電気電子系 News
次世代光エレクトロニクスに向けた半導体光デバイス研究
電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、高性能光デバイスによる次世代システムの構築を目指す、宮本智之研究室です。
波動・光および通信グループ
電気電子コース
研究室:すずかけ台キャンパス・R2-817
准教授 宮本智之
研究分野 | 光エレクトロニクス、光無線給電、半導体光デバイス |
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キーワード | 半導体、面発光レーザ、量子効果、光無線給電 |
Webサイト | 宮本智之研究室 |
本研究室では、面発光レーザを中心とした半導体光デバイスの高性能・高機能化と、その実現に必要な量子効果構造やプロセス技術の開拓、および、光デバイスの新応用創出など、次世代のフォトニック(光)システムに関する研究を進めています。
光エレクトロニクス(フォトニクス)における光デバイスの中でも、光源はシステムのカギである。本研究室では、極低消費電力で2次元アレイレーザが可能な面発光レーザ(東工大、伊賀健一名誉教授の発明)の高性能化・高機能化を目指している。
面発光レーザ(VCSEL、ビクセル)は図1の構造の波長サイズの微小共振器であり、光を基板に垂直出射することを特徴とする。これまでに、レーザマウスや光LANの主要光源、また高精度レーザプリンタなど、広く実用されている。今後、LSI間の電気配線に代わる光配線や各種光センシング用途、また、パワー光源としてエネルギー応用や製造技術、レーザーディスプレイなどに利用が進むと期待されており、その性能向上が求められている。
本研究室では、光デバイス高性能化の新たな原理・機構の創出や設計技術・製作技術などの開拓といった基盤技術確立を進めている。VCSELの特徴を生かした高出力大規模2次元アレー光源や、電気光変換効率80%以上という超高効率化を進めている。また、最近では、従来VCSELの課題であった動作温度範囲の狭さを解決するため、量子井戸の活性層を最適化して、図2のように温度差269℃の動作を達成した。
様々な半導体材料を原子1層単位で積層することで多様な量子効果構造(ポテンシャル構造)を形成可能である。単純な矩形量子井戸構造は、低消費電力化などの優れた効果から既に半導体レーザやLEDで実用されている。
我々は、量子効果構造の高度化に向けて、キャリアの波動関数の制御による光デバイスの特性向上や、量子効果構造を結晶成長後に変形する量子構造混晶化技術の応用展開を進めている。量子構造混晶化とは、図3のように結晶成長で形成した異なる半導体材料界面を、後から原子相互拡散により変形する手法である。相互拡散する面内位置やその量を制御して、図3のようにポテンシャル構造を変形する。この手法を、従来から利用されている光吸収制御だけでなく、キャリアの閉じ込めや、光の閉じ込め、さらにトンネル接合と組み合わせた電流の閉じ込めなどに応用し、光デバイスの新規構造や特性向上手法への展開を進めている。
VCSELを用いる高効率な光ワイヤレス給電システムの実現を目指している。情報伝送は無線化が大きく進んでいるが、エネルギー源の無線化では、既存の無線給電方式には電力量・伝送距離などに課題が多い。レーザ光を用いる光無線給電は移動体のような大電力を要するシステムにも有効なため、デバイスとシステムの開発を始めている。
実際のデバイス研究では、VCSELへの量子構造混晶化導入による、電流、キャリア、光閉じ込めと、その最適化による高効率化により、光無線給電システムの効率向上を進めている。また、高出力給電に向けて数万デバイスという2次元アレイ構造が必要になるが、相互の温度上昇が出力を抑制するため、効率向上とともに放熱性向上手法なども検討している。さらに、アレイ構造VCSELのビーム特性の制御に向けて、通常は独立動作する個々のVCSELを協調動作させるために、相互注入同期によるコヒーレント結合VCSELアレイの実現に取り組んでいる。
電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。
准教授 宮本智之
E-mail : tmiyamot@pi.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5059
※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。