電気電子系 News

浅田研究室 ―研究室紹介 #17―

半導体ナノ構造によるテラヘルツデバイスの実現とそれを用いた未踏周波数の開拓

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2016.08.09

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、テラヘルツ周波数の室温半導体光源を研究している、浅田研究室です。

教授 浅田雅洋

デバイスグループ
電気電子コース
研究室:大岡山キャンパス・S9棟703号室
教授 浅田雅洋別窓

研究分野 電子デバイス、テラヘルツエレクトロニクス、半導体物理
キーワード テラヘルツ波、テラヘルツデバイス、半導体ナノ構造、量子効果
Webサイト 浅田研究室別窓

主な研究テーマ

テラヘルツデバイス

電波と光の中間にある約0.1~10THzの周波数はテラヘルツ帯とよばれ、これまで未開拓の領域でした。最近この領域は、超高速無線通信、イメージング、分光分析など非常に幅広い応用への可能性が明らかになり、盛んに研究が行われるようになってきました。しかし、テラヘルツ波を発生できる光源や、それを検出する受信器はまだ十分に開発されているとはいえない状況にあります。特に、室温で動作するコンパクトな高出力・高効率の半導体光源や高感度・低雑音の半導体検出器は未だに実現していません。

本研究室では、半導体ナノ構造の中で生じる新しい現象を使って、テラヘルツ波を発生・検出する微細デバイスやその集積回路の実現、さらにはそれらの応用展開を目指しています。これまでに半導体電子デバイスで初めての室温テラヘルツ発振の達成や、それを使った無線伝送実験などを行ってきました。

最近の研究成果

電子デバイスで初めて1THzを超える室温発振を実現

図1 半導体単体のテラヘルツ光源の現状。現在、周波数1THz周辺には満足な光源がなく谷間になっており、テラヘルツギャップと呼ばれています。

図1 半導体単体のテラヘルツ光源の現状。現在、周波数1THz周辺には満足な光源がなく谷間になっており、テラヘルツギャップと呼ばれています。

周波数が1THz前後のテラヘルツ帯(以下、略してTHz帯。サブミリ波帯、遠赤外ともよばれる)は、光と電波の中間の未開拓領域で、半導体による光源で満足なものはまだ存在しません(図1)。

ところが、この周波数帯が開拓されれば、超高速通信やイメージング、分光分析、計測など非常に広い分野で種々の新しい応用が期待されており、光源や検出器などのキーデバイスの開発は必要不可欠となっています。

本研究室では、THz波に対する半導体ナノ構造の新しい現象や、ナノ構造によるテラヘルツ発生デバイスの実現を目指した研究を行っています。最近、ナノ構造の一つである共鳴トンネルダイオードを用いたTHz光源を作製し、電子デバイスで初めての室温THz発振に成功しました。さらに、周波数を制限していた電子遅延時間の短縮などを行い、最高発振周波数を更新しました(図2)。

現在、室温で1THzを超える周波数を単独で発生できるのは共鳴トンネルダイオードしかなく、THzギャップを埋める素子として期待されています。

図2 共鳴トンネルダイオードによる、電子デバイスで唯一の1THzを超える室温発振器。素子構造(左)、モジュール化した素子(中央)、現在の最高発振周波数1.92THzの発振スペクトル(右)。

図2 共鳴トンネルダイオードによる、電子デバイスで唯一の1THzを超える室温発振器。素子構造(左)、モジュール化した素子(中央)、現在の最高発振周波数1.92THzの発振スペクトル(右)。

このような共鳴トンネルダイオードによるTHz光源をさらに高周波化・高出力化するための素子構造や、放射する出力ビームを鋭くするための微細アンテナ集積など、高性能化に向けた研究を進めています。

半導体THz光源の高性能化と応用(超高速無線通信、分光分析)

図3 共鳴トンネルダイオード送信器を用いた高速テラヘルツ無線通信系。

図3 共鳴トンネルダイオード送信器を用いた高速テラヘルツ無線通信系。

図4 周波数可変機能をもつ共鳴トンネルダイオードテラヘルツ光源。

図4 周波数可変機能をもつ共鳴トンネルダイオードテラヘルツ光源。

THz帯を用いることにより、簡易なシステムで数十~百Gビット/秒の超高速無線通信が可能となります。本研究室では、このような無線通信応用を目指して、共鳴トンネルダイオードのTHz出力に信号を乗せる高速直接変調や、これを用いたTHz送受信系(図3)の研究を行っています。

最近、共鳴トンネルダイオードの高速直接変調に成功し、これによる初期実験として、30Gビット/秒の高速THz無線通信のデモンストレーションを行いました。

THz帯では、超高速無線通信だけでなく、他の周波数では不可能な物質の分光分析が可能です。これには、周波数が連続的に変えられる光源が必要不可欠です。

本研究室では、共鳴トンネルダイオードとバラクタダイオードを集積した周波数可変THz光源を実現しました。この素子の周波数範囲拡大や物質分析への応用の研究を行っています。

教員からのメッセージ

浅田先生より
研究はテラヘルツという未知の分野で、物理現象の探索からデバイス作製・応用にまで及んでおり、それぞれ実験あり理論あり。簡単ではないけれど、一歩先には今までになかった最高周波数のデバイスや新しい現象がある。メンバーが協力しあって新しい発見やデバイス実現を目指していきたいと思っています。
研究室メンバーから一言
世界初のデバイスを作れるかも?!(教員:作れます)
電子の気持ちがわかるようになるかも
研究するには最高の環境です
動作時間"0"の超高速デバイスを目指せ (教員:これは...無理です)
メンバーは個性派ぞろい

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 浅田雅洋
E-mail : asada@pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2564

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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