電気電子系 News

山田・宮島研究室 ―研究室紹介 #31―

様々な半導体材料の太陽電池応用

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2016.10.04

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、再生可能エネルギー「太陽電池」を研究する、山田・宮島研究室です。

教授 山田明 准教授 宮島晋介

材料・物性グループ
エネルギーコース・電気電子コース
研究室:大岡山キャンパス・EEI-409 / EEI-408
教授 山田明別窓 准教授 宮島晋介別窓

研究分野 半導体物性、太陽電池
キーワード 薄膜太陽電池、結晶Si太陽電池、酸化物材料、有機無機ハイブリッド材料
Webサイト 山田・宮島研究室別窓

主な研究テーマ

クリーンなエネルギー源として太陽光発電に寄せられる期待が高まっています。日本では、2013年度末でおよそ1430万kW程度の太陽光発電システムが導入され、2014年には第3四半期までで約600万kW分のモジュールが国内向けに出荷されたと報告されています。しかし、いっそうの加速度的普及を目指すには、さらなる低コスト化、高効率化が必要となります。本研究室では、第1世代のシリコン太陽電池に加えて、第2世代の高効率化合物薄膜太陽電池、さらには有機無機ハイブリッド材料を用いた太陽電池の開発を進めています。また、デバイス研究と共に材料物性に関する研究も進めています。

  1. 1.高効率カルコパイライト化合物薄膜太陽電池(CIGS、AIGS)
  2. 2.レアメタルフリー化合物薄膜太陽電池(CZTSSe)
  3. 3.シリコン系太陽電池(ヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池)
  4. 4.新材料太陽電池(有機無機ハイブリッドペロブスカイト、銅酸化物)

最近の研究成果

高効率カルコパイライト化合物薄膜太陽電池(CIGS、AIGS)

Cu(In,Ga)Se2(CIGS)はカルコパイライト構造を有する半導体材料です。この材料のバンドギャップはIn/Ga比を変化させることで1.0 eVから1.4 eVの範囲で制御可能です。現在は太陽光と相性の良い1.4 eV程度のバンドギャップを有するCIGS太陽電池の高効率化に取り組んでいます。これまでに新たなデバイス構造を提案し、世界最高レベルの変換効率を実現しています。

また、変換効率30%を超えるような超高効率太陽電池を目指して、多接合型太陽電池の開発にも取り組んでいます。この材料系を用いる場合、バンドギャップ1.0 eV程度のCIGSとバンドギャップ1.8 eV程度のAg(In,Ga)Se2(AIGS)の組み合わせが、最適なバンドギャップの組み合わせに極めて近いことがわかっています。まだ未知の部分が多いAIGS膜の電気的特性を徐々に明らかにしつつ、デバイスにおいてもこの材料系ではトップクラスの10%を超える値を実現しています。

CIGS太陽電池

CIGS太陽電池

CIGS製膜用MBE装置

CIGS製膜用MBE装置

CIGS薄膜の断面電子顕微鏡像とEDSによる組成分布解析

CIGS薄膜の断面電子顕微鏡像とEDSによる組成分布解析

高効率CIGS太陽電池の集光特性

高効率CIGS太陽電池の集光特性

レアメタルフリー化合物薄膜太陽電池(CZTSSe)

CZTSSe系膜作製用超音波スプレー塗布装置

CZTSSe系膜作製用超音波スプレー塗布装置

CuZnSn(S,Se)4(CZTSSe)はCIGSと類似の構造を有する化合物です。レアメタルであるInを使用しないという利点を有しています。本研究室では低コスト化を見据え、非真空プロセスでCZTSSe膜の作製を行い、太陽特性の向上を目指しています。効率10%超を目指して研究を進めています。また、CZTSSeへの表面処理は特性に大きな影響を与えるため、その最適化およびその特性向上メカニズムの解明を目指しています。

CZTSSe系太陽電池の作製プロセス(CZTS系膜は非真空製膜)

CZTSSe系太陽電池の作製プロセス(CZTS系膜は非真空製膜)

ヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池

結晶Siヘテロ結合太陽電池

結晶Siヘテロ結合太陽電池

Siは無毒かつ地球上に豊富にある材料であるため、太陽電池材料の主流となっています。本研究室では主にヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池の高効率化を行い、20%を超える変換効率を実現しています。さらに、新しいヘテロ接合材料の開発に注力しており、良質なヘテロ接合を用いた結晶シリコンの評価にも取り組んでいます。また、多接合化による高効率化をめざし、有機無機ハイブリッド型太陽電池との積層構造についても検討を行っています。

新材料太陽電池(有機無機ハイブリッドペロブスカイト、銅酸化物)

有機無機ハイブリッドペロブスカイト材料

有機無機ハイブリッドペロブスカイト材料

新しい太陽電池材料の開発にも取り組んでいます。近年、注目を集めている有機無機ハイブリッドペロブスカイト材料や銅酸化物(Cu2O)を用いた太陽電池の開発を進めています。すでに、良質な特性を有するペロブスカイト膜およびCu2O膜の形成に成功しており、今後はデバイス開発及び、物性の詳細な研究を進める予定です。

ペロブスカイト膜作製装置

ペロブスカイト膜作製装置

電気化学製膜したCu2O膜の表面構造

電気化学製膜したCu2O膜の表面構造

教員からのメッセージ

山田先生、宮島先生より
山田・宮島研究室は、国内で実際に太陽電池を試作できる数少ない研究室の一つです。自分で考案した太陽電池を、自分の装置で試作、評価できます。太陽電池の製作、評価に必要な設備はすべて整っております。さらに、海外研究機関との連携を活発に行っています。ドイツ、オランダなどの欧州諸国のほか、タイ、韓国、中国、インド、インドネシア、マレーシアなどのアジア諸国とも連携を密にしています。

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 山田明
E-mail : yamada.a.ac@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2698

准教授 宮島晋介
E-mail : miyajima.s.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2807

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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