電気電子系 News
プラズマ理工学 ~診る、解る、使う
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、プラズマ分光学と原子分子、宇宙応用の研究を行う、赤塚研究室です。
電力・エネルギーグループ
原子核工学コース
研究室:大岡山キャンパス・北1-413号室
准教授 赤塚洋
研究分野 | プラズマ理工学、プラズマ分光学、希薄流体工学 |
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キーワード | 分光計測、原子分子過程、衝突輻射モデル、非平衡分布、希薄超音速電磁流体、宇宙工学、電気推進機、超高層大気 |
Webサイト | 赤塚研究室 |
分子気体放電プラズマは、電子工学や材料工学に応用されるとともに、地球環境や上層大気現象でも重要です。これらの発光分光計測から、電子温度・密度はもちろん、ラジカル温度やラジカル密度を求める方法を研究しています。分光学や量子力学を必要とするスペクトル解析やそれに基づく非平衡プラズマの各種温度の計測法開発、各種ラジカルの発光分光計測法の開発研究、励起状態生成消滅モデル計算による励起状態密度のプラズマ化学的な理論解析、電子エネルギー分布の非平衡性の起源の解明、等の研究に取り組んでいます。
我々の実験室で所有する希薄気体風洞で、超音速アークプラズマジェットを定常生成可能です。人工衛星用スラスタ(電気推進機)に応用の可能性があります。上手く応用するとマッハ数を上げる事が可能ですが、流体力学に電磁気的相互作用が加わり解析は大変複雑です。しかも希薄流のため、流体ではなく粒子モデルに基づくシミュレーションが必要です。実験と理論計算を組合せ、加速現象・空間電位変化の解明などのプラズマ物理学・プラズマ工学を研究します。
分子気体を含むプラズマは、分子の線スペクトルを多数放出しますが、一般的分光器では分解能が不足し、振動・回転励起分布の実測は困難でした。我々は上準位の振動・回転温度を仮定すれば、発光スペクトルを理論計算できることに着目し、種々の分子励起状態の振動・回転温度を測定可能としました。特にN2 2PSの回転温度はガス温度の近似値となることを見出し、これにより多数のプロセスプラズマの熱的構造を理解できるようになりました。また同一プラズマ中でも振動・回転温度が異なる励起種を見出し、生成消滅の素過程の違いが反映されることから、励起状態生成消滅の素過程の解明にも取り組んでいます。
分解能が無限の場合
実際のグラフ
理論は非常によく実験と一致。ベストフィットにより振動・回転温度が求まる。
従来の拙い1PS計算例 実験に合わない
破線の遷移を考慮する場合
プラズマプロセスでは、化学反応性を有するラジカルの密度のモニタが重要となります。アクチノメトリー法を用いると、O原子やN原子など、自らは発光しない反応性ラジカル密度が計測できます。ただし様々な仮定を適用しており、励起状態生成消滅の理論モデリングによる数密度の放電条件への変化による考察を併せて行うことが必須で、窒素・酸素混合放電プラズマ中の励起種生成につき、化学カイネティックモデルを生成・検討しています。
N2 1PSに埋もれたN原子発光線抽出 N2 1PS発光をフィッティングし減算
衛星電気推進機、磁場核融合炉周辺領域、宇宙地球科学など、基礎現象として重要な希薄超音速プラズマ流につき、実験研究を行っています。希薄気体風洞を利用してアークジェットを定常生成し、電磁場の影響を調べています。
希薄弱電離超音速プラズマ流の数値シミュレーション研究も行っています。中性粒子とイオンは粒子法、電子は流体法によるハイブリッド法を適用します。空間電位形成に、中性粒子とイオンの速度差(イオンスリップ)が重要なことなど、興味深い結果が明らかになってきています。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
准教授 赤塚洋
E-mail : hakatsuk@lane.iir.titech.ac.jp
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。