電気電子系 News
廣川・戸村研究室の小島拓己さん(電気電子系 M1)が電子情報通信学会 アンテナ・伝播研究会(AP研)で優秀ポスター発表者に選ばれました。

授賞式での小島 拓己さん(中央)と戸村准教授(右)
電子情報通信学会 アンテナ・伝播研究会のポスター発表の中から、優れた発表を行った発表者が選ばれるものです。
本研究では、低軌道を周回する小型衛星に搭載するための、軌道上で展開する大型のリフレクトアレーアンテナの実現に取り組んでいます。リフレクトアレーアンテナは、平面上に並べた多数の小さな反射素子で電波を反射し、素子ごとに反射する電波の位相(波のタイミング)を変えることで、電波を狙った方向へ集めるアンテナです。
小型衛星で高速な通信を行うには、打ち上げ時は小さく折り畳んで収納し、軌道上で大きく広げるアンテナが必要です。しかし、広げた構造は変形しやすく、素子の位置がずれると電波の向きが乱れてしまいます。また、低軌道衛星は地上局に対して高速に移動するため、細く絞った電波を常に地上局へ向け続ける必要があります。そこで、素子ごとの反射位相を電気的に書き換えることで、この2つの課題を同時に解決するアンテナを目指しています。
本報告では、数千個もの素子を、液晶ディスプレイと同じアクティブマトリクスという方式で駆動することを想定しました。この方式では制御線の本数を大幅に減らせる一方、素子を1列ずつ順番に書き換えるため、書き換えの途中では新旧の位相が混在した状態で電波を放射します。そこで、衛星の軌道、駆動回路、電波の放射の解析を組み合わせ、この逐次的な書き換えがアンテナの性能に与える影響を評価しました。その結果、すべての列の書き換えは一瞬で完了し、その間に衛星から見た地上局の方向が動く角度は電波の広がり(ビーム幅)に比べてごくわずかです。そのため、書き換え中の性能低下はほぼ無視できることを示しました。
これにより、多数の素子を少ない配線で駆動しながら、衛星の動きに電波を追従させられる見通しが得られました。将来的には、小型衛星による高速な通信の実現につながり、地上の通信網が届きにくい地域や災害時の通信手段としての活用が期待されます。
このたびは、優秀ポスター発表者に選んでいただき、大変光栄に思います。日頃からご指導いただいている廣川先生、戸村先生、共同研究でお世話になっている機械系の坂本先生をはじめ、研究室の研究員、事務員、学生の皆様に深く感謝します。今回の受賞を励みに、反射素子や駆動回路の試作を進め、軌道上で実際に動くアンテナの実現に向けて研究に取り組んでいきたいと思います。
親が通信関係の仕事をしていた影響で、物心ついたころから電波に興味を持っていたことがきっかけです。大学に進学してからは、目に見えない電波が通信をはじめとする社会の基盤を支えていることを理論から学ぶ中で、電波についてより専門的に学びたいという意欲が湧きました。
研究について議論し、多角的な意見をもらうことで、自分の視点が広がっていく感覚を味わえるときに、研究が一番楽しいと感じます。先生方や研究室のメンバー、分野の異なる機械系の先生と議論すると、自分一人では気づけなかった問いや見方に出会い、考えが整理されたり、次に取り組むべき課題が見えてきたりします。今回のポスター発表でも、多くの方から質問やご意見をいただき、自分の研究を新しい角度から見直すきっかけになりました。