電気電子系 News

波多野・小寺研究室 ―研究室紹介 #20―

IV族半導体(ダイヤモンド、 SiC、 Si)を用いたパワー/エネルギーデバイス、量子センサ、スピン量子デバイス

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2016.08.23

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、環境エネルギー、生体応用に向けたデバイスの更なる進化に挑戦する、波多野・小寺研究室研究室です。

教授 波多野睦子 准教授 小寺哲夫

デバイスグループ
エネルギーコース・電気電子コース
研究室:大岡山キャンパス・EEI-410/ EEI-403
教授 波多野睦子別窓 准教授 小寺哲夫別窓 助教 岩崎孝之別窓

研究分野 電子デバイス、電子材料、応用物性、量子技術、固体物理
キーワード パワーデバイス、センサデバイス、スピン量子情報デバイス、人工光合成デバイス、ダイヤモンド・SiC・シリコン
Webサイト 波多野・小寺研究室別窓

主な研究テーマ

研究テーマ

低炭素社会に貢献する「環境・エネルギー」を重視したデバイスの技術革新を創出していきます。主に優れた物性値を活かしたダイヤモンド、SiC、シリコンなどをベースとした、材料・物性・デバイスのブレークスルーとなる基礎研究、さらにパワー、センサ、スピン量子情報、人工光合成のデバイスをターゲットした応用研究を進めていきます。

環境エネルギーイノベーション棟

  • 当研究室は東工大の分野横断組織「環境エネルギー機構」にも属しており、居室は環境エネルギーイノベーション棟(EEI棟)にあります。

最近の研究成果

パワーデバイス

図1.ダイヤモンドパワーデバイスの適用分野

図1.ダイヤモンドパワーデバイスの適用分野

パワーデバイスは、送電、自動車、鉄道、太陽光発電、風力発電、家電などへの応用のニーズが高い電子素子であり、スマートグリッド化のキーデバイスです。高効率の電力変換が可能で超低損失なパワーデバイスの開発により、省エネルギーを推進し、二酸化炭素ガスの排出を大幅に削減することができるようになります(図1)。現在、主流であるシリコンを用いたパワーデバイスは電力変換の損失も多いなど性能の限界が近づいています。このような課題を解決するために、新しい材料として炭化珪素や窒化ガリウムによるデバイスが一部実用化されつつあります。

当研究室では、実用化されつつも未解決の課題である界面欠陥の影響について独自の測定手法により解明を目指して研究を進めています。

さらに、ダイヤモンドはこれらの材料よりもさらに高い絶縁破壊電界(Siの100倍)や熱の逃しやすさ(熱伝導率がSiの14倍)など究極の物性値を持つために、高電圧をかけても壊れず、また大電流を流したときに発生するジュール熱を効率的に逃がすことができます。しかしこれまで、トランジスタの基本構造の形成や基板の大面積化が困難であり、デバイス化に課題がありました。 当研究室では、2020年の目標を電力損失を一桁以上低減できる、「オン抵抗0.05mΩcm2以下、耐圧2kV以上」と定め、トランジスタや大面積基板化という、ダイヤモンドのデバイス化への本質的な課題を解決していきます。これまでに世界で初めてダイヤモンドによる接合電界効果トランジスタの開発に成功しています(図2)。

図2.ダイヤモンドデバイス

図2.ダイヤモンドデバイス

磁気センサ、スピン量子情報デバイス

図3.ダイヤモンド中の窒素空孔(NV)センタ

図3.ダイヤモンド中の窒素空孔(NV)センタ

表1.ダイヤモンド磁気センサデバイスの特徴

表1.ダイヤモンド磁気センサデバイスの特徴

細胞計測から、MRI・脳磁・心磁等の生体計測まで、高感度磁気センサのニーズがあります。当研究室では、常温で動作し、高い空間分解能を有し、2次元イメージングが可能である磁気センサの開発を目標としています。特に常温固体中で優れたスピン特性を持つことが知られているダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)センタを用いています(図3)。他のセンサと比較して表1に示すような優位性が期待できます。スピンコヒーレンスが重要な物理量であり、これを制御することは磁気センサの高度化のみならず、量子情報デバイスへの応用にもつながります。将来的な集積化に向けて、シリコンテクノロジーを活かした研究にも取り組んでいます。

人工光合成デバイス

太陽光を用いてCO2の還元、貯蔵・輸送可能なエネルギーに変換を行う技術を無機半導体チップ上で実証することを目標としています。 本研究室では、バンドギャップが2.2eVであり、可視光を吸収するとともに、酸化・還元に必要な電位を有する3C-SiC半導体に着目し、人工光合成デバイスを試作し、太陽光による水分解を実現しています。さらなる高効率・高寿命化、CO2の還元実証に向けて、ナノ粒子の助触媒、グラフェン層パッシベーション、微細ナノ構造化によるナノ反応場での反応促進に取り組んでいます。

図4.3C-SiC半導体 人工光合成デバイス

図4.3C-SiC半導体 人工光合成デバイス

教員からのメッセージ

波多野先生・小寺先生より
電子デバイスのさらなる進化を実現するために、一緒に研究してくださる元気な方、いつでも訪ねて来てください。デバイスの新機能の創製や飛躍的な性能向上には、新材料や物性のナノスケールのサイエンスと、それを効果的に利用するブレークスルーテクノロジーが重要です。実用化を目指した工学研究と数十年先を見据えた基礎研究の両方を推進しています。一緒にチャレンジしませんか?

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 波多野睦子
E-mail : hatano.m.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3999

准教授 小寺哲夫
E-mail : kodera.t.ac@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3421

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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