電気電子系 News

久本研究室 ―研究室紹介 #21―

半導体プロセス・デバイスの研究 (パワーデバイス、超低電力集積デバイス)

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2016.08.26

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、半導体デバイス技術を基に社会イノベーションを創出する、久本研究室です。

特定教授 久本大

デバイスグループ
エネルギーコース・電気電子コース
研究室:大岡山キャンパス・南3-815
特定教授 久本大別窓

研究分野 半導体プロセス、半導体デバイス
キーワード パワーデバイス、低電力デバイス、FinFET、Steep Slopeデバイス、SiC・シリコン、デバイス信頼性

主な研究テーマ

環境・エネルギーを重視した持続可能な社会に貢献するため、半導体デバイス技術を基に社会イノベーションを創出していきます。今日の社会で基幹となっているエネルギー分野を支えるパワーエレクトロニクスの将来を担う「ワイドギャップ半導体デバイス」と、ICT分野を支えるULSIの将来を担う「低電力集積デバイス」の基礎研究を通して、新たなエレクトロニクスの応用分野の開拓を目指します。

  • 当研究室は、東工大と日立製作所の産学連携の一環として開設しています。大岡山デバイスグループのなかで、波多野・小寺研究室と連携して研究を進めています。

本研究室のスコープ分野

図1.本研究室のスコープ分野

最近の研究成果

本研究室では、産学の連携のもと、デバイス信頼性の解析を基に、新たなデバイスの創造を目指しています。日立製作所研究開発グループにおける関係する研究成果について紹介いたします。

パワーデバイス

パワーデバイスは、発電・送電、鉄道、データセンタの電源などの社会インフラをはじめ、自動車や家電など、幅広い分野で使われている低消費電力化のためのキーデバイスです。多くの応用製品において、超低損失なデバイスの開発やインバータ化などで、高効率の電力変換が行われ、省エネルギーを推進し、二酸化炭素ガスの排出を大幅に削減できるようになってきています。現在、主流であるシリコン(Si)を用いたパワーデバイスの効率をさらに向上するため、ワイドギャップ半導体である炭化珪素(SiC)を用いたパワーデバイスの実用化を目指し研究開発を進めています。(図2)

出典:D. Hisamoto, et al., IEEE Electron Device Letters, vol. 36, no. 5, pp. 490-492, 2015.
N. Tega, et al., in Proc. ISPSD, pp. 81-84, 2015.
久本 大、電子デバイス界面テクノロジー研究会予稿集、pp. 55-58、2016.

4H-SiC MOSのSiC-酸化膜界面に形成される伝導帯下端の揺らぎによる電荷トラップモデルと電荷容量特性。チャネルキャリアが減少し、特性が大幅に劣化している。

4H-SiC MOSのSiC-酸化膜界面に形成される伝導帯下端の揺らぎによる電荷トラップモデルと電荷容量特性。チャネルキャリアが減少し、特性が大幅に劣化している。

高信頼性と高性能化を両立する新たなトレンチ型SiC MOSFETと耐圧を示す電流電圧特性。ゲートリーク電流が、測定限界以下に抑制されている。(TED-MOS: Trench-etched double-diffused MOSFET)

高信頼性と高性能化を両立する新たなトレンチ型SiC MOSFETと耐圧を示す電流電圧特性。ゲートリーク電流が、測定限界以下に抑制されている。
(TED-MOS: Trench-etched double-diffused MOSFET)

図2.SiC パワーデバイス

超低電力集積デバイス

高集積デバイスの性能向上は、MOSFETの微細化によって支えられてきました。しかし、MOSFETのスイッチング特性(Subthreshold Swing)には、60mV/桁という理論限界があるため、電源電圧の低減の大きな制約になってきています。そのため、MOSFETに代わる動作原理を導入することで、より急峻なスイッチング特性(Steep Slope)が求められています。Steep Slopeを実現するトンネル現象を利用したデバイスの実用化を目指し、研究開発を進めています。(図3)

出典:久本 大., 電子情報通信学会総合大会講演論文集、pp. SS-98-99, CI-4, 2015.
D. Hisamoto, et al., in IEEE Silicon Nanoelectronics Workshop, pp. 5-6, 2012.

これまで発表されているSteep Slopeデバイス(実験)と印加電圧の関係。Swingと電圧の間にトレードオフが表れている。

これまで発表されているSteep Slopeデバイス(実験)と印加電圧の関係。Swingと電圧の間にトレードオフが表れている。

トンネル注入型素子を用いた新たなSteep Slopeデバイス構造とSwing特性の印加電圧依存性。低電圧(~0.2V)においても60mV/桁(理論限界)以下が達成されている。(CxFET: Complex CMOS)

トンネル注入型素子を用いた新たなSteep Slopeデバイス構造とSwing特性の印加電圧依存性。低電圧(~0.2V)においても60mV/桁(理論限界)以下が達成されている。
(CxFET: Complex CMOS)

図3.シリコンSteep Slopeデバイス

教員からのメッセージ

久本先生より
半導体デバイスの面白いところは、基礎研究と産業である実製品との距離が非常に近いところにあります。信頼性の物理メカニズムを解析しているとき、新しいデバイスを生み出すことにつながっています。何かを見出したとき、何かを考え出したとき、そのデバイスがダイレクトに世の中に広がり、世界を席巻することができる、魅力的な分野の一つです。

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

特定教授 久本大
E-mail : hisamoto.d.aa@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3696

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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