電気電子系 News

廣川研究室 ―研究室紹介 #7―

世界にない新しい構造の平面アンテナの研究

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2016.07.05

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、無線通信に不可欠なアンテナの研究を行う廣川研究室です。

教授 廣川二郎

波動・光および通信グループ
電気電子コース
研究室:大岡山キャンパス・南3-908
教授 廣川二郎別窓

研究分野 平面アンテナ、電磁界解析
キーワード アンテナ、無線通信、電磁波
Webサイト 廣川研究室別窓

主な研究テーマ

  • ミリ波導波管型高効率平面アンテナ
  • アンテナ設計のための高速電磁界解析
  • シリコンチップ厚膜誘電体上ミリ波高効率小型アンテナ

最近の研究成果

ミリ波導波管型高効率平面アンテナ

図1

図1

図2

図2

図3

図3

ミリ波は、周波数が30GHz~300GHzで波長がmmオーダの波です。10Gbpsを超える高速な情報伝送をミリ波で行うためのアンテナを研究しています。

電磁波のふるまいはマクスウェルの方程式により決まり、波長で規格化した大きさが同じであれば同じふるまいをします。しかし、ミリ波帯アンテナを実際に作ろうとした場合、機械加工の限界や材料の損失などの問題が電気特性の問題とは別に出てきます。我々は図1の写真に示すように、ミリ波帯での大きさで実際にアンテナを試作し、これらの問題を総合的に解決することを特長としています。

一例を示します。図1の写真の左下にある銅でできた60GHz帯の導波管アンテナの構造は図2のようになっています。黒い四角で描かれた放射スロットを灰色で示した下層に置かれた給電導波路ですべて同振幅・同位相で励振しています。約0.02mmの寸法精度を得るために、形状をエッチングした厚さ0.3mmの薄板を10枚重ねて拡散接合して製作しています。金属成形でよく用いられる高価な型が不要なので、この積層薄板拡散接合は、安価で高精度な新しい製造法として期待しています。図3の実線の利得の実験値に示すように32dBi以上の高利得かつ80%以上の高効率が約5GHzにわたり広帯域で実現できています。

他にも、銅箔付誘電体基板に2列の金属ポストを配列して導波路を構成したポスト壁導波路を用いたアンテナなども検討しています。

多くの企業とも共同研究を行い、固定無線アクセスシステム用や衛星放送受信用として、社会で使われているものもあります。

アンテナ設計のための高速電磁界解析

図4

図4

図4は、図2の青い線で囲まれた放射スロットの構造を表しています。任意形状を解析できる電磁界解析ソフトウェアでも1回の解析に約20分かかってしまいます。放射スロットのパラメータは17あり、それらをすべて変化させて設計するのは非常に時間がかかってしまいます。

この放射素子は、図4に示すように、6つの領域が組み合わされています。これらの領域はすべて厚さ方向に構造が一様な2次元構造の導波管とみなせます。下から3番目の領域を除き、残り5つの領域は長方形断面ですので、断面形状で決まる電磁界固有モードは三角関数を使って解析的に表せます。しかし、下から3番目の領域はX字型の特殊な断面形状になっており、電磁界固有モードを解析的には表せません。そこで、電磁界固有モードを数値的に求めることとしました。これにより解析時間は約15秒と劇的に短くなりました。17のパラメータをすべて変化させて、約5時間で設計を終了できました。

このように、適用できる構造は限られますが、設計に使用できる高速電磁界解析法の研究もしています。

シリコンチップ厚膜誘電体上ミリ波高効率小型アンテナ

図5

図5

図6

図6

60GHz帯において、RF回路チップと一緒に用いる小型アンテナは、RF回路と同一面内にアンテナを設けるオンチップアンテナか、RF回路チップと別体でアンテナを作るオンチップアンテナのいずれかです。オンチップアンテナはアンテナの高さが10mmと小さいため放射効率が5%程度と低く、オフチップアンテナはRF回路とアンテナの接続が約1dBと大きいです。そこで、図5のようにシリコンチップに穴を開け、RF回路と反対の面に厚さ200μmの誘電体層を設けてその上にアンテナを構成することを提案しています。

また、60GHz帯小型アンテナの放射効率を測定する際に、アンテナの利得から換算する方法がほとんど用いられますが、指向性が広く、まわりの影響で指向性にリップルが生じ利得が正確に求められません。そこで、携帯電話端末内のアンテナの放射効率測定に用いられる電波撹拌金属箱により測定し、74%の放射効率を得ました。これにより0.2dBの低損失接続を確認しました。

教員からのメッセージ

廣川先生より
ミリ波帯の高効率平面アンテナに特化し、この分野で世界最先端を走っています。受動素子のアンテナを高効率で実現するためには、損失低減がカギです。はやりに流されず、基本を守って研究を行っています。また、将来の製造法の進展を見据えて、金属粉末を用いた3次元印刷などの最新技術を取り込み、ミリ波帯の平面アンテナを実現しています。

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 廣川二郎
E-mail : jiro@antenna.ee.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2567

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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