電気電子系 News
様々な半導体材料の太陽電池応用
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、再生可能エネルギー「太陽電池」を研究する、山田・宮島研究室です。
研究分野 | 半導体物性、太陽電池 |
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キーワード | 薄膜太陽電池、結晶Si太陽電池、酸化物材料、有機無機ハイブリッド材料 |
Webサイト | 山田・宮島研究室 |
クリーンなエネルギー源として太陽光発電に寄せられる期待が高まっています。日本では、2013年度末でおよそ1430万kW程度の太陽光発電システムが導入され、2014年には第3四半期までで約600万kW分のモジュールが国内向けに出荷されたと報告されています。しかし、いっそうの加速度的普及を目指すには、さらなる低コスト化、高効率化が必要となります。本研究室では、第1世代のシリコン太陽電池に加えて、第2世代の高効率化合物薄膜太陽電池、さらには有機無機ハイブリッド材料を用いた太陽電池の開発を進めています。また、デバイス研究と共に材料物性に関する研究も進めています。
Cu(In,Ga)Se2(CIGS)はカルコパイライト構造を有する半導体材料です。この材料のバンドギャップはIn/Ga比を変化させることで1.0 eVから1.4 eVの範囲で制御可能です。現在は太陽光と相性の良い1.4 eV程度のバンドギャップを有するCIGS太陽電池の高効率化に取り組んでいます。これまでに新たなデバイス構造を提案し、世界最高レベルの変換効率を実現しています。
また、変換効率30%を超えるような超高効率太陽電池を目指して、多接合型太陽電池の開発にも取り組んでいます。この材料系を用いる場合、バンドギャップ1.0 eV程度のCIGSとバンドギャップ1.8 eV程度のAg(In,Ga)Se2(AIGS)の組み合わせが、最適なバンドギャップの組み合わせに極めて近いことがわかっています。まだ未知の部分が多いAIGS膜の電気的特性を徐々に明らかにしつつ、デバイスにおいてもこの材料系ではトップクラスの10%を超える値を実現しています。
CuZnSn(S,Se)4(CZTSSe)はCIGSと類似の構造を有する化合物です。レアメタルであるInを使用しないという利点を有しています。本研究室では低コスト化を見据え、非真空プロセスでCZTSSe膜の作製を行い、太陽特性の向上を目指しています。効率10%超を目指して研究を進めています。また、CZTSSeへの表面処理は特性に大きな影響を与えるため、その最適化およびその特性向上メカニズムの解明を目指しています。
Siは無毒かつ地球上に豊富にある材料であるため、太陽電池材料の主流となっています。本研究室では主にヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池の高効率化を行い、20%を超える変換効率を実現しています。さらに、新しいヘテロ接合材料の開発に注力しており、良質なヘテロ接合を用いた結晶シリコンの評価にも取り組んでいます。また、多接合化による高効率化をめざし、有機無機ハイブリッド型太陽電池との積層構造についても検討を行っています。
新しい太陽電池材料の開発にも取り組んでいます。近年、注目を集めている有機無機ハイブリッドペロブスカイト材料や銅酸化物(Cu2O)を用いた太陽電池の開発を進めています。すでに、良質な特性を有するペロブスカイト膜およびCu2O膜の形成に成功しており、今後はデバイス開発及び、物性の詳細な研究を進める予定です。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
教授 山田明
E-mail : yamada.a.ac@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2698
准教授 宮島晋介
E-mail : miyajima.s.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2807
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。