電気電子系 News
大面積イメージングデバイスを目指した有機半導体材料・有機デバイスの研究
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、液晶性を活用して高品質な有機半導体材料を創製する、飯野研究室です。
物性・材料グループ
電気電子コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J1棟207号室
准教授 飯野裕明
研究分野 | 有機エレクトロニクス、イメージングデバイス |
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キーワード | 液晶性有機半導体、有機薄膜トランジスタ、有機EL素子、有機光電変換素子 |
Webサイト | 飯野研究室 |
情報の入出力に用いられるイメージングデバイスの実現を目指して、大面積の半導体薄膜を簡易な製膜プロセスで作製可能な有機半導体材料の開発とデバイス応用の研究を行なっています。材料としては新しい有機半導体である『液晶性有機半導体』に注目しています。液晶性有機半導体の材料開発、物性・電気特性評価からプロセス開発、デバイス応用までを検討し、印刷プロセスを利用して、安価なプラスチック基板上にフレキシブルで軽量なディスプレイや発光素子、光電変換素子等のイメージングデバイスの開発に取り組みます。
本研究室では材料の開発から基礎物性の評価、デバイス応用までを研究グループ内で一貫して進めています。
液晶性有機半導体とは、液晶性を示す有機半導体のことです。液晶性とは液体のような流動性と結晶のように分子が自発的に並ぶ特徴を有します(図1)。液晶ディスプレイにはこの性質から導かれる光学的な特徴である複屈折が利用されています。一方、半導体の性質を持つ有機物質に液晶性を持たせた材料では分子が自発的に並ぶため、配向性と秩序性をもった高品質の有機半導体薄膜を容易に作製することができることになります。また、液晶性有機半導体は結晶薄膜としても利用可能です。この研究では有機トランジスタ、有機光センサ、有機EL素子、有機薄膜太陽電池等への応用を目指した新規材料の開発を行ないます。
開発した液晶性有機半導体をデバイスに応用するためには図2のように材料の電荷輸送特性や電極との界面特性を電気的な測定を通じて明らかにする必要があります。また、材料開発を進める上でも合成した物質の基礎特性を調べることは、材料設計の指針を得る上でも重要となります。この研究では、移動度の評価や界面特性の評価ばかりでなく、その物理的理解を深めることを目指します。
材料をデバイスへ応用するためには、材料の薄膜形成やパターニングが必要となります。液晶性有機半導体は容易に有機溶媒に溶かして溶液にすることができるため、種々の塗布技術やインクジェット法を含む種々の印刷法を適用することが可能となります。さらに、液晶物質は適度な流動性と分子配向した均一な液晶薄膜を結晶薄膜の前駆状態として利用することも可能で、分子レベルで均一な結晶性の高い多結晶薄膜を溶液プロセスであるスピンコート法により作製する技術の開発に成功しています(図3)1)。今後は、インクジェット法や印刷法を利用したプラスチック基板上への薄膜作製技術の確立を目指します。
液晶性有機半導体は、従来の非液晶性の有機半導体材料と同様、有機トランジスタ、有機EL素子、有機光センサ、太陽電池へなどの種々のデバイスへ応用することが可能です。最も、手短な応用は有機トランジスタです。液晶薄膜を前駆状態に用いた結晶薄膜は均一性、表面平坦性に優れ、素子ごとのばらつきの少ないトランジスタを容易に作製することができます。図4は、有機トランジスタ用に当研究グループで開発した液晶性有機半導体(Ph-BTBT-10)を用いて作製した、FET(電界効果トランジスタ)の伝達特性の一例です。多結晶薄膜にもかかわらず、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造で移動度10cm2/Vsを超すFETの作製に成功しています。現在、有機ダイオード有機EL素子、有機光センサ、有機薄膜太陽電池等への応用にも取り組んでいます。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
准教授 飯野裕明
E-mail : iino@isl.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5181
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。