですので、蔵前工業会の活動にも関心を持ってもらえれば幸いです。
最後に、OB/OGの経験談と関連した蔵前工業会の新しい試みをお知らせします。神奈川県支部では、「Bridging/繋ぐ」をテーマに若手会員の活性化に取り組んでいます。その一環として、2023年から、各界のOB/OGに集まって貰って、パネルディスカッションを実施しています。2023年には宇宙業界、2024年には創薬ヘルスケア業界を取り上げ、その模様についてはYouTubeで公開していますので、是非ご覧ください。
勝丸泰志(やすゆき、1977電気; 司会)蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント
この度は蔵前ゼミにご登壇いただき、誠にありがとうございました。蔵前ゼミの基本テーマである「君たちの将来は? 就職はゴールではない」を体現されたお話で、とても貴重な時間となりましたことに感謝申し上げます。
さて、蔵前ゼミでは多くの講師の方がご自身の体験をお話しされますが、小川様のお話は、ご自身の体験の背景にある人生に対する考え方もお話しいただいたことで、どうしてこのようなキャリアを築かれたのかがわかりました。
生きがいは「幸せ(ポジティブな気持ち)を感じながらの暇つぶし」との刺激的な表現をされましたが、仰りたかったことは「暇つぶし」よりも「幸せ(ポジティブな気持ち)を感じながら」の方で、自分に与えられた人生の時間をポジティブな気持ちで過ごすことかと思います。そして、「ポジティブな気持ち」を言語化されたことが理系らしいですが、それがその後の選択の指針となったように思います。
講演のテーマにありました「就職先との向き合い方」の意味が、お話を聞いてわかりました。早期退職と聞くと働くことに消極的だった印象を与えかねませんが、実は、ご自身の目的を達成するために就職先を活用された、とても積極的な生き方であると思います。トヨタ自動車を早期退職されたのは、仕事は楽しいながらもワクワク感を感じにくくなったためでしょうか。生きがいにとても忠実な生き方であると感心しました。
アクセンチュアに転職されたことも、それまでのキャリアを活かし、その後のキャリアをより良いものにするための合理的な選択だったと思います。
これから自身のキャリアデザインをする学生にとって、とても参考になる貴重なお話しであったことが、講演後の質問の多さにも現れていました。時間内に収まらなかった質問は、後日送らせていただきますので、可能な範囲でご回答いただければ幸いです。
この度のご登壇に重ねて感謝申し上げますとともに、小川様のこれからの益々のご活躍をお祈り申し上げます。今後とも東京科学大学及び蔵前工業会へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。