電気電子系 News
東京工業大学は、2023年度末松賞「革新的価値創造の基礎と展開」の受賞者を決定し、9月12日に授賞式を行いました。
末松賞「革新的価値創造の基礎と展開」は、科学技術の各分野における「革新的価値創造」につながる研究を追求する若手研究者の育成を目的とした賞であり、人文・社会科学も含めた科学技術のさまざまな研究の中で、革新的価値創造の基盤となる研究に関して、幅広い支援を行うことを目的としています。
本賞は、2018年度に創設された末松賞「ディジタル技術の基礎と展開」支援を受け継いで、今年度から応募対象者を広げました。
前身の末松賞「ディジタル技術の基礎と展開」支援を含め第6回となる本年度は、受賞者に荒井慧悟准教授(電気電子コース 主担当)ら3人が選ばれ、また今回は特に顕著な研究業績をあげた1人に特別賞が授与されました。
授賞式には、受賞者3人と特別賞受賞者、益一哉学長、渡辺治理事・副学長(研究担当)、来賓として末松安晴栄誉教授・元学長、株式会社ぐるなびの滝久雄取締役会長、古田勝久名誉教授、蔵前工業会の本房文雄理事長特別補佐が出席しました。
受賞式では、受賞者による研究課題のプレゼンテーションが行われ、末松栄誉教授をはじめとする来賓から発表内容への質問とともに、多くの激励の言葉がかけられました。
物質のトポロジカルな性質は、現代物理学における重要概念であると同時に、量子コンピュータなど未来社会の技術にも応用できることが期待されています。ところが、トポロジカルな性質は、一般にノイズに強いという長所を持つ反面、人為的に制御することが困難という短所もあわせ持ちます。近年、ダイヤモンド中のスピンに代表される固体量子系が、そのトポロジカルな性質(ベリー曲率やチャーン数など)を自在に制御できることで注目されています。本研究では、この固体量子系に、「量子もつれ状態」という特殊な性質を発現させることで、より高い制御性を獲得させ、他の物質の複雑なトポロジカル位相やその相転移を量子的に模擬する手法を開発することに取り組みます。それにより、この量子シミュレータが、量子メモリや量子コンピュータ応用の鍵を握るトポロジカル物質の探究へ、革新的価値を創出してゆくことを目指します。
世界的にAIに関するルール形成の研究が進められる中、日本では個別法による縦割り的な規制が多く、総合的な政策パッケージは乏しいのが現状である。また、法学や立法政策研究を除くと、比較研究や実証研究が十分に進んでいない。本研究では、国内外の電子政府政策におけるグッドプラクティスを収集・分析し、日本のAI関連規制を整理する。法学やルールメイキングに関する規範的研究、法政策実務の経験的知見を蓄積・共有し、AIに関するルール形成の学術的・実務的貢献を目指す。
DNAは4種類の塩基からなり、相補的な配列によって結合する特性を持ち、構造と情報が一体化した分子として、また分子スケールのコンピュータやセンサとして、将来的にナノIoTや医療ナノマシンなどへの応用が期待されている。しかし、従来のDNAコンピューティングは扱える情報がDNAなどの分子情報のみであり、扱える環境も試験内などに限られている。そこで本研究では、液-液相分離によるコンピューティング機能を持つDNAゲルコンピュータと電気化学計測技術を統合することで、分子情報を扱いやすいディジタル情報への変換技術の実現を目指す。DNAゲルは、特定の分子入力の組み合わせを認識し物理的なDNA液滴相分離をすることで、論理演算結果を出力することができる。統合したくし型電極によりDNA液滴相分離を静電容量変化として測定する。本研究は、分子スケールの情報とディジタル情報の橋渡しとなる革新的価値創造の基礎技術として、さまざま分野への波及効果が期待される。
末松安晴栄誉教授・元学長は、本学で行った光ファイバー通信の研究、特に動的単一モードレーザーの先駆的研究が大容量長距離光ファイバー通信の発展に寄与し、社会に貢献したとして2014年日本国際賞、2015年度文化勲章を受章しました。
東工大は、この日本国際賞の賞金から寄附を受け、「若い人たちがさまざまな分野で未開拓の科学・技術システムの発展を予知して研究し、隠れた未来の姿を引き寄せて定着させる活動が、澎湃(ほうはい)として湧き出てほしい」との末松栄誉教授の思いを継承し、研究活動を奨励するために末松基金を設立しました。
末松基金の設立当初より賛同いただいている本学同窓生である株式会社ぐるなびの滝久雄取締役会長から更なる寄附を受け、末松賞「ディジタル技術の基礎と展開」支援を2018年度から開始しました。本賞は末松賞「革新的価値創造の基礎と展開」と名称を変え、2023年度からさらに幅広い支援を行っています。
このイベントは東工大基金によりサポートされています。