電気電子系 News
表面プラズモンとメタマテリアルを つかったナノフォトニクス
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、プラズモニクスとメタマテリアルを使ったナノフォトニクスの研究をする、梶川研究室です。
材料・物性グループ
ライフエンジニアリングコース・電気電子コース
研究室:すずかけ台キャンパス・G2-1005
教授 梶川浩太郎
研究分野 | ナノフォトニクス、プラズモニクス、非線形光学 |
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キーワード | 表面プラズモン、メタマテリアル、ランダムレーザー、バイオセンシング、物体の透明化・不可視化、黒体 |
Webサイト | 梶川研究室 |
光が持つエネルギーを貯めたり、加工したり、好きなように伝搬させたり放出させたりする技術が注目を集めています。これらは、表面プラズモンという金属中の電子波を使えば可能となります。私たちは表面プラズモンを巧みに操った光学技術、プラズニクスやメタマテリアル技術の開発を行っています。
具体的なテーマは以下の通りです。
金属中の自由電子は電気を流すことでよく知られています。でも、電気を流す自由電子は通常光とは相性がよくないので、光は金属中に入らずに反射されています。鏡がそうですね。
金属でも、表面に特殊な構造を施したり、ナノメートルサイズの小さい金属の粒では、光と相性がよくなります。これを用いた光の技術をプラズモニクスと呼びます。プラズモニクスでは、半導体や誘電体で実現できない様々な光学的な性質を実現することができます。
たとえば、ナノメートルの微小領域に光を閉じ込め伝搬させたり、高感度なDNAや蛋白質の検出を行ったりできます。
また、微細な人工構造により、自然界の物質が持つことができない光学的な性質を持たせた物質があります。これをメタマテリアルと呼びます。メタとは「超」という意味なので、「超物質」ということです。
メタマテリアルでは負の屈折率を持つ物質、光が進む速度がとても遅い物質、包むと中の物を見えなくしてしまう薄い構造(クローキングと呼びます)、逆に非常に薄いのに光をほとんど吸収する黒体構造等、がメタマテリアルによって実現できます。また、右からへは光を伝搬させられるけど左から右へは伝搬させられない不思議な物質などもあります。
光を通さない、普通の金属の細線や薄膜をメタマテリアルで塗布してあげる透けて向こうが見えるようになる…私たちの研究室では、メタマテリアルを使って透明ではないモノを透明にする「クローキング」の研究をしています。
光のクローキングの研究は世界中の研究者が一生懸命研究していますが、ほとんどは理論の研究です。私たちの研究室では、理論だけでなく実験でクローキングを実証する研究を行っています。
また、光を吸収する構造のそばに、別の構造を近づけるだけで、全体が透明になる「電磁誘起透明化」現象の研究を行っています。これを使って、光集積デバイスや高感度なバイオ素子の研究を行っています。
昨年、私たちの研究室では自然界の物質(葉や羽など)を使えば、簡単に極薄の黒体を作れることを発表しました。金でできている「超薄膜」を蓮の葉の表面にコートすれば、光をほとんど吸収して黒体となることがわかったのです。
黒体というと単に黒いものというイメージがありますが、実は黒体は以下の大切な性質を持ちます。
レーザーの教科書には、レーザーには共振器が必要と書いてあります。共振器とは向かいあわせた1対の鏡やリングのような構造のことを指します。でも、共振器が無くても、光が散乱されながらゆっくり進むランダム媒質では、レーザー発振が起こります。これをランダムレーザーといいます。私たちの研究室では、ランダムな媒質やランダムではない媒質でおこるランダムレーザーの研究をしています。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 梶川浩太郎
E-mail : kajikawa.k.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5596
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。