電気電子系 News
ヘテロ・ナノ結晶の創製と量子ナノ構造光・電子機能デバイス
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、ナノ構造光・電子機能デバイスを創製する渡辺研究室です。
デバイスグループ
電気電子コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J2-1102
准教授 渡辺正裕
研究分野 | 光・電子機能デバイス、量子効果デバイス、ヘテロ結晶成長、ナノプロセス工学、ナノ構造の光・電子機能 |
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キーワード | ナノ構造、ヘテロ接合、量子効果、集積回路、二次元薄膜、機能設計学、金属/絶縁体ヘテロ接合、シリコン光・電子集積 |
Webサイト | 渡辺研究室 |
革新的機能創出を志向する、新しい集積デバイスのコンセプト提案と設計論の構築、その実験的検証を主軸として研究教育活動を進めています。金属・絶縁体・半導体など、性質が異なる複数の材料を接合したナノメートル厚の二次元積層薄膜、あるいは微結晶を形成する技術を創り出すとともに、その新しく創り出された人工結晶(≡ヘテロ・ナノ結晶)の中で生じる光及び電子の相互作用を支配する量子物性を利用して、高度な情報処理やエネルギー変換の極限機能を引き出す固体デバイス設計論の構築及び原理実証を行います。これらの研究活動を通じて、未来社会を支えるエレクトロニクス・システム構築へ向けたデバイス設計学理の構築と基盤技術の開拓に資するとともに、多様な人々と協力して問題解決を主導するリーダーの育成に貢献します。
本研究で提案する人工結晶を用いた共鳴トンネル素子は、異種材料の組み合わせと、ナノサイズの構造に特有の強い量子閉じ込め効果によって、室温においても顕著な電流スイッチング特性を示すことが本研究室よりはじめて見いだされました。この共鳴トンネル構造に、量子井戸への電荷蓄積/放出現象を適切に組み合わせて設計すると、電源を切っても記憶が消えない不揮発型メモリ素子が実現できます。この素子は、極限的な低消費電力性と、微細化・集積化に適した原理的優位性を併せ持っており、将来の極限集積メモリや高速三端子素子実現への基本要素になると考えています。本研究テーマでは、集積回路に適合する異種材料で構成された共鳴トンネル抵抗変化スイッチング素子を提案・作製し、特性の理論解析及び実験的な特性解明等を通して、未来の集積デバイス実現への基礎的課題を明らかにします。
量子井戸中に形成されたエネルギー準位間の光遷移(≡サブバンド間遷移)の原理を利用すると、「光らない」半導体の代表格であるシリコンにおいても発光遷移が期待でき、しかもバンド内の電子・ホールの応答速度は高速であるため、シリコンLSIと集積可能な高速応答レーザを実現できる可能性があります。本研究では、シリコンと積層結晶形成可能な異種材料群を組み合わせた量子井戸の構造設計により、可視~赤外をはじめとする広範な波長での発光遷移を設計可能な量子井戸構造を提案し、そのレーザ発振の可能性に関する理論予測や、結晶成長・素子形成技術に関する研究を行っています。近年、電流注入と、光導波路を両立できる素子構造を形成する技術の開発に成功したことから、シリコン量子薄膜の電流注入発光特性の解明へと研究の段階は着実に進展しています。
量子ドット構造は、量子閉じ込めによる禁制帯幅制御や、フォノン散乱制御など、太陽電池の変換効率を根本的に増大させる可能性のある基本原理を内蔵しています。
このミクロな視点に基づく基本原理を、実用的な太陽電池の変換効率向上につなげるためには、材料や結晶構造、ナノ構造の設計などを個別に検討することに加え、変換効率を最大化するためのデバイス構造や形成プロセスを見出す研究が必要とされています。本研究では、単結晶で構成可能なシリコン量子ドット超格子を用いて、変換効率増大に資すると期待される現象の原理実証、および、高効率なセル構造の提案や素子構造形成技術等に関する研究を行います。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
准教授 渡辺正裕
E-mail : watanabe@ee.e.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5454
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。