電気電子系 News
未来を拓くMeVイオンビーム技術
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、イオンビーム技術を用いて、エネルギー問題・環境問題・医療分野等に関する研究を行う、小栗研究室です。
電力・エネルギーグループ
原子核工学コース
研究室:大岡山キャンパス・北2-626号室
教授 小栗慶之
研究分野 | 核融合学、原子力学、プラズマ科学、量子ビーム科学、医用システム |
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キーワード | 慣性核融合、放射線工学・ビーム科学、高エネルギー密度科学、量子ビーム医療応用、低侵襲治療システム |
Webサイト | 小栗研究室 |
大強度の高エネルギー重イオンビームを用いた核融合や高エネルギー密度科学の研究に関連して、高温高密度プラズマと重イオンビームの相互作用、主にプラズマへのエネルギー付与過程に注目して調べます。
陽子ビームを金属標的に照射して発生させた単色X線を、患者に優しい透視撮影や深部ガン治療等に応用するための基礎研究を行います。
イオンビームを試料に照射して精密な元素分析を行うための技術開発、及び環境・材料科学等に関連する試料を用いたその実証実験を行います。
重イオンビームを用いた慣性核融合(図1)においては、燃料標的の温度上昇に伴ってその電子状態が変化(励起・解離・電離)するため、入射ビームによる標的の加熱効率(標的の[厚さ×密度]当たりのエネルギー付与≡阻止断面積)が変化します。この変化に関するデータがないと、燃料標的の詳細設計ができません。研究室の静電重イオン加速器とプラズマ発生装置(図2)を用いて、この基礎データを取る実験を進めています。
図3は電磁駆動衝撃波管で発生した解離水素(水素原子)標的中の12Cイオンの阻止断面積を測定した例で、標的が常温の場合に比べ、阻止断面積が増加する傾向が見られました。
非常に大きな反応度を伴う高速炉の過酷事故や核テロによる被害の予測には、温度が数万度を超える超高温状態の核物質の状態方程式データが必要です。大強度パルス重イオンビームを核物質試料に照射し、その流体的挙動を測定することで、このデータを取得する方法を数値シミュレーションにより提案しました。
図4は23Naイオンビームで加熱したウラン標的の流体的挙動の計算結果で、標的を約7万度まで一様に加熱できることが分ります。
小型加速器からのMeV級陽子ビームを金属標的に照射すると、単色のX線を効率良く発生できます。ガン細胞に予め金属ナノ粒子を含む薬剤を摂り込ませておき、その金属に選択的に吸収されるエネルギーの単色X線を照射すると、粒子から飛程の短い多量の二次電子が出ます。これらを使って図6のようにガン細胞のみを内部から照射する技術の基礎研究を行います。
照射は図5の注射針型線源を患部に刺入して行います。ファントム実験と計算により、図7の図のようにナノ粒子の周囲のみで高線量が得られ、正常細胞への影響(副作用)が少ない治療が原理的に可能なことが分りました。
環境問題や材料科学に関連した試料にイオンビームを照射し、発生するX線・荷電粒子を測定して高感度・精密元素分析を行う手法を開発します。図8は実験装置、図9は湖沼堆積物中のリン、硫黄の電子状態を同定した例です。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 小栗慶之
E-mail : yoguri@nr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3071
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。