電気電子系 News

筒井研究室 ―研究室紹介 #26―

新材料・新機能素子技術による電子デバイス: ナノデバイスからパワーデバイスまで

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2016.09.13

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、ナノデバイスからパワーデバイスまで、新材料・新機能素子技術による電子デバイスを研究する、筒井研究室です。

教授 筒井一生

デバイスグループ
電気電子コース
研究室:すずかけ台キャンパス・J2-1103
教授 筒井一生別窓 助教 星井拓也別窓

研究分野 電子デバイス、電子材料・プロセス、結晶成長
キーワード パワーデバイス(Si、AlGaN/GaN)、立体チャネルトランジスタ、半導体中不純物の原子レベル3D解析
Webサイト 筒井研究室別窓

主な研究分野とめざすもの

シリコン大規模集積回路(LSI)からパワーデバイスまで、半導体電子デバイスは大きな進歩を遂げ、それは将来にわたり我々の社会を支える高度な基盤技術です。本研究室では、新しい材料技術、デバイス技術、プロセス技術によるブレークスルーの提案、ひいては技術のパラダイムシフトの誘導をめざして研究を進めています。研究テーマとしては、ロングレンジの独自の研究から、近い将来の明確なターゲットを産学連携で推進するものまで、同時にとり組んでいます。また、これらの研究テーマの多くは、角嶋研究室、若林研究室等との連携で進めています。

最近の研究成果

半導体パワーデバイスの高性能化技術

(1) AlGaN/GaN系パワーデバイス
高性能パワーデバイス用半導体として窒化ガリウム系材料があり、AlGaN/GaNのヘテロ界面に発生する二次元電子ガスをチャネルに使う高電子移動度トランジスタ(HEMT)は高速パワーデバイスとして有望です。パワーデバイスでは、オン状態での素子抵抗を徹底的に下げて低損失化を図ることと同時にオフ状態では高い耐圧と低い漏れ電流を維持することが必要です。
オン状態の素子抵抗低減には、ソース、ドレインのオーミックコンタクト電極の接触抵抗を下げる技術の開発が重要であり、コンタクト形成のメカニズムに立ち戻る観点からの研究を進めています。例えば、AlGaN層への凹凸構造導入などの新技術も提案し、有用性を明らかにしています。
さらに、将来技術として、トランジスタを従来の平面構造から立体構造にして、AlGaN/GaN系パワーデバイスの特性を飛躍的に高めることを目指した研究も行っています。

HEMT構造とコンタクト技術

HEMT構造とコンタクト技術

GaNによる立体型トランジスタ:FinFET

GaNによる立体型トランジスタ:FinFET

トレンチIGBT

トレンチIGBT

(2) シリコンパワーデバイス(IGBT)
現在最も広く使われているパワーデバイスの一つは、半導体シリコンの絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)です。そのため、IGBTの低損失化の追求は、インバータ等の電力変換システムの高効率化を通して世界の省エネルギーに大きく貢献できます。当研究室では、IGBTのゲート部分を微細化することによって格段に低損失な高性能IGBTを目指す研究にシミュレーションと実験の両面から取り組んでいます。

原子ホログラフィー技術による半導体中の不純物の3次元構造の解明

半導体中不純物の結晶中での配置構造

半導体中不純物の結晶中での配置構造

半導体に不純物をドーピングしてp形、n形の導電性を制御するのは半導体デバイスの重要な基礎技術ですが、デバイスの高性能化を果たすためには、この不純物ドープにも極限的な特性が求められます。デバイスの低損失化のために非常に高濃度の不純物ドープを行うと、不純物原子が半導体結晶の格子構造にきちんと取り込まれず原子クラスター等を作り電気的特性が劣化します。しかしこのメカニズムは充分に解明されていません。この課題解決を目指し、大型放射光施設(Spring-8)での光電子ホログラフィーなどの新しい手法を使い、不純物の3次元的な原子配列構造を解明する研究を行っています。

シリコンナノ構造を用いた太陽電池

シリコンナノワイヤー太陽電池

シリコンナノワイヤー太陽電池

シリコンを直系ナノメートルのオーダーまで細くしたシリコンナノワイヤーは、電子から光まで多くのデバイス技術として関心が高まっています。当研究室では太陽電池への応用を目指した研究を行っています。最も広く普及しているシリコンを用いながら従来の層構造から高密度のナノワイヤー構造にすると発電効率の顕著な向上が期待されます。しかし、ナノワイヤーの表面制御技術や、ナノ構造への不純物ドーピングなど、実用化に向けて課題も多くあります。微細トランジスタでの研究蓄積も基礎としてその克服に向けて研究を進めています。

教員からのメッセージ

筒井先生より
新しい物を作り出す研究は思い通りには行かないことの方がずっと多いものです。常に自分の頭でよく考え、ねばり強くとり組んでみてください。あるときそこから小さな、しかしわくわくさせるような輝きが見えるときが来ます。研究はそういう非常に個人的体験である一方で、他の研究者との関わりのなかで自分の活動と存在を形にしてゆく社会的な面があります。国内、海外の学会で自分の研究成果を発表する機会も多くあります。これも自分の世界がひろがるエキサイティングな体験になるはずです。そしてそれらは、皆さんが将来社会で活躍できる大きな糧になります。

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 筒井一生
E-mail : ktsutsui@ep.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5462

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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