電気電子系 News

赤塚研究室 ―研究室紹介 #36―

プラズマ理工学 ~診る、解る、使う

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2016.10.21

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、プラズマ分光学と原子分子、宇宙応用の研究を行う、赤塚研究室です。

准教授 赤塚洋

電力・エネルギーグループ
原子核工学コース
研究室:大岡山キャンパス・北1-413号室
准教授 赤塚洋別窓

研究分野 プラズマ理工学、プラズマ分光学、希薄流体工学
キーワード 分光計測、原子分子過程、衝突輻射モデル、非平衡分布、希薄超音速電磁流体、宇宙工学、電気推進機、超高層大気
Webサイト 赤塚研究室別窓

主な研究テーマ

1. プラズマ分光計測法の開発、その基礎となる原子分子過程の解明

分子気体放電プラズマは、電子工学や材料工学に応用されるとともに、地球環境や上層大気現象でも重要です。これらの発光分光計測から、電子温度・密度はもちろん、ラジカル温度やラジカル密度を求める方法を研究しています。分光学や量子力学を必要とするスペクトル解析やそれに基づく非平衡プラズマの各種温度の計測法開発、各種ラジカルの発光分光計測法の開発研究、励起状態生成消滅モデル計算による励起状態密度のプラズマ化学的な理論解析、電子エネルギー分布の非平衡性の起源の解明、等の研究に取り組んでいます。

2. 超音速プラズマ流と粒子シミュレーション

我々の実験室で所有する希薄気体風洞で、超音速アークプラズマジェットを定常生成可能です。人工衛星用スラスタ(電気推進機)に応用の可能性があります。上手く応用するとマッハ数を上げる事が可能ですが、流体力学に電磁気的相互作用が加わり解析は大変複雑です。しかも希薄流のため、流体ではなく粒子モデルに基づくシミュレーションが必要です。実験と理論計算を組合せ、加速現象・空間電位変化の解明などのプラズマ物理学・プラズマ工学を研究します。

最近の研究成果

放電プラズマ中の分子スペクトルの理論計算と振動・回転温度の測定、およびその結果を利用したプラズマの熱構造解明と非平衡性の起源に関する研究

分子気体を含むプラズマは、分子の線スペクトルを多数放出しますが、一般的分光器では分解能が不足し、振動・回転励起分布の実測は困難でした。我々は上準位の振動・回転温度を仮定すれば、発光スペクトルを理論計算できることに着目し、種々の分子励起状態の振動・回転温度を測定可能としました。特にN2 2PSの回転温度はガス温度の近似値となることを見出し、これにより多数のプロセスプラズマの熱的構造を理解できるようになりました。また同一プラズマ中でも振動・回転温度が異なる励起種を見出し、生成消滅の素過程の違いが反映されることから、励起状態生成消滅の素過程の解明にも取り組んでいます。

N2 2PSの場合
振動回転分布を温度Tv, TrのBoltzmann分布と仮定すれば、発光線強度が計算可能

分解能が無限の場合 分解能が無限の場合

実際のグラフ 理論は非常によく実験と一致。ベストフィットにより振動・回転温度が求まる。 実際のグラフ
理論は非常によく実験と一致。ベストフィットにより振動・回転温度が求まる。

N2 1PSの場合
選択規則を再考し、従来無視された破線の遷移も含めた対称性も併せ検討

窒素分子第1正帯の遷移の分光学的選択規則~実線が従来使用されていたもの、破線が我々が追加したもの

窒素分子第1正帯の遷移の分光学的選択規則~
実線が従来使用されていたもの、破線が我々が追加したもの

窒素分子第1正帯の遷移の対称性に関する選択規則

窒素分子第1正帯の遷移の対称性に関する選択規則

従来の拙い1PS計算例 実験に合わない 従来の拙い1PS計算例 実験に合わない

破線の遷移を考慮する場合 破線の遷移を考慮する場合

アクチノメトリー法によるプラズマ中の非発光ラジカル密度の測定、および励起種密度に関するモデリング

プラズマプロセスでは、化学反応性を有するラジカルの密度のモニタが重要となります。アクチノメトリー法を用いると、O原子やN原子など、自らは発光しない反応性ラジカル密度が計測できます。ただし様々な仮定を適用しており、励起状態生成消滅の理論モデリングによる数密度の放電条件への変化による考察を併せて行うことが必須で、窒素・酸素混合放電プラズマ中の励起種生成につき、化学カイネティックモデルを生成・検討しています。

N2 1PSに埋もれたN原子発光線抽出 N2 1PS発光をフィッティングし減算

N2 1PSに埋もれたN原子発光線抽出 N2 1PS発光をフィッティングし減算

N2 1PSに埋もれたN原子発光線抽出 N2 1PS発光をフィッティングし減算

N2 - O2 混合プラズマ中の原子種の主要な生成消滅過程

N2 - O2 混合プラズマ中の原子種の主要な生成消滅過程

人工衛星電気推進機の基礎~希薄弱電離超音速プラズマへの電磁場の影響(1)実験研究

衛星電気推進機、磁場核融合炉周辺領域、宇宙地球科学など、基礎現象として重要な希薄超音速プラズマ流につき、実験研究を行っています。希薄気体風洞を利用してアークジェットを定常生成し、電磁場の影響を調べています。

希薄気体風洞(図)磁気ノズルから噴出される超音速膨張アークジェット(写真)

希薄気体風洞(図)磁気ノズルから噴出される超音速膨張アークジェット(写真)

磁気ノズル近傍で測定された磁場強度とイオンマッハ数

磁気ノズル近傍で測定された磁場強度とイオンマッハ数

人工衛星電気推進機の基礎〜希薄弱電離超音速プラズマへの電磁場の影響(2)数値計算研究

希薄弱電離超音速プラズマ流の数値シミュレーション研究も行っています。中性粒子とイオンは粒子法、電子は流体法によるハイブリッド法を適用します。空間電位形成に、中性粒子とイオンの速度差(イオンスリップ)が重要なことなど、興味深い結果が明らかになってきています。

計算領域分割、サンプル粒子の運動・衝突(左)速度分布を統計によって再現(右)

計算領域分割、サンプル粒子の運動・衝突(左)速度分布を統計によって再現(右)

人工衛星電気推進機の基礎〜希薄弱電離超音速プラズマへの電磁場の影響 (2) 数値計算研究(図)

電位分布

イオン数密度

中性分子数密度

イオン流速

中性分子流速

イオン温度

中性分子温度

教員からのメッセージ

赤塚先生より
  • 赤塚研究室では、学生の方々に、プラズマ理工学の幅広い分野にわたる基礎研究を通じて、電気・電子工学や原子核工学に限られない、幅広い理工学分野で活躍できる能力と、それを発展させる能力を持って欲しいと考えています
  • 平成28年度は、博士課程2人、修士課程8人、卒研生2人が在籍しています。
  • 就職先:九州電力、三菱電機、東芝、商船三井、日立製作所、東洋エンジニアリング、三菱重工、トヨタ、JR東海など

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

准教授 赤塚洋
E-mail : hakatsuk@lane.iir.titech.ac.jp

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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