電気電子系 News
文部科学大臣表彰の「科学技術賞」は科学技術分野で顕著な功績をあげた者を対象としたもので、「開発部門」、「研究部門」、「科学技術振興部門」、「技術部門」、「理解増進部門」に分かれて表彰されています。
このたび松澤昭教授、岡田健一准教授が「科学技術賞(開発部門)」を下記業績により受賞しました。
次世代無線LANや第5世代携帯電話等の情報通信インフラ構築に必要な超高速無線通信を実現するために、ミリ波帯(30 GHz-300 GHz)を用いた無線技術が必要とされています。デジタル回路等で用いられる安価で大量生産が可能なCMOS集積回路では、ミリ波帯での位相雑音特性が悪いため多値変調による高速な無線通信ができないことが長年の課題でした。
我々は、注入同期現象をミリ波帯の信号発生に利用することにより、極めて良好な位相雑音特性を実現することに成功しました。位相雑音が改善できたことでミリ波帯においても多値変調が可能となり、CMOS集積回路により世界で初めてダイレクトコンバージョン型のミリ波帯無線機を実現できました。
本開発により、60 GHz帯ミリ波無線機においても、一度に6ビットの送受信が可能となり、世界最高速となる42 Gb/sの無線通信速度を達成できました。
この研究を開始した10年前、60 GHzを中心とするミリ波はその高い周波数により、超高速無線通信を期待されていましたが、位相(時間)の揺らぎが大きく、十分な通信速度を実現できていませんでした。また、安価で量産が可能なCMOS集積回路での実現も困難と思われておりました。その課題を一つ一つ克服し、CMOS集積回路を用いてミリ波本来の超高速無線通信を実現いたしました。この技術の開発の成功は9年間にわたる総務省の研究開発支援、研究開発に参加された企業や他の研究室との連携のたまものですが、企業でも困難な、先端集積回路の設計・評価を担った多くの学生の献身的な努力の結晶でもあります。関係された多くの方々に深く感謝申し上げるとともに、この技術が無線通信の発展に大きく貢献することを願っております。
高周波デバイス測定評価技術のような基盤的技術の研究から、ミリ波無線システムの設計・開発・評価までを10年間かけて行いました。当初CMOS集積回路での実現は困難であると言われていましたが、共にプロジェクトを推進した多数の企業や大学研究室の研究者からの多大な支援や助言により、世界最高速の60 GHz帯ミリ波無線機を実現することができました。本成果は多数の学生たちの協力なしでは成しえなかったものです。学生たちに感謝するとともに、本受賞を共に喜びたいと思います。