電気電子系 News
窒素誘導結合プラズマの分光計測と原子分子過程モデルの精緻化〜東工大・アルバックの共同研究成果
赤塚研究室の石 健太さん(電気電子コース M2 受賞当時)らの研究グループが2024年3月3日~7日に名古屋大学にて開催された国際会議ISPlasma2024/IC-PLANTS2024/APSPT-13において、Best Poster Presentation Awardを受賞しました。
東工大「アルバック先進技術協働研究拠点」では、半導体集積回路の製造工程に多用される反応性プラズマを研究対象とし、その発光分光計測を通したプラズマプロセス装置の高度化を目的として、共同研究を続けております。日々、各種プラズマ分光計測実験や、発光源となる励起状態の生成消滅のモデル化に関し、基礎・応用の両面から取り組んでおります。2023年3月には、電子温度・密度の空間分解計測を可能とした成果発表により、応用物理学会注目講演にも選出されるなど、業績を上げております。
今回その続報として、電気電子コース修士課程2年(受賞当時)石健太君を中心とするグループの研究により、窒素誘導結合プラズマを対象として、発光分光計測実験で求められる励起状態の密度分布結果を、理論的に解析できる励起状態生成消滅モデルを改良・開発し、実験との比較を通してモデルの妥当性を確認致しました。その成果を、国際会議ISPlasma2024/IC-PLANTS2024/APSPT-13でポスター発表したところ高く評価され、Best Poster Presentation Award の栄誉に浴することができました。
窒素をはじめとする分子気体の低温放電プラズマ中では、電子のエネルギー分布関数(EEDF)がマックスウェル分布から外れることが、低温プラズマ界ではすでに理解されております。EEDFが窒素中性分子の振動励起分布(VDF)との分子振動-電子並進のエネルギー交換衝突過程を含めたBoltzmann方程式によって記述されるところからモデル化を始め、計算されたEEDFとVDFに基づいてさらに発光源となる電子励起状態をモデル化し記述することが必要となります。石健太君を中心とする協働研究拠点の研究により、従来はモデル化が不十分であった上記の問題に対し、一定の成果が上げられたと考えております。
電子・半導体工学や環境工学、地球電磁気学分野でも重要な「窒素プラズマ」を対象としたこの分野では、ポルトガル、オランダ、チェコなど、欧州諸国に抜群の学術的蓄積があり、我が国はこの分野の研究者数減などもあって、後塵を拝していました。我々の今回の研究はその遅れを取り戻し、先に進むレベルのものであろうと考えております。窒素を含むプラズマはもちろんの事、類似の手法により、今後、各種のプロセスプラズマのモデル化に応用が期待されます。
このように、東工大「アルバック先進技術協働研究拠点」は、本学オープンイノベーション機構の皆様のご尽力で、半導体プロセス装置の高性能化を目指して共同研究を進めております。2023年の注目講演選出に引き続き、今回もこのような成果が出まして、研究成果に関する自信が確信に深まるとともに、更なる高度化と社会実装を目指し、尚一層努力する決意でございます。 何卒今後も皆様のご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。